D.Force The First Chapter
Force-21

常夏のアバンチュール


「今回のお客様は"ディクス・クロード"さん・・・っと」
白い家のオーナー、アリスは帳簿に顧客情報を記入していた。久々の客だと思う。両親がラグーンを離れ、この商売を切り盛りしてきた。不自由だと感じたことはない。
「ねえ、アリス。久々にお客来てるんでしょ?どんな人だった?」
アリスに話しかけるものがあった。アリスの姉、ミリアだ。
どちらかと言うと真面目そうなアリスとは対照的な、少し派手めな印象だ。
「姉さん。ディクス・クロードっていう人たちよ。三人だって」
――――!?
客の名前を聞き、ミリアは一瞬目を見開いた。
そして、そのまま黙って思いをめぐらせた。
「どうかしたの?」
「ん・・・ううん。なんでもないわ」
そう答えソファーに座った。長い髪を指で弄ぶ。
「もーちょっとお客が来てくれれば良いんだけどね」
一息ついたアリスが背伸びをした時だ。
「すみません!」
走ってきたナチが玄関で声をかける。
「あの、わたし家を借りてるクロードですが・・・」
「ああ、はいはい。クロードさんですね。どうかしたんですか?」
アリスが戸を開けながら応対する。
「バーベキュー用の道具ってあります?」
「ええ、ありますよ。えーっと、そこの倉庫の中なんですけど・・・来てくれますか」
そう言って道具が置いてある倉庫の戸を開け、一式取り出した。一抱えあるが、持てない重さではなかったし、台車も貸してくれた。
「レンタル料は宿の引き払いの時でお願いしますね。他に借りる人もいませんし、私達も使いませんから、ずっと借りちゃっててください」
そして、道具一式をナチに渡す。
「すみません、ありがとうございます」
「磯に行けばウニとか貝がたくさん取れますから行ってみるといいですよ」
親切にもアリスが教えてくれた。
「楽しんできてくださいね!」
「はい!」
そう言ってナチは来た道を戻っていった。
「あの子は・・・?」
玄関にいたミリアが不審そうに尋ねる。
「家を貸してるお客さんの一人よ。もう一人は長い銀髪の男の人だったけどね。残りの人はまだ会ってないわ」
・・・残りの人・・・
「それより、ご飯食べよっ」
「――――― 」
なにやら考え込んでいるミリアに声をかけ、家に入った。


一方の白い家。ナチが戻ってきたところで夕食の時間が始まった。爽やかなスカイブルーのテーブルクロスの上に多種の料理が並べられていた。ディクス自慢の料理である。
「うまそうだろー?」
椅子に座っている他の二人に料理を盛りながら自慢げに言う。もちろん例のエプロンを付けたままだ。
スティングに、"あなたご飯よ〜"などと言って欲しいと思うナチだった。
「でも・・・ほんっとによくこれだけ作ったわね」
あきれたように言う。しかし、手にはフォークがしっかり握られていたりする。
「バリエーション豊富ですよね」
ひたすら包丁を研いでいた・・・いや、研がされていたスティングもあきれ気味だ。それくらいディクスの料理への熱意は強い。
「久々だったからな〜」
皿に料理を盛りつけ終わると自分も席につく。そして手を合わせる。
「じゃあ、食べようか。頂きますっ!」
そして、楽しい夕食のひと時が始まった。
ナチやスティングはもちろん、それ以上にディクスは自分で作った料理を褒めていた。
「わかるか?このドレッシング、船で食べた料理真似てみたんだが・・・」
「ナチ、それはこのソースをたっぷりかけて食べた方がうまいぞ。ちまちま食べずにがぶっといけ、がぶっと」
「スティング、あれの後にそれ食べたよな?風味が殺されるから間を空けて食べるようにな」
「―――――・・・・・」
とにかくいろいろうるさかった。確かに言われたとおりに食べた方がおいしいことはおいしいのだが、いちいち言ってくるディクスに二人はややうんざりしていた。それでも文句を言わずに褒めながら完食した。
