D.Force The First Chapter
Force-10

神殿


いよいよ三人は鉱山の中へ足を踏み入れた。トンネルを支えている木はしっかりしているようで、多少暴れても崩れるほどもろくは見えなかった。鉱山内部の地図も持たず、スティングのカンで進んでいった。
「うーん。僕的にはこっちだと思うんですよね・・・」
三人は三つに分かれている分岐点に来ていた。水晶に灯った光をめぐらすがどれも同じに見える。スティングは右端の穴を指している。
「じゃあそこに行こう。俺たちじゃわからないしな」
どことなくうきうきしているディクスが足早に歩いていく。ナチも同じだ。
「間違っても知りませんよー」
スティングが断るが、二人は聞いていないようだった。
・・・後でどうなっても知りませんからね。
「まだ財宝が掘り出されてないってことは、俺たちはそれっぽいところを探し出して、自分で掘らないといけないんだよな」
「うん。それしか方法がないもん。でも・・・今考えるとそれってかなり時間かかるんじゃない?」
二人とも今更のことを話している。
「財宝は見つからなくても水晶くらいは見つかるでしょう。大丈夫、何かありますよ」
言うと右手の方の岩肌を手で探る。一見何でもないような場所に手を添えると精神を集中する。そして術を発動した。手を添えた部分の岩肌がぼろぼろ崩れだした。崩れて落ちた大きめの岩を手に取る。
「ほら、これなんかこの前見つけたのよりちょっと質は落ちますが・・・」
もろくなった岩をぱかっと割ってみせる。中に柱状で半透明の黄色い石がはまっていた。その部分だけをさらに術を使って取り出す。
「うそ!もう見つかったの!?」
スティングから黄色い石を受け取る。透明度の高い、なかなか質がよい石だった。
「王族の力を使えばこんなところにある石でも発見できますが、まさかそんなことさせられませんから。財政がかなりひっ迫すればやらざるを得ないでしょうけど」
「便利な能力だな」
ディクスが感心する。実は何度か術を使って石の探索をしようと試みたのだが感覚がわからず断念したのだった。
「なんで石がここにあるとか分かるんだ?」
何かコツがあるのでは?とスティングに訊いてみる。
「選ばれし者に与えられる神の見えざる目・・・ってやつですかね」
「見えざる目じゃ目の意味が無いじゃない」
遠い目をして言うスティングにナチが即座に突っ込んだ。


「あれー?ここで行き止まりよ」
あれからすねてしまってものを言わなくなったスティングをなだめすかしてそれでも機嫌の直らないから岩の割れ目に落としてみたりして半泣きになったところでようやく引き上げ、再び道を進み始めたときだった。
「そ、そうですね・・・」
まだどきどきしているのか少々どもりながらスティングが言う。あの夢がトラウマになってしまっているせいで、さっき落とされたときのショックがいまだに残っていたのだった。
「掘って・・・みるか?」
行き止まりの岩肌をぺたぺた触ってみる。地盤はそんなに硬くないようだ。
ちょっと術でも使ってやれば崩れてしまうだろう。
力を入れすぎないように普段より慎重に術を発動した。岩肌がパラパラと崩れ落ちる。
「叩けばくずれるかな」
言うとディクスは手近な角材で岩肌を削り始めた。スティングはその様子をじっと見ていたのだが、
「あれ・・・?」
声をあげた。辺りをきょろきょろする。そして頭をぽりぽりかいた。
「どうしたの?」
「いえ・・・なんか呼ばれたような気がして」
始めは幻聴かとも思ったのだがどうも納得がいかなかった。
・・・なんだろう?誰かに呼ばれた・・・後ろから?
