D.Force The First Chapter
Force-28
子竜の行方
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「子竜は生きてる・・・・?」 ディクスは信じられないという表情を隠せないでいる。 ・・・それならば何故人間の前に現れなくなった? 「守護神に仕える子竜は全部で5体。守護神の暴走を見るに耐え切れず、封印を施した・・・けれど、直後に守護神の力に飲まれて死んでしまった・・・それがあなた方の知識ですね?」 同時に二人ともうなずく。 「我々にも守護神がどうなってしまったのかわかりません。本当に封印されしまったのか・・・でも、子竜は生きていたのです」 ――――― あるべき姿を変えられて・・・ 「じゃあ、今までの生活が変わらないのはその子竜が影で支えてるから・・・・?」 ナチがまだ信じられないと言うように訊く。 ・・・生きていたのは竜神じゃなくて子竜だったの・・・? 「ええ。彼らが守護神の代わりにディオール大陸を守ってきたのです。人間の目の前には姿を現さない・・・けれど、人間をいつくしむ心は決して褪せることはなかった」 ――――― それはあの方の教えだから・・・ 「だから大陸を守護するものがなくなったネルディアス大陸のように、このディオール大陸は荒廃する事はなかった。彼らの主人を人間に再び信じてもらえるように人知れず暗中飛躍していたのです」 ・・・従来の・・・いえ、それ以上の人間との関係を築く為に・・・あの方のために! 「竜神が生きている・・・帰ってくるという保証はないのにか?」 ディクスの質問にひるむ。一瞬曇った表情を見せた。 「保証がないといけないのですか?」 ――――― 信じて待つことしか我々にはできないのに・・・? 今度はディクスがたじろいだ。 「信じて待ってはいけないのですか?」 「そ、そういうわけじゃ・・・ただ・・・つらいだろうなって。そう思っただけだ・・・」 気圧されたのか、気まずそうに答える。 「・・・他に訊きたい事はありますか?」 それからしばらく続いた沈黙を破るようにセルディアは問いかけた。 「エルダスにはフォースはないんですか?わたしたちフォースを集めたら何かわかると思って探してるから・・・荒野に来ればフォースが見つかるんじゃないかって思って」 ナチが取り繕うように話題を変える。 「残念ながらもう荒野にはフォースはありません。我々が探しつくしました」 その言葉にナチは残念そうな表情をする。 「でも、この神殿には二つのフォースがあります」 そう言って投げかけた視線の先に祭壇があった。 「普段はあの場所に飾られています。フォースは七つのかけらに分散したといわれています。ディクスさんが持つ三つのかけら、そしてこの神殿の二つのかけら・・・」 「じゃあ、残りは二つ・・・・?」 黙っていたディクスが口を開く。 「つまり現時点でこの神殿には既に五つのかけらが集まったということになります」 「フォースは互いに求め合っている・・・」 セルディアが口にした言葉を思い出すように言う。 「確かにその通りだわ。フォースは互いに導きあい、一つになろうと・・・」 セルディアはようやく認めた二人にうなずく。 「良かったじゃない、ディクス!!」 「何が?」 突然元気よく声を上げたナチにディクスが不思議そうな顔をする。 「ほら、あるべき場所に戻ろうとするんでしょう?だから今持ってるフォースをずっと持ち続けていればわたしたちが探さなくてもいずれは集まる場所を突き止めることもできるし、集まったフォースも見ることできるじゃない。良かったねー!」 などと言って嬉しそうにディクスの背中をばしばしたたいた。 「お前なー」 「だったらフォースを探すために大陸を転々としなくても、どこかフォースの事調べられる場所見つければそこでずっと留まれるじゃない。経費浮くよ?」 ――――― 経費が浮く・・・? その言葉にディクスの顔が変わった。非常に嬉しそうだ。 「それも・・・そうだな・・・」 腕を組んで考え込む。 ―――― それなら家だって建てられるし・・・金だって溜めることも・・・老後は安泰じゃないか!! 「エルダスに来るまで時間かかったけど、収穫あったじゃない!子竜のことも、フォースのことも!きっとディクスの能力のこともわかるよ!」 ナチに言われその気になったようだ。 今のディクスの頭には老後安泰の四文字しか浮かんでいなかった。 「どこに滞在してらっしゃるんですか?」 「えーっと・・・たしかなんとか・・・グランドホテルっていう高層のホテルなんだけど・・・」 「私で良ければ、長期滞在にお勧めの宿紹介しましょうか?」 