「ごちそうさまでした」
ご丁寧にうさぎに切られたりんごをかじる。ちなみにこのりんごがリディアからの輸入物であることをディクスは知らない。
「さすがにディクスは料理上手ですね」
キッチンで洗い物をしているディクスに話しかける。料理に関しては一から十まで自分でしないと気が済まないらしい。
「料理歴はそれなりに長いからな」
「最初はまずかったよねー」
ナチが口を挟む。
「仕方ないだろ?それまでやったことなんかなかったんだし。それにお前、どんな料理でもうまいって全部食べてたじゃないか」
ディクスが言い返す。
「だってせっかく作ってくれたものその場でまずいだなんて言えないし・・・今だから言えるのよ。それに、今は一流の料理の腕持ってるんだからいいじゃない」
「それくらいの腕を持っててうらやましいですよ。いざとなったら料理店でも開くといいと思うんですけどね」
「スティング・・・お前、料理できても関係ないだろ?エンドレスにいればいつでも高級料理食べれるんだし、将来は決まったようなもんなんだろうし・・・」
「まだ決まったわけじゃありません!」
珍しく声を上げて否定する。
「ご、ごめん・・・」
少し驚いたディクスが反射的に謝る。
「・・・・」
気まずい沈黙が流れた。スティングも悪いと思ったのか、うつむき加減だ。
「ねえ。さっきバーベキューセット借りてきたから、明日は外で色々焼いて食べよう?アリスさんからウニとか貝とか取れる場所教えてもらったし・・・わたし明日、魚釣りがてらに獲ってくるから」
あわてた様子で一気に言う。
「・・・ナチ、僕も着いて行っていいですか?」
スティングが言う。しかしやはり後ろめたい様子だ
「そりゃあ、もちろん!一緒に行こうね。たくさん魚釣って、貝とって・・・ディクスの味付けでおいしく食べようね。ねっ!ディクス」
「ああ!俺なんでもおいしく料理してやるよ!俺の手にかかればどんな・・・」
「じゃあ、決まりね!」
ディクスの言葉をさえぎりナチがさけぶ。ナチの言葉にスティングは微笑みながらうなずいた。


「じゃあ、スティング。どっちが先に釣れるか競争ね」
ナチが釣り針に餌をつけながら言う。まだ涼しさの残る早朝ではあったが、スティングはナチにたたき起こされ、眠い目をこすりながら海に来ていた。
「わかりました。僕はこっちで釣り糸たらしてますから」
「うん、釣れそうになったら声上げてね」
ナチはテトラポッドの上をひょいひょいっと歩きわたり、ここぞと思うポイントに落ち着いた。
――――― 負けないからねー
意地でもスティングより先に魚を釣ってやろうと竿を思い切り振り、錘を遠くになげた。
一方、ついていかなかったディクスは立派に主夫をやっていた。
「洗い物も済ませたし、掃除もした・・・もう、昼の準備でもするか?」
そう言って壁にかけられた時計を横目で見る。九時を指していた。どうみてもバカンスのようには見えないが、長い旅を続けていたディクスにとっては、この日常生活スタイルがバカンスの一種らしい。
まだ、早いか・・・・
さすがのディクスもその時間から食事の準備をする気にはならなかったらしい。後ろ頭をかくと、エプロンをはずし、外に出た。
そして、少し家から離れ、家を見上げた。目を瞑り、両手を合わせる。
しばらくそうしてから、家のオーナー、アリスの元へ向かった。
「すみません」
しばし歩いてアリスの家につく。しかし、誰もいないのか反応はなかった。
―――― 留守か?
家の裏に回って確認してみる。
「イーデルさん?」
ディクスの目に入った人物があった。ディクスの声に反応して振り返る。長い黒髪が宙に浮いた。
「!」
「オーナーさん・・・ですよね。クロードですけど・・・」
言いかけてはたっとやめる。
・・・!?
