D.Force The Second Chapter
Force-16
プライドをかけて
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―――――――― まーだ機嫌悪いみたい・・・ 昨日帰ってきてからずっと機嫌の悪いディクスを見てナチが思う。今朝も機嫌が悪そうだった。 いつものように早起きすると、朝からずっと夕飯の下ごしらえをしていたくらいだ。ディクスの機嫌は料理への取り組み度で容易に図ることが出来る。 「誰かにおじさんって言われたのかな?」 セフィーロの体を布でこすりながらナチが口にする。 「誰がおじさんだって?」 背後から突然聞こえた声にナチがびくっと体を振るわせる。恐る恐る振り向くとディクスが険しい顔で立っていた。 「あ、ディクス。料理終わったんだ?」 「終わったよ。―――――― ナチ、俺今からちょっと出かけてくるからレクサスの事頼むな」 別に怒りもせず、ディクスはそれだけ告げるとすたすたと行ってしまった。 「ディクス!どこ行くのー?」 術で飛びかけたディクスにナチが声をかける。 「演習場だ!」 一言答えると、振り向かずに去ってしまった。 「―――――― 演習場・・・?術の・・・?」 いつもは蔵書室に行くはずなのに・・・とナチが疑問に思う。 この館の前で練習しないところを見ると、大技を繰り出そうとしているのだろう。 絶対何かあったんだわ。 ナチが確信を持つ。 「・・・でも・・・」 ディクスの練習風景を見たいと思ったが、レクサスとセフィーロを置いていくわけには行かない。すると、二頭の竜がナチに顔を摺り寄せた。 「――――― そうだよね。わたしには二人の事の方が大事だもの」 そう言うと、ナチは二頭の頭をなでてやり、再び世話に専念し始めた。 日がだいぶ傾きかけている演習場にディクスは降り立った。 そのディクスに突然声がかかる。 「ディクスか!」 懐かしい声に顔を向けるとスレイドが手を振りながら走ってきた。 「へー、珍しいな。図書館で本あさってるんじゃなかったのか?」 「まあな。俺だってそうしたいさ。だけど俺には負けられない理由があるから」 「負けられない理由・・・?」 やや不機嫌そうなディクスにスレイドが不思議そうに繰り返す。 そのまま会話は止まってしまった。 「まあ、たまには大技ぶっぱなすのもいいだろうさ!ストレス解消に。良かったらオレが相手してやろっか?」 笑いながら言ったスレイドにディクスの目が真剣になる。 「ああ・・・頼むよスレイド」 「―――――― お、おう・・・」 静かな殺気を感じたスレイドは前言撤回したい気持ちを必死で抑え、ディクスから離れた位置に付いた。 「なあ、ディクス!決着条件はどうするー?」 「お前が根を上げるまでだ!」 訊いたスレイドにディクスは即座に答える。 「なるほど・・・オレじゃディクスにはかなわないってか・・・―――――― なら、手加減なしで行くぜ!」 声を上げたスレイドが大地を蹴った、同時にその姿が視界から消える。 「!」 突然消えたスレイドにディクスがひるむ。 「ここだぜ、ディクス!」 後ろから聞こえる勝ち誇った声。同時に背後の空間に熱がこもる。 「ヒートブラスト!」 ごぉっ 炎が沸きあがるような音と共に空間が膨張してはじけた。 「壁よ!」 すんでのところでディクスは冷たいシールドを張る。 パギンッ 硬い音が響く。それを合図にするかのように二人は対角に跳んだ。 ―――――――― 早いな・・・ 悔しいが、紛れもない事実だ。スレイドの術のほどは知らないが、瞬発力は高いらしい。 「そう簡単にはやられないぜ、ディクス!」 ディクスを挑発するようにスレイドが言い放つ。 ・・・スレイドの動きを鈍くするには体力を奪うしかない・・・でも、持久戦になると俺だって・・・ 「行くぜ!」 再びスレイドの先手だ。 先ほどと同じようにスレイドの姿がその場から消える。 ・・・来る! 「フレアボム!」 ディクスのすぐ目の前で声がした。