後ろを振り向くがただ暗闇があるだけだった。何故だかいても立ってもいられなくてスティングはもと来た道を走り始めた。
「あ、スティング?どうしたの!?」
声をかけるがそれを無視してスティングは行ってしまった。ナチは追いかけようかどうしようか迷ってオタオタした。
「どうしたんだ?」
ナチの様子に気付いたディクスが顔を上げた。
「スティングが・・・」
言って暗闇を指す。スティングの姿はもう無かった。
「なんか声が聞こえたって言って、走って行っちゃった」
申し訳なさそうに言う。ディクスは持っていた角材を放り投げた。
「仕方ないなー。はぐれたら終わりだから今のうちに追いかけよう」
「うん」
そしてスティングを追いかけ始めた。
「スティングなんの光も持ってなかったのにこんな暗闇一人で走っていくなんて・・・」
「声が聞こえたって言ったんだろ?もしかしたら、なにか財宝のありかに関係があるかもしれないぞ」
「そりゃあ王族の末裔だけど・・・」
走り続けてさっきの分岐地点にたどりついた。しかしスティングはいなかった。
「どこいったんだ・・・?」
ディクスが困惑する。
「まさか外に出たってことないわよね・・・」
ナチが不安げに言う。
「だといいけどな」
ディクスが答えたときだった。
ドオオオオオオオオォォォ・・・・
地響きが聞こえてくる。天井からパラパラと土が落ちてきた。
「なになになに!?地震!?」
ナチがあわてる。反射的にかがむ。そんなナチの横に大きな岩が落ちてきた。
「きゃあっ!」
なんとかよけるも、バランスを崩し、倒れこむ。ディクスがナチの手をつかみ引き寄せ、そしてナチをかばうように覆いかぶさった。
地震はなかなかやまなかった。集中できないから術は使えない。それ以前に地震に有効な術なんてあるのか?
二人はただおさまるのを待つしかなかった。
しかし地震はやむどころかだんだん大きくなっているように感じる。
「ね、ねえディクス。ちょっとやばいんじゃ?」
「動けないだろ!」
答えたディクスの頭に大量の乾いた土が落ちてきた。全身土だらけになる。
「あああ・・・こういうときこそ冷静にならなきゃいけないのに・・・」
何度も意識を集中しようとがんばるナチだったが、やはりどうしても無理だった。
どぉん・・・
何か大きな音がした。しかし視界が悪くて何が起きたのかわからない。
もう駄目なのかとあきらめかけたその時だった。
「ディクス、ナチ!こっちです!!」
走ってどこかに行ってしまったスティングがさっき三人が入っていったはずの道から姿を現した。そして天井から岩や土が落ちてくる中、二人の方に走ってきた。
「早くこっちへ!」
二人を自分の方へできるだけ引き寄せるとさっきの道に戻ろうとした。大きな岩が三人を直撃しようとしたが岩は彼らの頭上で四散する。ナチがあっけにとられる。
――――岩が・・・!シールド張ってるんだわ!
自分が一生懸命出現させようとしたシールドをスティングはいとも簡単に出現させていた。改めてスティングは高度な術者であることを確認させられた。
「飛び込みますよ!」
「え?」
どこに飛び込むのかと聞く前にスティングは両脇の二人をがしっとつかむとさっきの道の手前でジャンプした。一緒にディクスもナチも反射的にジャンプする。
すぐに地面があると思って、二人ともそのつもりでジャンプした。しかし、
「ええええええ――――!?」
「うあああああ―――――!?」
着地するであろうと思われた場所に地面は無かった。思いもよらぬ展開に絶叫する。そのままスティングにつかまれながら落下していく。
「なななな、なんで地面が抜けてるの!?さっきここ通ってきたよね―――!?」
悲鳴交じりにナチが大声で訊いた。
「あとで説明します!」
それにスティングが大声で答えた。スティングは二人から手を離すと例の短剣を握り締めた。急降下しながら精神統一している。
「スティングこんなときに・・・ちょ、ディクス!このままじゃわたしたち死んじゃう!なにか良い術ないのー!?」
「あったら使ってる!」
投げやりに答えるがその表情はこれから自分の身に起こるであろう出来事にひきつってもいるようだ。
とうとう地面が迫ってきた。
もう駄目だ・・・・!!