目の前のオーナーと思しき人物の体が震え始めたからだ。
「・・・あ、あの・・・」
ディクスが恐る恐る声をかける。なにがなんだかわからない。気分でも悪いのかと、心配げに近づいた。
「んっ!?」
女ははっと顔を上げ、ディクスの顔をじっと見つめた。驚いたディクスは声を上げる。
「うええええっ!?」
その瞳には涙が浮かんでるではないか!今度は素っ頓狂な声をあげ、思わず後ずさる。
――― 俺、何か悪いことしたか!?な、なんで泣いてるんだよー!!
「良かった・・・」
「えっ?」
「会いたかった!!」
「!!!!!!」
黒髪の女・・・ミリアは感極まったようにディクスに抱きついた。全く状況の把握できないディクスは混乱し、ただ立ち尽くすしかなかった・・・・


「ナチー!糸ひいてるんですけど!!」
テトラポッドの上で糸をたらしていたナチに、スティングのリーチの声がかかる。
「うそっ!?」
竿を慌てて溝に固定し、スティングのもとに走っていった。
「あー、ほんと!」
「ど、どうするんですか、これ」
大きい獲物なのか、竿はだいぶしなっていた。スティングも負けじと腕に力をいれている。
「えっとね、まずリール!リールひいて!で、近づいたらわたしが網ですくうから」
片手で必死に竿をささえ、リールで獲物を近づける。だいぶ引き寄せたところで、ナチが大きな網で獲物をすくった。かなり重いのか、スティングに加勢してもらいながらようやく引き上げる。
「うわっ!・・・はーっ・・・重いー!!」
どんっ
獲物をすくい、地面に引き上げた。スティングが釣った魚の全容が明らかになる。
二人とも魚に視線を落とし・・・
「・・・・」
―――― オレンジ色だ・・・
スティングが釣った魚は体長一メートルくらいの、大きな赤い目を持った鮮やかなオレンジの色のものだった。大きな口には鋭い歯がびっしり生え、パクパクしている。太陽の光を受けてきらきらと輝いていた。
「・・・魚・・・・?よね。やっぱり」
勝負に負けたことも忘れ、ナチは呆然と魚を凝視している。
「・・・ですね。でも、ディクスがおいしく料理してくれるんじゃないですか?俺の手にかかれば・・・って言ってましたし・・・」
スティングも魚を凝視している。魚の容姿に圧倒され、喜びもないようだ。シーラカンスをオレンジにしたような魚は、その場から逃れようと、その巨体を一心にくねらせている。
「なんとかなるかな・・・?取りあえず釣り針とらなきゃ」
と思うものの、手を口に入れれば血が噴き出すのは必至。なかなか行動に出ようとしなかった。
「釣り針の予備ないんだけど・・・」
「ナチはどこで釣ってるんですか?」
「あっちのテトラポッドの上で・・・そうだ!一緒に釣る?あっちだったら普通の魚がいたし、おいしそうなのが釣れると思うんだけど」
「じゃあ・・・これ・・・どうします?」
「凍らしちゃおうか。逃がすのももったいないし・・・バケツに入らないし」
「そうですね。じゃあ」
言って、うごめく魚に手を伸ばす。精神を集中し術を放った。
ぴしっ
魚の動きが一瞬して封じられ全身が氷漬けにされた。これなら腐ってしまうこともないだろう。
「これでいいですね!」
「にしても・・・ラグーンって本当に変な魚ばっかりね。魚ばかりじゃないか。果物とかも、食材全部見たことないのばっかり」
「でも、見た目よりおいしかったじゃないですか。ディクスの料理の仕方が良かったせいかもしれませんけど」
「うん。もしかしたらこの魚もおいしいやつかもしれないしね。ディクスに期待しましょうか!」
スティングは周りをまとめ、ナチが釣っているポイントに移動した。
「まだ引いてないなー」
ナチが固定していた竿を手に取り座った。スティングも隣に座る。
「海は広いですから・・・」
すぐ下に波を寄せている海に視線を移す。テトラポッドにぶつかり砕ける波。狭いところではあったが、小さい魚が群れをなして流されまいと尾を振っている。
「あれ・・・?もしかして・・・」