そして空間が突然炎に包まれ、大爆発を引き起こした! どおおぉぉぉん!!! 衝撃にディクスは後ろにふっとんだ。あらかじめ予想していたため、なんとか体勢を立て直し術を発動した。 「水よ、炎よ!互いを持って我が意に従え!!」 ディクスが叫ぶ。するとディクスを中心に四方に光の柱が生まれ、内部の空間で水と炎の競合により熱い水蒸気が生まれた。 「あちっ!!」 その空間にいたスレイドは急に熱くなった空間に悲鳴を上げる。 ―――――――― ディクスのやつオレの動き抑えるつもりか・・・ ディクスの作戦にスレイドは舌打ちする。熱く、水蒸気で重くなった空間で激しく動き回れるのは時間の問題だ。早く決着をつけなければ体力が持たない。 ・・・なんて術を使うんだあいつは・・・こっちももたないが、あいつ自身も持たないはずだ・・・ 「仕方ねーな・・・、アイスシールド!」 スレイドは周囲に冷気を纏わせ、ディクスに直接切りかかった! ガキンッ いつの間に出現させていたのか術で生み出した氷の刃に、スレイドの生み出した炎の刃が轟音を立てて食い込んだ。相反する力に二人の周囲に濃い水蒸気が立ち込める。 「スレイド、俺もお前と同じくらいのスピードが出せたらと思うよ!」 「・・・・・・ああ、こっちだってお前みたいな優秀な術者だったらって思うさ! ・・・でもな、今回ばかりはオレの勝ちだぜディクス!炎よ!」 スレイドの掛け声に彼の生み出した炎の刃が一層の輝きを増し、ディクスの氷の刃を溶かしきろうとした。 じゅわっ そしてついにディクスの刃が完全に消えた。勢い余った炎の刃がディクスに襲い掛かる! 「水竜の舞!」 刃を失った手から新たな術が生み出される。それは水の竜となってスレイドの正面から思い切り突っ込んだ。 「!!!??」 激しい水流になす術もなくスレイドは水の流れと共に天高く舞い上がった。 どぉぉぉぉぉ!!!! そして体内にスレイドを残した水の竜は天を仰ぎ、ターンするとそのまま大地に向かいスピードを上げ、激突した。 ドドドドドドッッ 水の竜の体がどんどん大地に崩れ、そして辺りは水で埋まってしまった。そう、ディクスが作り上げたあの空間の中を水で一杯にするように。 バシャンッ! そしてスレイドもその水の立方体に激しく突っ込んだ。深くまで沈むと、足をばたつかせて慌てて水面から顔を出した。 「ぶはっ!げほっげほ・・・く・・・そぉー・・・!」 彼の手にすでに炎の刃はない。術の消費と、衝撃と体力の消耗でスレイドは浮かんでいるのがやっとだ。 「惜しかったな。いいところまで行ったのに」 みればディクスが水面ぎりぎりのところに立っている。 「・・・あーあー!負けたよ!まさかあんな攻撃してくるなんて反則だぜ全く」 スレイドがやけくそ気味に言う。 傍からみれば奇妙だっただろう。立方体の水のかたまりに一人浮かんでいる男と、その水面に立っている男。これが戦いの結末だとは誰も思わないだろう。・・・というより、何をやっているのかわからないだろう。 こんな負け方無いよなー・・・ついてないぜ・・・ 水にぷかぷか浮かぶ自分を情けなく思う。 ・・・自分は飛行術で高みの見物・・・か。オレもああなりたいぜ。 「スレイド!術解くから水面の下、地面までもぐってくれ!」 言われ、スレイドは水の中に戻り、地面に足をつけた。 「ブレイク!」 ディクスの言葉にその場にあった立方体の水が一瞬にしてなくなる。急になくなった浮遊感にスレイドは転びそうになった。そして懐かしくも感じる大地の感触にほっと息をついた。 「どうだった?」 勝って少しは機嫌がよくなったのか、ディクスが自身ありげに訊く。 「―――――― そりゃあ・・力の差を見せ付けられたって感じさ。あの熱い蒸気の空間を出現させながらも、オレの剣を受け止め、なおかつ水の竜を出現させた・・・一体いくつ大技を同時に出したら気が済むんだよ。オレ、それ以上術は発動できないと思ってつっこんだのにさ」 「まあな。術の同時発動は俺の十八番だからな。でも、まさかスレイドがあんなに瞬発力が高いとは思わなかったけど。