ディクスもナチも本当にあきらめた次の瞬間。
「行きますよ!!」
スティングが緊張した声で叫ぶ。
はい、逝きますよ。
二人が心の中で答える。
「テレポート!!」
スティングが叫ぶ。そして急降下していた三人の姿がその空間から消えた。


不意に視界が消え、もう死んでしまったのかと思った。しかしすぐに新たな光景が目に入った。
「うわ!」
「きゃあ!」
ディクスとナチが急展開に地面に転ぶ。スティングだけはうまく着地した。
ディクスとナチは腰の辺りをさすりながらあたりを見回している。そして上を見上げた。さっき急降下してきたあの穴があった。
相変わらず地響きはするが、ここは地震のポイントからだいぶずれているようだった。
「わ、わたし・・・生きてる??」
ナチが顔をぺたぺたさわっている。そして信じられないと言うようにスティングを見る。ディクスも同じだった。
「スティング、さっきの・・・」
「すみません、地震が起きてもう地盤が耐えられなかったみたいでしたから、こうするしか方法が無かったんです」
そして短剣を見せた。飾りの赤い石が光を放っていた。
「僕、さっき声が聞こえるって言って走り出しましたよね?来た道を戻っていく途中で短剣が光りだしたんです。それで取り出したら、その光で何もないと思っていた岩肌に小さな穴があることに気付いて、そこに入っていったんです。そうしたらさっきみたいに落下して・・・使えないのはわかってたんですけど、とっさにテレポートを使ったんです。でも発動して・・・地面に着いたんです」
スティングも何故こうなったのかわからないような顔をしていた。
「しばらくここら辺を探索してたんですけど、この先に扉を見つけたんです。それに触れた瞬間地震が起きて」
「じゃあその扉のせいで地震が?」
ナチが信じられないというように言う。
「トラップの類かもしれません。それであわててテレポートでさっきの場所に戻って、二人を連れて来たんです。ちなみにこの穴はもともとあったみたいで・・・この下から術を使ってつなげたんです。あの場所から脱出しやすいようにって」
「それを早く言ってくれ・・・寿命が何年縮んだか・・・」
ディクスが胸の辺りをさすりながら言った。
「本当に死ぬかと思った」
さらにぽつっとつぶやくように付け加えた。
「すみません。急いでいましたから」
すまなそうに謝った。
「でも、なんでテレポート使えたんだろうね?」
「この短剣以外に何も思い辺りが無いんですけど・・・」
短剣は相変わらず光を放っていた。この光がスティングに異常な力を発揮させたのかはわからない。
「しかしテレポートなんて・・・聞いたこと無いぞ。そんなに高度な術。俺も試しにやってみたんだが全く駄目だった。・・・っていうより、何をベースにイメージすればいいかわからなかったんだ。難しすぎるよ」
「きっと一時的なものでしょう。ここは謎が多いですから。そろそろ行きましょう、そこの角に問題の扉がありますから。お宝が待ってますよ」
その言葉でまだ放心気味な二人を奮い立たせ扉に向かった。
三人の前に意味深な扉が現れた。高さ三メートルくらいの石造りの扉だ。その真ん中だけに装飾がある。
「多分・・・ここが僕たちが探していた王族の財宝が隠されてる扉じゃないかと思うんです。ここの空間だけ上のつくりと違います。誰かが入った様な形跡もありませんし」
「だとしたら、わたしたちって、超ラッキーってこと!?」
スティングが苦笑いをしながらうなずく。
「まだ決まったわけじゃありませんけど。その可能性は高いです」
「さっき声がしたっていったけど、やっぱ財宝の持ち主を選ぶんじゃないか?でないと偶然にも程があるし」
扉を丹念に調べながらディクスが言う。
「だといいんですけどね。でも何かに呼ばれたのは確かです。こうしてここにいるのもそれのおかげですし」
「じゃあますます面白くなってきたじゃない!」
ナチが嬉しそうに言った。さっきの恐怖はもう頭にないようだった。
