D.Force The First Chapter
Force-9
三つ目のフォース
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「なんで竜がこんなところに・・・?」 ディクスの言葉にスティングが驚いて言う。竜を捕まえたナチも驚きの色を隠せない。小さな竜はディクスになついたのかなかなか離れようとしなかった。 「俺にもわからないよ。こんな街中の家に竜が一頭で暮らしてるなんて」 「前の家の主人が飼っていたんでしょうか・・・?でも、その主人がいなくなってたった一人になってしまったとか・・・」 スティングにディクスがうなずく。 「小さいからまだ生まれたばかりなのかな?竜の歳ってわからないけど。見てると可愛いわね」 いかつい竜の印象はなかった。大きな瞳がとても綺麗だ。 「仲間は・・・ここらへんにいるわけないよな。しかし、よくひとりで生きてこられたな」 「草食の竜じゃないでしょうか?小型の竜なのかもしれませんから、庭にある草でも十分なんでしょう」 スティングが辺りを見回す。よくよく見ると床には埃が、天井にはクモの巣がはっていた。人の気配はないようだ。ここ数年使われている形跡がない。 大きな目を持った竜はディクスに甘えるように腕の中に顔をうずめた。 「そっかぁ。いつか帰ってくるかもしれないご主人様待ってるのかな?」 「それは分かりませんが・・・僕ちょっと町の人に聞いてきますね、この館のこと」 そういうとスティングは行ってしまった。 「さっき、この子が扉を引っ張ったのかな。ちょっと重過ぎるんじゃない?」 「意外と力あるのかもな。スティングか戻ってくるまでしばらく待つか」 それからしばらくしてスティングが帰ってきた。 「どうだった?」 「この館の主人は十年程前に亡くなったそうです。鉱物のコレクターだったようで。跡取りもいないから館の処分に困ってるんだそうですよ。でも、呪われてるんじゃないかって噂もあったらしくて」 「呪われてる・・・お前が原因だな」 頭を小突かれた竜は首をかしげた。 「鉱物のコレクターかぁ。用のない人には全然興味ないものよね。フォース・・・あるのかなぁ」 ナチが心配そうに言う。 辺りを見るが、棚の中はほとんど空っぽ。フォースがあるようには思えなかった。 「じゃあ、俺だけ残るからさ。先戻ってていいよ」 「そんな、悪いですよ」 「大丈夫だって、この竜もいるし・・・ちゃんと帰ってくるから」 「わたしたち本当に帰っちゃうよ。いいのね?」 玄関の前に立ったナチとスティングがディクスに顔を向ける。 「ああ、じゃあ、宿でな」 「何かないものか・・・」 館に一人になったディクスは部屋の一つ一つを調べていた。廃墟と知って入った何者かが金目のものを奪ったのだろう。本以外のものはほとんどなくなっていた。 それでも真剣に探し物をしているディクスを小さな竜は珍しそうに見ている。 「なあ、ミニドラ。何でお前こんなところにいるんだ?」 ミニドラと勝手に名前をつけた竜に声をかけるが何も答えなかった。竜はさっきからディクスの手元を見ている。 「・・・ん?これか?ただの水晶だよ」 持っていた水晶をぶらぶらさせてみる。竜はそれを見ると足をバタバタさせた。 「ほらっ」 水晶を投げてよこした。竜はその水晶を不思議そうに見ていた。手元に光のなくなったディクスは今度は自分で光球を出現させた。 書斎なのか、壁一面に本が並んでいた。その一冊を手に取ってみる。 「なんだこれ・・??日誌?」 かなり古い感じの日誌だった。文字もかなりかすんでしまって読みづらい。 手元の明かりの光量を上げ、ディクスはその日誌を読み始めた。読むにつれて、この日誌の持ち主・・・つまり、この屋敷の主人について分かってきた。 どうやらこのここの主人は貿易関係の仕事をしていたらしい。そのことについて事細かに書いてあった。 さらに読み進める。そして、あるページに差し掛かったところでディクスの手が止まった。 「ネルディアス・・・?あっちも竜神がいなくなったのか?」 "最近ネルディアス大陸との交信がままならない。ようやく手に入れた情報によると、ネルディアス大陸の竜神は死の行進から姿を現さなくなったらしい。