普通の術者だったら間違いなく最初の一撃でやられてただろうな。最初は焦ったよ」 それは本当の話だ。少しスレイドを侮っていた分、あのときの焦りはディクスに反撃の判断を遅らせた。 「スピードの速さだけがオレの取り柄さ。あーあ、服がびしょびしょだよ。服乾かさないと風邪引くぜ」 「悪かったなつき合わせて」 「別に良いさ。こっちだって勉強になったし。これからは相手の力量をちゃんと測ってから次の行動に移すことにするよ。次は負けないからな!」 びしっと指を突きつけてリベンジを宣言する。 「ああ、そのときは別の竜を用意して対抗するよ」 「―――――― もう水の竜でたくさんだ・・・」 ディクスの言葉にスレイドはげんなりと答えたのだった。 「ん〜!おいし〜い!さすが朝から作りこんだだけはあるわよね。野菜のうまみが濃縮されたこのスープ、やわらかく煮込まれたこのお肉。幸せ〜」 目の前にコース料理にナチが満足げに言う。 「宮殿のシェフ並の腕ですよ、ディクス。こんな技術を持ってる人なんてそうはいません。さすがです」 同じようにテーブルについているスティングが感嘆を漏らす。 相変わらず難しそうな顔をしているディクスだが、二人のほめ言葉にだんだんと顔が緩む。それでもなんとかシリアスを保とうと緩む口元を何とかおさえ、料理を口に運んでいる。 「ところでスティング、アクオスはどう?術とか結構覚えたみたい?」 「そうですね。時間かかるかと思ったんですけど、さすがはセカンダリです。苦手な術でも集中的に教え込めば成果は出ますし。ナチのおかげで面倒も起こさないから助かってます」 「そうそう、わたしも驚いたの。親ばかって言うか、飼い主馬鹿って思われそうだけど、セフィーロも覚えがいいのよねー。昨日の爆発系の術だって最初は全然出来なかったのに、数時間後にはマスターしちゃったんだもん」 そこまで言うと、何故かディクスの手が止まった。 「じゃあ、庭がぼこぼこになってたのはお前のせいか、ナチ・・・」 昨日帰った時は気づかなかったが、今朝、庭を見て驚いたのだ。犯人はなんとなく分かってはいたが・・・。 「ごめん・・・でも、あれでも一生懸命なおしたのよ。スティングも手伝ってくれたし・・・ね?」 「あ、ええ。それにディクス、ナチはセフィーロのことを思ってやったことなんですから怒らないでください。竜は術の演習場には連れて行けないんですから」 話を振られたスティングがフォローを入れる。 「別に怒ってはないさ。いたずらにそんなことはしないのは分かってるから」 そういうと、黙々と食べ始めた。 ―――――― なんで機嫌悪いんだろう・・・?スティング、何か知ってる? 隣にいるスティングをナチがつつく。 ・・・さあ?僕にも分かりません。昨日帰ってきてから機嫌悪かったんでしょう?蔵書室に行っている間に何かがあったとしか思えないんですが・・・。 それからしばらくスティングとナチが小声でやり取りをした。そんな様子に気づいたディクスがようやく口を開く。 「―――――― 宣戦布告されたんだよ」 「宣戦布告?」 ナチが訊き帰すと、ディクスが険しい顔をしてうなずいた。 「お手並み拝見したんだってさ。エイブルのやつ、年上だからって馬鹿にしやがって・・・」 ディクスがぶつぶつと文句を言い始めた。 「ディクス、エイブルって誰ですか?」 「院生の一人だよ。フルネームは確かジャック・エイブルだったと思うが・・・治癒系の術が得意らしい。今すぐにでもマスターの称号をもらえるほどの術者らしいが研究がしたいっていまだにここに残ってるらしい」 面白くなさそうに言ったディクスにスティングが口を開く。 「・・・・・・多分、僕その人知ってますよ。僕だけじゃありません、この宮殿に仕えるものならほぼ全員が知ってるんじゃないでしょうか?」 「ほぼ全員?そんなに有名なのか、あいつ」 「ええ、ディクスが言った通り、彼は治癒系の術に関してはエンドレス屈指の術者です。僕も彼に勝る術者はいないと思ってました―――――― ディクスに会うまでは」 「・・・・・・・どうして俺に?」 