セルディアが提案する。 「いいんですか?それなら助かります!良かったね、ディクス!」 未来に思いをはせているディクスをつつく。 「マイホームかぁ」 なにやらぶつぶつつぶやいているディクス。それを見てセルディアが苦笑する。ナチは恥ずかしそうだ。 「私今日の午後はちょっと用事があってご一緒できません。ですから、住所書きますね。入り組んだところではないのでわかると思います。ちょっと待っててくださいね」 そういうとその場を離れた。 「はぁ〜、良かったね。ディクス。色々収穫あったじゃない。ディクスの能力のことは結局わからないけど・・・けど、勉強になったね」 「ん?ああ、そうだな。フォースの性質みたいなものが少しでもわかっただけでも十分だ。それに、マイホーム!やっぱ建てるならリスタルだよな!」 ディクスの老後を安泰に暮らすための第一歩ともいえるマイホームの実現が現実味を帯びてきたのが嬉しいのかそれしか頭にないようだ。 「あのね・・・建てるって。ディクスの能力のことわかってからないと戻れないじゃない」 「別にいい」 即答に絶句する。そして次の瞬間ディクスは我に帰る。 「と、とにかく大丈夫だ!それが俺の存在理由なんだから」 何のことか良くわからないナチは訝しげにディクスを見る。 「大丈夫だって!それよりマイホー・・・」 まだ言うディクスを一撃した。 セルディアからもらった地図を頼りに、二人は新しい滞在場所に来ていた。 エルダスの中心からだいぶ離れた場所。これからたくさん訪れる人を予想しての大きな住居区だ。 「中心からは離れるけど、まあ、環境はいいみたいだな」 周りを見ながら言う。 ・・・あそこに店もあるし・・・料理もばっちりだな。 スーパーマーケットを見る。 「一週間の賃貸型アパート・・・これならいいわね。少なくとも昨日と待ったようなホテルよりかは断然安いわ」 パンフレットを手にしているナチ。 「そうだな。じゃあ、善は急げだ。借りに行くか」 そう言って二人は歩き出した。 夕方。竜神を祀る神殿は沈もうとする太陽の光を受けて紅く染まっていた。それはまた、昼間とは違った神秘的な雰囲気をかもし出していた。 人の出入りのなくなった神殿の中心にある祭壇。一人の男がいた。 「エクセル様」 祈りを捧げるその男にセルディアが声をかける。 「帰っていらしたんですね」 その声に反応するようにエクセルと呼ばれた男は立ち上がり、セルディアの方に顔を向ける。セルディアと同じ、長いローブ――――― 司祭の服を身にまとった青年だ。 「私がいない間ご苦労だった」 「いいえ。私は何も・・・それより、今日大変なことがあって・・・」 「大変なこと?」 うなずいてセルディアは今日、神殿に来たディクスのことを話した。 「まさか・・・そんなことが生身の人間にできるはずが・・・」 難しそうな顔をして言う。 「でも、事実です。私も彼がフォースの力を行使するところをこの目で見ました。確かにあの光はあの方と同じもの」 そういうとエクセルの手をとり、今日、実際に見たものを送り込む。 セルディアの記憶を通して視るその光景。 「これは・・・・・」 エクセルの頭に流れ込む映像と同時に、懐かしさがこみ上げてくる。いつも感じていたあの感覚。 ――――― 確かに同じ・・・間違いない! 「この男は一体?我々でもこんなに強い光を引き出すことはできないのに」 驚きの表情を隠せない。 「彼もその能力のことを知ろうと、旅をしているそうです。フォースを集める旅を・・・そして今、彼の手元には三つのフォースがあります」 「つまり、あるべき場所は・・・」 そこまで言ってセルディアは無言で答える。 「その男はどこに?」 「人間の住居区に滞在しているはずです。私が紹介しましたから」 「・・・本当に、ただの人間なのか?どうしてフォースの力を行使できる?」 「彼はあの方が最後に破壊した町、ディスティールの生き残りだそうです。彼の妹共に、二人だけの生存者。恐らくそれが何か理由につながるのではないかと」 「では、その妹は行使できるのか?」 「いいえ、それは言っていませんでした。恐らくできないのでしょう」 「男のあの方との接触は?」 「いいえ、それも・・・」 見つからない答えに苛立ちを覚える。 「ネルディアスの子竜が接触したと言っていたな。ディオール大陸に乗り込んできたのか?」 「それはないでしょう。もし、乗り込んできたらその気を感じるはずです。ですから、干渉の術を使って接触したのだと思われます」 「ネルディアス大陸の守護神・・・何が起きたかはわからないが子竜をよこすとはな。