このままこの状態が続くのだろうか" ・・・・・・それって、十三年前の死の行進でいなくなったのはディオール大陸の竜神だけじゃなくて、ネルディアスの竜神も・・・ってことか? さらに読んでいく。しかし、ネルディアスの竜神がいなくなった理由はどこにも書いてなかった。 「気になるな」 日誌を元あった場所に戻そうとして・・・ミニドラが足元にいるのに気づいた。 手に何か持っている。だが、あの水晶ではない。 「あれ?」 ディクスはミニドラからそれを受け取った。 「まさか・・・」 「ただいま〜」 「お帰りー。遅かったわね」 あれから二時間ほどしてディクスは戻ってきた。あの竜はいなかった。 「どうでしたか?何か見つかりました?」 ナチとスティングが声をかけるがディクスはそれに対して何も答えなかった。 「竜はあそこにおいて来たよ。あそこなら誰も近づかないだろうし」 ベッドに座った。そしてナチに何かを投げてよこした。それをあわててキャッチする。 「何これ?・・・あれ、この感じ・・・もしかしてフォース!?」 「え?本当ですか?」 スティングがナチからフォースを受け取る。そして、手に転がす。 「・・・本当ですね。フォースです。何も感じない」 ナチもスティングも驚いていた。まさかこんなにすんなり手に入るとは思っていなかったのだ。 「ああ、探してたら・・・な。それにしてもあの依頼書相当古いやつだったんだな」 「古いって言ったって・・・随分昔の依頼書ってことよね。あそこの主人はずし忘れたんだわ」 「でもフォースが手に入ってよかったですね。なかなか見つからないんですし。儲けものですよ」 スティングが嬉しそうにフォースをディクスに返した。 「ああ、面倒なことにならなくてよかった。そのオーブっていうのも気になるけど。なあ、スティング、ネルディアスの竜神のこと何か知ってるか?」 「ネルディアス大陸の竜神がどうかしたんですか?」 「え・・・?ああ、洋館に置いてあって日誌みたいなのにその話題が書いてあったから」 「だいぶ前に聞いた話ですけど、ネルディアスの竜神は、ディオール大陸で起きた死の行進以来、人々の前に姿を現すことがなくなったんだそうです。昔は竜神が人の目に触れることが多いくらい友好的だったらしいんですけど。さらに、今はネルディアス大陸に上陸するのも困難なんです。船が難破したり、上陸したとしてもモンスターに襲われたりとか・・・そのあたりもネルディアスの竜神の失踪に関係あるのかもしれません」 「どうしてディオールの竜神と同じ時期に消えたんだ・・・?」 「そう思って、今度はリディア大陸の竜神に何か助けを請おうと船を出しました。それが先日帰って来たのですが・・・残念ながらリディアの竜神は教えてくれなかったようです。ただ『もうネルディアスは動き出している』それだけだったみたいで・・・」 「ネルディアスは動き出している・・・なんのことだか」 「わたし・・・よくわからないんだけど、竜神ってそんなにすごい存在なの?」 ナチが訊いた。 「どうかな?人それぞれだと思うよ。十三年前までは人間と竜神との関係は密接だった。人間の願いを聞き届けるかわりに、人間は竜神の聖域を干渉しなかった。それが長い間続いていたんだ。そうしているうちに、竜神は守護神としてあがめられるようになった。ほかの大陸でもこのディオール大陸と同じようなシステムができあがったんだ」 ディクスの解説にナチが納得する。 「それから子竜は人間と竜神との架け橋だったんです。人間の願いを子竜に託して、子竜から竜神に願いを聞いてもらってたんです。僕も竜神こそ会えなかったんですけど、子竜になら会ったことあります」 スティングが付け加えた。 「でも・・・ネルディアス大陸は竜神の存在がないに等しくなったから大変なことになってるんでしょう?なのに、竜神のいなくなったディオール大陸は何故大丈夫なの?」 疑問に思っていたことだった。洪水や、地震、飢餓から救ってくれたのは竜神だった。その存在がなくなったというのにディオールは平和そのもの。ネルディアス大陸は散々だというのにだ。 「そういえばそうですね・・・この十三年間、それまでと変わらない生活を送ることができてますからね。フォースのおかげでしょうか・・・?」 スティングが考え込む。 「きっとだれかが竜神のかわりに願いを聞き届けてるんだろうな。