「スティング、その短剣ここにはめるんじゃないか?」
ディクスは扉に触れないようにして指をさす。そこにスティングが顔を近づけて観察した。
「あ、本当ですね。ここにこれをはめれば・・・・・・」
言うと短剣の柄を慎重に近づけた。そして型にはめた。
かちっ
さっきと同じような音がした。
「・・・地響きがやんだわ」
ナチが天井を見ながら言う。すると、今度は石の扉が轟音をたてて左右に開き始めた。
「スライド式だったのか。手前に出てくるかと思った」
反射的に飛びのいたディクスが言う。扉が半分ほど開くと、扉はそれ以上動かなくなった。
「いよいよだな!」
ディクスが興奮したように言う。
「こんなにわくわくしたのあの時以来よ!」
「あの時以来ってなんですか?」
スティングが不思議そうに訊く。
「未知との遭遇よ」
ナチの答えにスティングは納得がいかないようだったが、ただ一人わかっていたディクスは笑っていた。


「なんか真っ白・・・」
ナチが感嘆する。それくらい白い世界が待っていた。
はじめ、扉の中は暗くて何も見えなかった。光を当ててみてもブラックホールのごとく光は吸収され、まるで役に立たなかった。それでもあきらめきれずに中に足を踏み入れたとき、暗闇は消えたのだった。
どこから光が入っているのかわからなかったが眩しいくらい明るかった。この部屋全体が光っているのではないかと思えるくらいだ。
「これ・・・石か?」
ディクスが柱をこんっとたたく。
部屋はとても広かった。柱があちらこちらに立っていて、神殿のようにも見える。
「誰かが入ったような形跡がないですね・・・もしかしたら僕たちが初めてかもしれませんよ」
スティングが床や壁に顔を近づけながら言う。そして顔を上げた。
「・・・ここはエンドレスの神殿でしょう」
「間違いないのか?」
ディクスが念を押すように訊く。
「ええ、大丈夫です。間違いないです。エンドレスの伝説の一つにこの神殿のことがあげられています。
"我々エンドレスの民はすべての財宝をここに埋める。すべてを見透かす白き聖域は信ずるもののみを導く"と。白き聖域とはまさにこの場所のことでしょう」
「信ずるもののみを導く・・・?何かのヒントになりそうね」
スティングがうなずいた。
「多分、ここから先に財宝があるのでしょう」
「でも・・・」
ディクスが辺りを見回しながら口をはさむ。
「ほかに入り口が無いぞ」
言われてスティングも辺りを見回す。ディクスの言う通り、入ってきた扉以外何もないようだった。
「ねえ、その伝説の中にヒントがあるんじゃない?よく歌の中に謎解きのヒントがあったりするじゃない」
「そうかもしれませんね。じゃあ・・・
―――我々エンドレスの民はすべての財宝をここに埋める
      すべてを見透かす白き聖域は信ずるもののみを導く
        柱のすべて我らの歴史を記すその全てを明かすべし
           さすれば次なる道開かれん――――
・・・と、こんな感じです。これを解明しましょう」
「柱に歴史が記されてる・・・って?」
ナチが近くの柱に近づく。何か無いかと手で触りながら丹念に調べる。
「俺も探すか」
それから少し時間がたった。
「なあ、これ、この柱の上に何か掘ってあると思うんだが・・・」
ディクスが柱の上を見上げながら言う。
「本当ですか?・・・でも見えないですね・・・高すぎます」
そしてナチを見た。
「え・・・何?」
きょとんとする。
「ナチ、僕が支えますから柱の上を調べてください」
ナチをかかえるつもりだった。しかしディクスが素早く反応する。
「俺がやる!俺をかかえてくれないか」
スティングの返事を聞くまえにスティングの肩に手をかけよじ登ろうとする。
「痛い!痛いですよディクス!あああ、髪、髪はさんでますってば!」
悲鳴を上げるがお構いなしによじ登る。そして肩車をする形になった。スティングは足を震わせながら必死に支えようとするが、しばらくして耐え切れずに崩れてしまった。