ネルディアスの守護神は一体何に力を使ったのか・・・」 うめくように言う。 日もすっかり落ち、辺りは暗闇に包まれた。後は祭壇に灯るろうそくの炎だけ。 「他の子竜にもそのことを伝えたのか?」 「まだです。まずはエクセル様にお話しようと」 「律儀だな」 エクセルが笑う。 「・・・頭が混乱していて何も信じられなくなった私の記憶を解放してくださったのはエクセル様なのですよ?私はどれだけ救われたか・・・危うく子竜としての誇りを忘れるところでした」 「そう簡単に忘れる事はない。大丈夫だ」 真剣なまなざしのセルディアの肩に手を置く。 「私はこのことを皆に伝えよう。悪いがもうしばらくここを空けても・・・」 「それならば私が行きます。皆に久しく会っていませんから」 今すぐにでも出発しようとしたエクセルをセルディアが制す。 「それに、司祭のいない神殿なんておかしいです」 笑いかける。つられてエクセルも微笑んだ。 「そうか・・・ならば頼んだぞ、セルディア。これはお前に預けよう」 そういって二つのフォースの一つを渡した。 「では行って参ります」 神殿を離れるセルディア。しばらくしてエクセルは神殿の巨大な窓に視線を移した。 その目は天高く舞い上がる竜のシルエットを捉えていた。 「いっただっきまぁーす!」 元気な声を上げて目の前に広がる料理を制覇し始めたのはナチだ。 「おう!どんどん食え!」 大好きな料理を終えたディクスはナチの様子を見て満足気だ。 まるい深皿を包み込むようにしてあるパイをフォークで破り、なかのクリームソースで和えられたきのこや鶏肉、野菜を口に運ぶ。 「はふっ、美味しい〜。やっぱりおふくろの味よねー。この季節のあたっかいシチューは身にしみるわ」 うなずきながら言う。 エンドレスの首都、デルタを出たのがやや暑さを感じる初夏。それから約四ヶ月。 季節は既に秋に入ろうとしていた。特に北のほうに位置するエルダスは半そででは肌寒く感じる気温だ。 「おふくろの味じゃなくて兄貴の味だろ」 「・・・・それなんかめちゃくちゃ嫌なんだけど・・・」 さらっと言ったディクスにナチが即座に突っ込む。 「でもまあ、温かい食べ物が身にしみるのは確かだよな。エルダスは冬が早いから。エンドレスかリスタルだったらまだ暑いくらいなんだけど」 言って、温野菜のサラダをつついた。 「うーん、そうだね。まだ半袖でも全然平気だもんね。やっぱりエルダスはちょっと寒いかも」 あつあつの大きな鶏肉をほおばる。 「でさ、明日からどうするの?また神殿に行く?」 「ああ、行って来る。また何か新しい話し聞けるかもしれないし」 「それから?」 「えっ?それから・・・」 それから――― ディスティールに行くよ、俺は。 「まだ決めてない」 声に出さずに心にとどめる。ナチはそっかー、と言いながらほお杖をついた。 「こら、食事中にほお杖をつかない。蛇が来るぞ」 「それは夜中に口笛吹いたら、よ。それはいいとして・・・ディクス、わたし行きたい所があるんだけど」 「ん、なんだ?」 「うん、わたしね、ディスティールに行きたい」 サラダボールのミニトマトを転がしながら言う。ディクスの手が止まる。 「行ったから何ってわけじゃないんだけど・・・行ってみたいと思って」 ディクスの様子を伺い見る。 「駄目かな?」 しばらくの沈黙。 「いいのか?」 しばらく黙ってからディクスはそう口にした。 「うん、いいの。リスタルが故郷だって、そう思ってきたけど、ディスティールが本当の故郷であることは変えられないことだし。それに、お父さんやお母さんに花くらい手向けたいじゃない。十三年ぶりなんだし」 転がしていたトマトをフォークで刺す。 「何もなくてもいいの。ただ行ってみたいだけ、それだけだから」 そしてトマトを口に運んだ。 「・・・ああ、わかった。落ち着いたら行こうな、ディスティールに」 根拠のない義務感に駆られているナチを察したのか、何もいわずディクスは了解した。 翌朝、ディクスは一人で神殿に来ていた。 ナチはというと、エルダスの気温が身体に障ったのか風邪をひいてしまったらしい。こじらす前にと、今日は家で静養することになったのだ。 「結局ここしか行くところないんだよな・・・」 エルダスに行けば何かある!と強い思い込みを抱いていたディクスではあったが、実際こうやって来てみて手がかりがある場所といえばこの神殿しかないということに少し焦っていた。 ――――― でもまあ、ここより手がかりのありそうな場所はないしな 気を取り直して再び神殿に足を踏み入れた。 今朝は昨日よりいっそう気温が低いとニュースで告げられていた。そのとおり、まだ半そでのディクスは朝の空気の冷たさに寒気を覚えていた。