スティングは立ち上がると、テトラポッドの間に体をいれて手を伸ばす。
「何か見つけたの?」
訊かれるが、スティングはなかなか顔を出そうとはしなかった。相変わらず、半身を入れたままなにやら腕を動かしている。
「落ちたら危ないよー」
それでも上がってこない。気になったナチは竿を再び固定して何か作業をしているスティングに近づいた。スティングがようやく顔を上げる。
「何やってたの?」
「これですよ!」
顔を上気させてナチに手に持っていたものを見せた。
「貝・・・?もしかして、レムガイ!?」
その言葉にスティングは嬉しそうにうなずく。手には手のひらほどの大きさの貝が乗っていた。
「もしかして・・・と思って。でも、本当にレムガイとは思いませんでした」
再び体を隙間に入れると、今度はたくさんのレムガイを取り出して見せた。どうやら貝の回収にいそしんでいたらしい。テトラポッドの上にたくさんの貝が転がる。
「うわー!こんなにたくさん!これ、バターと一緒に焼いて食べるとおいしいんだよね」
「ええ、結構人気のある貝だと思うんですけど・・・ラグーンでは食べないんでしょうね。ここの隙間だけでこんなにたくさん」
「おいしいのにねー。離島ってだけで、こんなに食文化って違うものなのかな?」
「レムガイはエンドレス以外に食にするところはないそうですから。僕らにとっては普通なんですけどね」
ナチも別の隙間をのぞく。すると、やはり数個のレムガイが見え隠れしていた。どうやらここはレムガイの群生地らしい。
「じゃあ、わたしも」
同じように身を入れると手を伸ばしてレムガイをとった。
「採れた!・・・でも、奥のほうにあって取りにくいね」
手近にあった、魚を入れるはずのバケツに採った貝を入れた。
「魚はなかなか釣れてくれないし。いろんな貝でもとったほうが収穫ありそうね」
「どこかいいところでもあれば・・・」
「あっ、そういえばオーナーさんにいいポイント教えてもらったんだった!磯にたくさんってあるって言ってた・・・」
「行きますか?」
「うん、行こう!」
まだ始めたばかりの釣りを早々に切り上げ、磯に向かう二人だった。


「・・・・・・・」
一方のディクスはまだ固まったままだった。
―――― こ、これは一体・・・!?
混乱しすぎて今にも術を暴発しかねない状態だった。しかし、寸でのところで何とか押しとどまり、理性を保っていた。手を肩にかけてやるのもどうかだし、このまま抱きしめるのはさらにどうかと考え、とりあえず話を聞こうと抱きついた女性をはがし(?)た。
「な、なあ?大丈夫か?」
恐る恐る声をかけてみる。すると黒髪の女――― ミリアは、まだ涙を浮かべたままではあったがにっこり笑って見せた。
あ・・・笑った。
安心して思わず笑顔で返す。
「なんだかわからないけど、ま、大丈夫そうだからいいか」
「本当に久しぶりね」
ミリアがそう言った。
「・・・久しぶり・・・?」
訝しげに問う。
「ええ。だって十年ぶりよ。だってあなた急にいなくなるんだもの。将来まで誓った仲なのに」
――――――― 俺じゃねぇーっ!!
心の中で絶叫する。ミリアは続けた。
「でも、本当に良かった・・・迎えに来てくれたのね。嬉しい!」
そう言って再び抱きつこうとしたミリアをあわてて避けた。
「な、なんの事だ!?俺はディクス・クロード!昨日、観光で初めてここに来たんだ。君の事は全然知らないよ!」
「そんな!私の事忘れちゃったの!?どうして!?」
「知るかーっ!!」
その場にいられなくなったディクスは、ミリアを振り切り砂浜まで走った。しかし、それをミリアが追ってきた。
「ディクスッ!なんで逃げるの!?」
「俺じゃないって!」
走り慣れない白い砂浜を全速力で逃げる。しかし、さすがは現地人。ミリアは体力があるのか、慣れているのか、ディクスとの距離を徐々に詰めていった。
「なんなんだよー!」
そのまま走り続け、ナチとスティングの影が見えた。
・・・ナチとスティングか・・・?