「もう駄目です!!」
「うそ!?」
硬い地面に叩きつけられる。ディクスは背中を強く打ったようだ。目の端に涙を溜めて背中をたたいている。
「大丈夫?」
ナチが心配そうに訊く。スティングは倒れ方がよかったのかどこも痛がっていなかった。ただ凝ったのか、肩を回していた。
「仕方ないなあ、わたしが調べるから。ディクス、ほら立って!肩車してよ」
言うと今度はナチがディクスをよじ登り始めた。
「痛い、痛いって!あああ、髪の毛引っ張るな抜ける!!」
ディクスも同じように悲鳴を上げる。しかしナチもそれを無視してよじ登った。
「準備オッケーよ。柱の方に近づいて」
言われて仕方なく柱に近づく。ナチが身を乗り出して柱の上部を調べる。
「ほんとだ・・・何か掘ってあるよ。でもこれ多分古代文字じゃないかなー。わたし読めないんだけど」
ナチが困った表情でスティングに顔を向ける。
「古代文字?もしかしたら読めるかもしれません。これにメモしてくれますか?」
スティングが紙を取り出しナチに渡した。
「はいこれ」
「ナチー、もう下ろすぞー」
言ってディクスがナチを下ろした。スティングは渡された紙をみて難しげな表情をしている。
「ちょっと解読してみますから待っててください」
床に座り込んでしまった。
「ナチ、お前見かけによらず重いんだなー」
ディクスが肩を回しながら言ってはいけないことを言ってしまった。当然ナチはディクスに蹴りを入れた。
「ったく。いつも余計なこと言い過ぎなのよ!わかっててもわざわざ口に出すことないじゃない」
にらみながら文句を言う。スティングは古い本を開きながら一生懸命解読にいそしんでいた。
「ナチ、今のうちに柱全部調べておくか?」
「・・・そうね。わかったわ」
ナチはしぶしぶ再び肩車をしてもらった。一つ一つ柱の上部の文字を写していく。そしてすべての柱を調べ上げた。
「スティング、何かわかったか?」
ディクスが疲れた様子で訊いてきた。難しい顔をしていたスティングが顔を上げる。
「ええ・・・多分、これ"水"の文字だと思います」
「みず・・・?」
スティングはナチから文字を写し取った紙を受け取るとそれも解読し始めた。
「これは"木"です。これは"火"、これは"石"・・・・"空"なんてのもありますね」
すべての文字の解読が終わった。この文字はどうやらこの世界のエレメント、つまり要素の一部を表しているようだった。
「結構たくさんね。"無"とか"光"、"人間"もあるわ。"竜"もある・・・」
「これをどうすればいいんだか・・・」
スティングも考え込む。
・・・柱のすべて我らの歴史を記すその全てを明かすべし・・・?エンドレスの歴史ってなんだっけ?術のことかな・・・?
「うーん・・・この単語だけど・・・人間とか竜って言葉がありますし、これって自然のエレメントじゃないですよね?だから術に対しての単語だと思うんです。エンドレスは術の発祥地ですから」
「で、どうするの?」
訊かれて再びうなった。手近な柱に近づき、柱に触れると精神を集中した。そして柱に彫られていた"水"をイメージする。
「水よ!」
何の根拠も無くとりあえず水の術を発動させた。柱を水の膜が取り囲む。
「・・・何も起きないですねえ・・・」
スティングが苦笑した。そして術を封印した・・・はずだった。
「あれ?」
しかし水の膜は張られたままだった。スティング以外の誰かが代わりに術を発動しているようにも見える。
「俺たちじゃないよ」
ディクスが手を振る。しばらく待っても水の膜は消えなかった。その様子をスティングがずっと見ている。
――― もしかして・・・
"火"の文字が彫られている柱に触れる。そして火の術を発動させた。柱が炎に包まれる。
「スティング?」
スティングは術を封じた・・・がやはり炎は消えなかった。
「わかりましたよ」
一人納得したようにスティングが静かに言った。
「とりあえず自分が得意な術タイプの柱に触れてください」