何か羽織ってくれば・・・と後悔した。 神殿の中とはいえ、その冷たさは身にしみる。 「壁画・・・」 昨日はセルディアの話しを聞いただけで神殿の中をよく観察しなかった。見なかった回廊の壁画をゆっくりと眺める。 「手がかりがあるわけないよな、こんなところに」 ・・・俺の能力なんて。昨日だってわからなかったし・・・やっぱりフォースが全て集まらないとわからないのだろうか? 一人考え込む。 でも、フォースが集まったとして、それでも何もわからなかったら? 眉間にしわを寄せる。 徒労に終わるだけじゃないか・・・それに、完全な状態って・・・ 「うーん」 一人うなる。 「ま、なんとかなるだろ」 ・・・それくらいしか今することないしな。 しばらくひとりで葛藤する。それで自分に向かってきている人物に気づかなかった。 ――――― あれは・・・・? 祭壇に向かおうとしていたエクセルは目の前の人物を捉えた。それは昨日セルディアの記憶の中で見た人物。フォースを行使できるディスティールの生存者・・・ 緊張が走る。そのディクスはエクセルにも気づかずなにやら思案している。 「壁画に興味がおありですか?」 しばらく観察していた自分にまだ気づかないディクスに声をかける。 「えっ?」 周囲に誰もいないと思っていたディクスはあわてて声のほうを振り向く。エクセルはようやくディクスに認められてから歩み寄った。 「私はこの神殿の司祭を務めているエクセルといいます。以後お見知りおきを」 セルディアからディクスの事は聞いていたが、ディクスはエクセルのことを知らない。 「あなたは?」 名前から切り出すことにした。 「俺はディクス・クロード・・・ちょっと調べてることがあって・・・」 ・・・この神殿の人間は人を驚かすのが好きなんだろうか? 昨日、同じように突然セルディアに声をかけられたことを思い出す。 「ではあなたが、フォースの力を行使できる人間・・・ですね」 少し唐突かもしれないとは思ったが、早速本題から入ることにした。しかし、ディクスは予想していたのか気に留めていないようだ。 「ああ、セルディアから聞いたんだな」 苦笑しただけだった。 「あなたのその能力を解明するためにここエルダスに来たと・・・」 「その通り。・・・結局何の手がかりは何もつかめなかったけれど。でも、フォースや子竜に関する情報は聞けたから、それだけでも十分だ。セルディアの言っていた、フォースはあるべき場所の戻ろうとする力を信じて、これからも気ままな旅を続けることにするよ。いつかはわかる日が来るだろうから」 再び壁画に目を移す。その壁画は全てが視界に入らないほど巨大なものだった。 「お力になれなくてすみません。遥々遠くからの来客だというのに」 軽く頭を下げ、そして再びディクスを見遣る。 ―――― 見た目はどう見てもただの人間・・・"気"だってそのものだ。他の人間となんら変わらない・・・ ディクスをまじまじと見る。 ――――― 一体何故? 思わず険しい表情になる。 ディクスは一人、緊張感に固まっていた。 ・・・・な、なんだ?なんか俺めちゃくちゃにらまれてないか!? 自分を観察するように見ているエクセルをにらんでいると勘違いしているらしい。 お、俺なんか悪いことしたっけ!? 平静を装い、内心激しく動揺しているディクスはその場を立ち去ることにした。 ずりずりと少しずつ出口の方へ足をずらす。 「・・・お帰りですか?」 少しずつ離れるようにして移動すること三十メートル。ディクスが小さく見えてきたところでようやくエクセルが声をかける。まるで悪いことがばれたように身をびくんと震わせるとそろそろと振り向く。 「あはは・・・妹が・・・待ってるから・・・」 ぎこちない笑みを浮かべるとそのまま猛ダッシュで走って行ってしまった。 その突拍子もない行動に思わずひるむ。声をかける暇もなく消えてしまった。 「・・・・」 つくづく謎の多い人物だな・・・ 誰から見ても不審な行動をとったディクスの後を追うように神殿の入り口にたつ。 「守護神の加護があらんことを」 祈るようにつぶやいた。 走り続けて約十分。ディクスはオフィス街の一画で息を切らしていた。 「あー、びっくりした」 ほっと息をつく。 ・・・俺何も悪いことしてないのに・・・ まだ勘違いしているディクスはそのままあてもなく町を歩き始めた。しばらくして目の前にエレカーのレンタルをしている店にぶつかった。 ――――― ディスティールに行きたい ナチの言葉がリフレインする。 「・・・行くか」 エルダスからディスティールまでだいぶあることを知っていたディクスは、その店へ足を踏み入れた。 |