「ディクスと旅をすれば誰だってそう思いますよ。ジャック・エイブル、彼は治癒系の術に関しては秀でています。でも、攻撃形の術に長けているとは聞いたことがありません。一つの分野だけに長けている人間が優秀な術者とは必ずしも言えるわけではありませんから」 そこまで言って息をついた。 「ただ・・・彼、ジャック・エイブルですが、どことなく不審な点があるんですよ」 「不審な点?」 今度はナチが聞き返す。それにスティングが神妙な顔でうなずく。 「学術院に関するサポートは全て兄が請け負っています。それで聞いた話なのですが、彼は禁術について探っている節があるらしいんです―――――――― 人類が完成させようとしてやまなかった禁術、リバースを」 リバース・・・?昨日エリオスさんが言ってた術だわ・・・死んだ人間を生き返らす術だと・・・ 「リバースだと?そんなもの人間に扱えるはずがない。あれはシルバーヒールだけに許された術じゃなかったのか?」 「ええ、確かにそうです。しかし、彼は取り付かれたようにその術の研究を進めているようで・・・どれくらい進んでいるのかはわかりません。でも、屈指の術者と歌われている彼にはそれが自分で完結される研究だと思い込んでやまないのでしょう」 「その禁術を研究しているのにエンドレスは何も言わないのか?」 「術の研究に禁止も何も設けていないんです。それに、あの術が完成させられるとは思っていません」 そう言えば、この前すごい本見つけたんですよ! 最初にエイブルに会った時、アッシュがそんな事を言っていたのを思い出した。そして、エイブルにその発言をたしなめられたのだ。 ・・・・・・その凄い本っていうのはもしかして・・・でも、まさか・・・ 「―――――― ディクスは・・・彼がリバースを完成させると思っているんですか?」 納得のいかない表情をしたディクスにスティングが訊く。はっとして顔を上げる。 「まさか。そんなわけないだろ」 考えごとを隠すように慌てて言う。 「人間には出来ない事・・・いえ、してはいけない事だってあるんです。それを分かっているはずなのに・・・なのに彼は研究し続けている。最高の術者であるという自負がそうさせているのでしょう。そして、もう一人の優秀な術者といわれるディクスが現れたことでプライドがその存在を許さなかった。結果、ディクスに宣戦布告をして・・・」 「術者が自信を持つことはとても重要なことだけど、だけど、それでおごるのはよくないことよね」 「ディクス、僕はあなたが負けるとは思いません。術者は自信を持っていても、自負した時点で負けなんです。だから、絶対に勝ってください」 「・・・言われなくても分かってるよ。俺は負ける気はさらさらない。売られた喧嘩は必ず買うことにしてるんだからな」 その勝負もいよいよ明日だ。 その意気は怒りではない。一人の術者として彼を負かすためにディクスは明日の食事の仕込みにかかった。 「絶対方向間違ってるよね」 「そうですね・・・」 方向性を誤っているディクスに二人は嘆いたのだった。 「レクサス、今日はお前についてられないんだ。悪いけど、おとなしくしててな」 ディクスがレクサスの頭をなでてやりながらいう。そんなディクスにレクサスは残念そうな声を上げたが、素直に従うように館の中に戻った。 「ディクス、頑張ってね!」 「頑張ってください、僕たちも行きますから」 「え、お前らついてくるのか?」 ディクスが驚いたように言う。すると二人は当然とでも言うようにうなずいた。 「当たり前でしょ!優秀と言われる二人の術者がプライドかけて対決するんだもん。見逃せないわ。ねえ、スティング」 「そういうことですよ、ディクス。それに二つの巨大な力がぶつかったらあの演習でも衝撃を緩和することが出来ないかもしれません。そのためにも僕とナチがお供します」 ついてくるなと言ってもついてくるだろう。ついてくるなと殴ったら殺されるかもしれない。 「――――― わかったよ。でも、その場がどうなるか分からないからな。最低の防御だけはしとけよ」 「うん、大丈夫よ!」 