「あれ、ディクスじゃないですか?」
「えっ?あ、ほんとだ。ディクスー!」
走ってくるディクスに気づいた二人が手を振る。ディクスはラストスパートとばかりにスピードをあげ、息も絶え絶えに二人の目の前で止まった。
「はあはあはあ・・・」
「どうしたんですか?」
全速力で走ってきたディクスに、二人は顔を見合わせる。ディクスは相当疲れたのか、なかなか答えようとしなかった。
「ねえ、見て!たくさん貝が採れたのよ。バター焼きにして食べよ・・・」
「ディクス――――― っ!」
ナチが皆言い終える前にミリアの声が辺り一帯にこだました。
「うわっ、来た!」
「てぇーい!」
ミリアが掛け声とともに砂浜を力強く蹴る。ディクスは駿足の速さでスティングの後ろに隠れた。
「一体どうし・・・はぐっ!!」
自分の背中に隠れたディクスを振り返ろうとしたスティングの頬にミリアの強烈な一撃が入った。
ずしゃあっ
そのまま砂浜に伸びてしまった。
「す、スティング!?」
ナチがあわてて様子を見るが、どうやらあの一撃で逝ってしまったようだ。すぐに復帰するとは思えない。
「きゃああっ!ちょっ、ちょっとあんたなにすんのよ!」
白目をむいてしまったスティングに驚いたナチがミリアに非難の声を上げる。しかし、ミリアはそんなナチの声を無視し、目の前の標的にまさに襲い掛からんとしていた。
その標的―――― ディクスは蛇ににらまれたカエルのごとく顔に恐怖の表情を張り付かせたまま戦闘態勢に入っていた。いつでも攻撃回避できるように神経を張り詰める。
「どうして逃げるの・・・?私はあなたを愛しているのに!」
「アンタの勘違いだろ?それは俺じゃないし、俺はアンタのこと愛してない!」
・・・愛している・・・?
二人の会話に耳を傾けていたナチが頭の中を疑問符で一杯にして考える。
―――― ディクス、誰かと勘違いされてるんだわ。
「そんな・・・私はずっと待っていたのに・・・ずっと・・・ひどいわ!!」
最後の一言とともにミリアの体から気の塊がディクスに向かって放たれた。
戦闘態勢に入ったディクスはそれを余裕で相殺する。しかし・・・
「離さないんだから!」
同時に突っ込んできたミリアを避ける術は知らなかった。
「助けてーっ!」
まさかの展開に声を裏返しにして叫ぶ。見た目とは裏腹に、ミリアの華奢な腕はディクスの体をぎりぎり締め上げる。
その様子を呆然と見ていたナチが我に帰る。
「!静観してる場合じゃないわ!何とかしなくちゃ・・・えーっと・・・雷電!」
突き出したナチの手にわずかに光が漏れる。そして次の瞬間―――――
バチッ
鋭い音とともに、ディクスとミリアが互いに吹き飛ばされる。そして同時に砂浜に倒れた。ぴりぴりする体を何とか立たせ、ディクスはよろよろとナチの方に寄った。
「ディクス、一体どうしたの?」
「・・・俺もわからないよ・・・」
本調子じゃないディクスを支え、ナチが訊くが、当の本人のディクスもわけがわからない。事の発端、ミリアはうめき声を上げながら立ち上がった。
「そんな・・・」
二人を見据える。
「その女のせいね。その女がディクスをたぶらかしたからディクスは・・・」
さらにわけのわからないことを言い出した。驚いたのはナチだ。
「な、何言ってるのよ!そんなわけないじゃない!」
「許さない!」
ものすごい殺気に二人はただ立ち尽くすしかなかった。