それが誰だかわからないが、竜神に劣らない力を持っているのは確かだ」 「なんかややこしいわね・・・うーん、でもなんかさ、フォースを集めたら何か起きそうな気がしてきた。ディクスの言い分は正しいかもね」 今までディクスのフォースに対する意見をほとんど真に受けていなかったナチだったが、今日のことがあって考え直したようだった。 「ネルディアス大陸の竜神が何を考えてるかわかりませんが・・・とにかく僕らはフォースを探しましょう。きっとなにか道が開けるはずです。それに今日の竜、何かの力になってくれるかもしれませんし」 ――――竜・・・か 「そうだな。とりあえずフォースを集めるか。それからだな、子竜のことも、ネルディアスのことも」 自分に言い聞かせるようにディクスがつぶやく。 「そうよ!うじうじしたって仕方ないわ。十三年前の真相がどうであろうと、わたしたちは今自分たちの目的を成し遂げればいいのよ。フォースを探してその力の真偽をさぐる!それでいいじゃない。何か起きたらそのとき考えればいいんだし。もっと気楽に考えよっ!」 ナチがディクスを元気付けるように背中をたたく。スティングもうんうんうなずいている。 「・・・だよな・・・俺たちの目的はフォースを探し出すことだし・・・今、ネルディアスがどうだろうと関係ないし。・・・何で俺こんなに考え込んでたんだろうな?たかが日誌に書かれてた単語にこんなに考え込んで。よーし!明日この町を出るぞ。荒野を目指してフォースを見つけよう!」 ディクスが言う。 「なら今日は早く寝よう。明日の朝早く出るぞ」 立ち上がり風呂に入りに行こうとした。 「夕ご飯いいの?わたしたち食べちゃったよ」 「一晩ぬいたってどうってことないよ。それよりも早く寝たいからさ」 苦笑いすると行ってしまった。 「何かと思いましたよ。でも、ネルディアスも何か関係ありそうですよね。フォースが集まったら調べる価値はあると思います」 「うん、わたしも興味出てきた」 「面白くなってきましたね」 早朝、三人は宿を引き払った。町を出る途中で見つけた店で朝食をとると早々と町を去った。 「ディクス、食べ過ぎたんじゃない?朝から食べ過ぎるとつらいわよ」 ディクスは昨日からほとんど何も口にしていなかった。昼間は暑さでダウンしてほとんど何も口にせず、夜はあんなことがあって結局食べなかったからだ。それを埋めるように朝食を食べたのだった。 「大丈夫だよ。それに今食べとかないといつこんなに食べれるかわからないし」 本人は全然気にしてないようだ。むしろ満足そうだった。まだ日差しが弱いせいか、涼しかった。昨日の昼間の暑さが嘘のようである。 「ナチ、そのマント買ったのか?」 ナチは昨日ディクスに巻きつけたマントを身につけていた。 「うん。安かったし、暑くなったら前を閉じて、風系統の術でも使えば涼しくなるから」 ひらひらさせてみる。 「そうだった・・・昼間は暑いんだった・・・あー、俺も何か対策考えとけばよかった」 かなり後悔してるようだった。連日の暑さに相当参っているようだった。 「あんまり役に立たないかもしれませんけど、水晶に力を移したら少しは涼しくなるかもしれませんよ。ほら、昨日ナチがやってたじゃないですか。あんな感じで」 「あ、そういや、昨日渡した水晶どうしたの?」 思い出したようにナチが訊く。力が移せるほど透明度の高い水晶はなかなか見つからない。高価なアイテムだった。ナチの問いにディクスは気まずい顔をする。 「あー・・・あれか・・・あれは・・・えーと、ごめん。落とした」 ナチの目の前で手を合わせて観念したように頭を下げる。ディクスは本当のことを言わなかった。言えばおそらく取りに帰るだろうと思ったからだ。 「落としたのっ!?」 ナチがショックを受ける。 「どこで?洋館の中?それとも帰り道?三つしかなかったのに・・・」 悲しそうに指を折る。しかし珍しくそれ以上ディクスにつっかかることはなかった。 「ちょっともったいないですね・・・でも僕も三つ持って来てますから、必要なときはそれを使いましょう」 「そうね・・・仕方ないか。フォースが見つかったんだし。スティングのもあるから大丈夫よね」 「本当にごめん。今度、ちゃんと補充しとくから」 ・・・財布の中身が気になるけど・・・・ 水晶の事でショックを受けているナチを見て、スティングが辺りを見渡し、そしてしばし考え込む。 「確かこの辺りに鉱脈があるはずです。