ナチが親指を立てて自信ありげに答える。 「・・・じゃあ行くか」 そうして三人は演習場へ向かった。 広い演習場にすでにエイブルは来ていた。アッシュやスレイドも一緒だ。 「ディクス、気をつけろよ。あいつは術を使って傷を一瞬で治す。長引けば不利になるぞ」 やってきたスレイドがディクスに耳打ちする。 「安心しろ。俺は負ける気はないし、戦闘を長引かせるつもりはないよ。決着はとっととつけるに限る」 「クロードさん、頑張ってください。ボクはエイブルさんの方につきますけど、健闘を祈ってます」 一緒にやってきたアッシュが言う。そしてディクスから視線をはずした。 「ところで・・・あの人は誰ですか?あのナチュラルさんの隣にいる女の人ですけど」 そういってアッシュが指をさした先にはスティングがいた。 「ああ、あいつか・・・おーい!」 ディクスが声をかけると二人がやってきた。 「ナチは知ってるよな。こっちは俺の知り合いのスティーブ。万年院生候補生だ」 ―――――― スティーブ・・・ 言われてスティングがむっとするがすぐに笑みに変えた。 「どうも初めまして、スティーブです」 「初めまして!ボク、アッシュって言います。男の方だったんですね、綺麗な人だと思って勘違いしちゃいました。今度院でご一緒できるといいですね」 「そうですね」 アッシュが笑みを浮かべながら言った事にもう傷つかない。慣れてしまったらしい。 しかし、スティングはアッシュを見て一人焦っていた。 ・・・もしかして・・・ 「オレはスレイド。とりあえずオレもエイブルサイドだがディクスを応援させてもらうよ、よろしくな」 そういってスティングと握手を交わす。 「単細胞で不出来な友人ですがよろしくお願いします」 勝手に偽名をつけられ、万年院生候補生と言われたスティングは返すように言う。 「じゃあ、後でな!」 そして二人はエイブルの元に戻った。 「クロードさんたちも準備は良いようですよ」 「そうですか、アッシュ君。ところであの髪の長い人ですけど・・・」 「ああ、彼はスティーブっていう人なんだそうです。ボク最初女の人かと思っちゃいました」 そういうと恥ずかしそうに頭をかく。 「スティーヴ・・・目の色は何色でした?」 「目の・・・色ですか・・・?クロードさんと同じ青だったと思いますけど」 「そうですか、青・・・」 聞くとエイブルは目を閉じて何事かつぶやいた。 一方、スティングはなにやら難しい顔をしていた。 「ナチ、僕もしかしたらアッシュさん知ってるかもしれません」 「えっ、なんで?」 すまなそうに言ったスティングにナチが驚く。 「以前蔵書室に行った時彼によく似た人を見たんですけど・・・」 「・・・でも大丈夫よ!アッシュ何も言ってなかったし。目の色違うから!」 ナチがフォローするとスティングはそうですよね・・・と小さい声で言った。 「でもこれはディクスには内緒ね。言ったら何を言われるか分からないから」 ナチが言うとスティングはうんうんとうなずいた。 ・・・目の色だけじゃなくて髪の色も変えたほうが良かったかも・・・ ナチがアッシュたちのほうに目を向けるが別にこちらのほうを気にしているわけでもないようだ。安心してスティングに視線を戻した時だ。 ―――――― !あ、スティング!目!目の色が戻ってる! 突然のことにナチが慌てる。 え?本当ですか?おかしいな・・・ ナチに術で変えた目の色が戻っていることを指摘され、スティングが慌ててかけなおす。 「これでいいですか?」 「・・・うん、大丈夫!―――――― でも、何で急に・・・?」 術を解いた記憶のない二人が首をかしげる。 「簡単だ、さっきあいつが術中和の術をかけたんだ」 エイブルに目を向ける。すると、スティングと目のあったエイブルは丁寧に頭を下げた。 「どうやら、僕の正体はあの人にはばれているようですね・・・直接会った事がなかったので大丈夫かと思ったんですが」 「たいしたことじゃないさ、そろそろ時間だ・・・」 そして、ディクスは一歩足を踏み出した。 |