エンドレスの所有なんですが。行ってみますか?今は閉鎖されてますけど入れるはずです」 スティングが思い出したように言った。エンドレスは大きな鉱脈を持っていた。 しかし数年前、別の大きな鉱脈が見つかったことで一つが閉鎖になったのだ。その鉱脈がこの周辺にあるらしかった。 「鉱脈?でも閉鎖されてんだろ?」 「大丈夫ですよ。これがありますから」 いいながら短剣の柄を見せた。 「これが鍵のようなものなんです。サイズは同じでしょう」 「じゃあ、鉱脈に入れそうね。見つかるかな?」 「大丈夫ですよ。力を使って鉱物を探すことはしなかったみたいですし、まだ掘っている途中で閉鎖になりましたから。だからきっと見つかります。それにこの鉱脈に僕たちの先祖の宝物庫があるって噂ですし・・・」 スティングが言うとすぐさま二人が反応した。目をキラキラさせてスティングに迫る。 「宝物庫?本当にか??」 「宝物庫ってやっぱりお宝よね?」 「た、多分ですけど・・・!以前、探索したけど見つからなかったって言う話ですし」 ディクスは地図を引っ張り出すと鉱脈がないかどうか調べ始めた。見落としがないように丹念に調べる。 「ディクス、多分ここから東の方向にあるはずです」 言われて地図の東側を探す。 「あった!鉱脈はあることにはあるな。・・・だがここから少し遠いか。今から出発してもつくのは夕方くらいか」 少々遠いところにあるが、ディクスは落胆した様子はなかった。 「でも行くんでしょ?」 ナチが訊くとディクスが顔を上げた。なんで?という顔をしている。 「だって顔が笑ってるもん」 「やっぱ荒れてるな」 ディクスが瓦礫が散乱している周辺を見回す。 あれからすぐに進行方向を変えて鉱脈に向かった三人は近くの川で野宿をした。そして夜明けとともに鉱脈の入り口に向かったのだった。 「入り口ってあれじゃない?」 ナチが指した方向に丈夫そうな木で組まれた穴があった。しかしその前に何かの石碑があった。その石碑に近づく。 「そうですね。これです。ここにこれをはめるんでしょうね」 言って例の短剣を取り出す。 「なあ、はめなかったらどうなるんだ?」 石碑があるだけでほかに何もバリケードするようなものはなかった。石碑を飛び越えれば誰でも中に入れそうだ。 「じゃあ、石を投げてみてください」 スティングに言われ手近な石を手に取るとそれを石碑の後ろに向かって投げた。ディクスは見えないシールドがあって、それが石を跳ね返すだろうと思っていた・・・が。 「あれ・・・?消えた・・・」 ナチが不思議そうに言った。ディクスは確かに石を投げたがその石は地面に落ちることもなく消えてしまった。その様子を見ていたスティングは嬉しそうだった。 「なんで?俺ちゃんと投げたよな・・・」 疑問に思いながらもう一度石を投げるが結果は同じ。石は文字通り消えてしまった。 「ループです。この石にループの術を封じ込めたんですよ。そして何かが侵入しようとしたときその術が発動されるようにできてるんです」 スティングは石碑にはまっている大きな赤い石を指す。 「この仕掛けにはまるとループ先に移動してしまうんです。だからこの先へは入れません」 その言葉に二人は感心していた。 「そんな術もあるのね。へー、すごいわ。思いつきもしなかった」 「ループか。面白いなー」 言いながら石をぽいぽい投げまくっている。やはり一つとして地面に落ちなかった。 「ループ先ってどこなの?」 「ああ、それはここからはるか遠いルシアナ砂漠の入り口につきます。帰りのループはないので注意ですね」 笑いながら言う。 笑い事じゃないよ・・・ 聞いていた二人があきれたようにつっこむ。 「まあ、とにかくはめてみようよ。お宝早く見つけよ!」 「そうですね。じゃあ・・・」 ナチに言われてスティングは石碑のくぼみに短剣の柄がはまるように固定した。かちっと音がした。同時にさっきまで赤かった石が青に変わる。 「なんか石の色が変わったぞ。もう解除されたんじゃないか?」 ディクスが石を投げる。そして今度はちゃんと向こう側に落ちるのを見届けた。 「解除されてますね。石の色も変わってますし。またループを発動させたかったらはめればいいんでしょう。じゃ、入ってみますか」 三人は鉱山内部に足を踏み入れた。エンドレスの財宝があるとかたくなに信じて・・・ |