D.Force The Second Chapter
Force-18
押し寄せる疑惑
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エイブルを送ることになったアッシュとスレイドは、城内を出て、程近いエイブルの家まで来ていた。 「ここですよね、エイブルさんの家」 「なんか暗い家だなー。もっと日の差す家にすりゃあ良かったのに」 スレイドが、影にたたずむようにして建っているエイブルの家を見ながら言う。アッシュはエイブルの手持ちのかばんを探り、中から鍵を取り出した。 カチッ 「じゃあ、エイブルさんお邪魔しますねー」 言いながらドアのノブを回した――――― が、確かにドアの鍵が開いている感覚はあるのだが、扉が開かない。 「どうした、アッシュ」 エイブルを背負っているスレイドが覗き込む。 何度ノブをまわして押しても引いても開く様子はない。 「どうしましょう・・・?」 「アッシュ。そういう時は横にスライドだろう?」 困っているアッシュにスレイドが得意満面な顔をして言う。 「そういえば!それもアリですよねー、じゃあ・・・」 スレイドの意見に納得したアッシュが意気揚々と扉をスライドさせた――――――― が、やはり開かなかった。 「違うじゃないですか・・・スレイドさん」 アッシュのジト目がスレイドを襲う。 「お前だって大賛成だっただろうが」 「・・・・・・でも、どうして。鍵は合ってるはずなのに・・・」 「なあ、アッシュ、試しにちょっとその扉を攻撃したらどうだ?」 「スレイドさん!そんなことしたら捕まりますよ!」 とんでもないことを言い出したスレイドにアッシュが悲鳴を上げる。しかしスレイドは指を振って見せた。 「甘いな〜、アッシュ君。鍵は開いているのに開かないドア。その原因といったら一つしかないだろ?」 「あ・・・!もしかしてシールドの術ですか!」 思い出したように言ったアッシュにスレイドがうなずく。それならば・・・と、アッシュは小さな攻撃用の術を発動させ、ためしにドアにぶつけてみた。 ヴンッ 鈍い音と共に、アッシュの放った炎の矢はドアにぶつかる寸前で消えてしまった。 「ほらなー」 「本当だ・・・じゃあ、この術解除すればいいですよね」 「アッシュ、できるのか?」 「攻撃の術はともかく、こういう補助系なら任せてください!」 自信ありげに胸を叩くと、ドアに手のひらを向けて意識を集中し始めた。 「ブレイク!」 しばらくそうして、アッシュは術を発動させた。 パギンッ 何か硬いものが砕けるような音がしただけで何の変化も見られない。 「これで開くはずですよ」 再びアッシュがノブに手をかけ、手前に引く。 キィ 「ね?」 「お〜!」 感心しながらエイブルの家に入る。 「暗いですね。明かりのスイッチ・・・っと」 壁のあたりを探り、明かりをつける。そして暗かった部屋は明かりに包まれる。 「うっわー・・・なんか、すげーな・・・」 スレイドが部屋の中を見渡して驚く。本の山だった。台所も本で埋まっている。生活感は見られない。 「エイブルさん、研究熱心ですね・・・」 さすがのアッシュも驚いている。本をかき分けるようにして寝室を目指す。 ――――――― しかし・・・エイブルのやつオカルト好きか・・・? スレイドが本の背表紙を見ながら不審に思う。 生き返り、呪い、合成獣――――――― 術とは遠そうな名目ばかりである。 「スレイドさん、こっちみたいですよ」 アッシュが奥の部屋から手招きをする。 「おうっ」 考える暇もなく、エイブルを背負ったスレイドは寝室へを足を運んだ。 どさっ スレイドがベッドにエイブルを横たわらせる。ようやく重みから解放されたスレイドは大きく伸びをしてコリをほぐす。 「重かったなー、久々の重労働だぜ」 「お疲れ様でした!じゃあ、スレイドさん、先に帰っててください。ボク、エイブルさんの手当てしますから」 いいながらアッシュはてきぱきと邪魔な本を片付けている。 「いいのか?」 「ええ。スレイドさんにはエイブルさん運んでもらったんですから、ボクはこれくらいのことしないと」 「んー・・・そういうならオレ先に戻るな!あまり遅くならないようにな」 「大丈夫です!」 元気に答えると、スレイドはうなずいて部屋から出て行った。 一人になったアッシュは改めて部屋を見回す。 ・・・・・・エイブルさんこんなにもあの術に執着してるんですね 手に取った本は、ほぼすべてが"死からの再生"に関係がありそうなものばかりだ。 「どうして・・・どうしてエイブルさんはここまでリバースにこだわっているんだろう・・・?」 疑問に思いながらたくさんの本を並べる。 一つの本を手にとってぱらぱらとめくる。 不老不死 その単語にたどり着いた時、そのページを凝視した。 古来より研究されているのが不老不死の術。しかし、それを成功させたものはいない。 そして記憶喪失の項目も探してみた。 しかし、どちらもアッシュの欲しい情報は得られなかった。 その本をたたみ、手に持てるだけの本を抱え、余裕のある棚に本を並べている時だった。 「あれ・・・?これって・・・」 不自然な一冊の本に気づく。両サイドには本がないのに、その薄い本はぴったりと棚にはまっているかのようにその場にあった。 ――――― まさかとは思うけど・・・ アッシュは恐る恐るその本に手をかけた。 ゴゥン 何かがスライドするような音。見ればすぐ横の壁がわずかに開いているではないか。 「・・・・・・」 その隙間からは青い光が漏れている。 ――――――― 見てはいけない。本能的にそう感じた。 しかし、アッシュは生まれた恐怖をなんとか圧しとどめ、その隙間へ近づいた。ちょっと力を加えれば扉は全開するだろう。だが、アッシュは扉がそれ以上開かないようにそっと触れ、顔を近づけて中をうかがい見た。 「はい、あ〜んして」 ナチがにこにこしながらディクスに箸の先を突きつける。その箸にはほくほくのかぼちゃの煮つけが乗っていた。 「誰があ〜んだ」 ベッドから半身を起こしたディクスが憮然という。 「普段して欲しがってるくせに。こういう時じゃないとしてあげられないよー」 「馬鹿言うな!誰もやってくれって言ってない!」 さも当然だと言うようなナチにディクスは力一杯否定する。 「言葉に出さずとも分かり合えるのが兄妹ってもんでしょ!さあさあ」 勧めるがディクスが首を振って食べようとしなかった。 「恥ずかしがらなくても誰も見てないから」 「そういう問題じゃない!」 顔を真っ赤にして叫ぶ。それがナチには面白くてたまらなかった。普段馬鹿にされている分ここで憂さを晴らすのだ。 ディクスは昨日アッシュにかけられた術によって体力を奪われ、まだ回復してはいなかった。歩くのもままならない。相当強力な術をかけられたらしい。 ・・・・・・・そう、この機を逃す手は無いのだ。 「まーまー!かぼちゃの煮つけ好きでしょ?わたし早起きして作ったんだから。ちゃんと食べてよね」 「・・・食べるから・・・ちゃんと食べるから箸くれ、箸」 ディクスが手を出すが、当然ナチがおとなしく渡すはずがない。相変わらずかぼちゃを乗っけた箸をディクスに向けている。 「食べて♪」 「・・・・・・・・・・・」 「モテないよ♪」 「どこでそうなるんだ・・・?」 痛いところを突かれ、ちょっと傷つく。 「も〜!腕が疲れるでしょうが!さっさと食べる!はいっ!」 言ってにじり寄った。ベッドの上のディクスはまさにまな板の鯉だ。 はぁ・・・ 「わかったよ、食べればいいんだろ?」 言うとナチは力強くうなずいた。 「はい、あ〜ん」 がくっとうなだれると、ディクスは仕方なく口を開いた。そしてようやくかぼちゃの煮つけを口に入れる。 かぼちゃ特有の甘みと香りが口の中に広がる。 ――――――― 意外に美味い ディクスの正直な感想だった。 「おいしい?」 口をもぐもぐさせながらディクスは無言でうなずく。それを見てナチは満足げな笑みを浮かべた。 「んじゃスティングに報告してこようっと」 何を報告するのか、ナチは嬉しそうに言った。嫌な予感がしてディクスが声を上げる。 「えっ?」 「わたしがディクスにあ〜んってしてあげないと食べてくれなかったことをスティングに自慢するの」 「!!!!」 予感的中だ。 「うふふ、スティングの驚く顔が目に浮かぶわ」 箸を持ったまま上の空だ。 「ちょっと待てナチ!俺はそんなこと頼んだ覚えはない!!」 とんでもないことを言い出したナチにディクスは慌てた。 「でもほんとじゃない。あ〜んしてあげないと食べてくれなかったじゃないの」 箸をカチカチ言わせながら勝ち誇ったように言う。 「そりゃ、お前が箸くれなかったからだろうが!」 「でも事実は事実だもんね!ディクスったらいい歳して妹に甘えるなんて〜、意外に可愛いところもあるんだなって皆に認識させてあげないとね〜」 ディクスは絶句した。 今まで築き上げてきた容姿端麗術力優秀スポーツ万能完璧無敵な主人公のイメージが今まさに崩れようとしていた。 呆然としているディクスを横目で見ながらナチはおかしくてたまらなかった。 や、やばい・・・そろそろ限界かもっ・・・!! 笑いをこらえている腹の筋力は限界に達しようとしていた。 「じゃあね!あ、はいこれ、適当に食べてていいから」 ナチは煮付けの入った皿と、箸をディクスに押し付けると部屋を出て行ってしまった。 「・・・・!な、ナチ!!」 渡された皿を机の上に置き、慌てて追おうとしたが、力入らず、もろくも床に崩れてしまった。 「ナチュラル!!」 大声で叫ぶが、ナチの過ぎ去る足音を聞き届けると、ディクスはがっくりと床につっぷしたのだった。 講義が終わったあとも、大好きな昼食を食べ終えた後もアッシュは一人考え込むようにして険しい表情を崩さなかった。いつも行動を共にするスレイドはそんなアッシュの異変を感じ取っていた。 アッシュに何かあったのかと訊いても、彼は何もないよと返すだけ。だが、何か焦っているように見えた。 「あーっ!今日も終わりだぜ〜!なあ、アッシュ。久々に町にでも出てうまいもん食いにいかないか?」 しかし、予想はしていたが断られてしまった。 「すみません。ボク家に帰ります」 その理由も言わずにアッシュは帰ってしまった。ここ最近ずっとだ。 用事を済ませるとアッシュは家に帰ってしまうのだ。 ・・・・・・確か、エイブルの介抱をした時からおかしいんだよな、アイツ・・・ アッシュの後姿を見ながら考え込む。 回復したエイブルは相変わらず蔵書室にこもっていた。いつもならその蔵書室に足を運んでエイブルから色々話を聞くはずなのだが・・・ここ数日は彼らが二人で話しているところを見た事がない。 アッシュが避けているようにも見える。 うーん・・・エイブルのやつに直接聞いてみるか? アッシュに訊いても埒が明かないと判断したスレイドは普段踏み入れない蔵書室に向かって歩き出した。 一方のアッシュは家につき、そのままベッドに倒れこんだ。 「はあ・・・ボクはどうしたらいいんだろう・・・?」 エイブルが何故禁術にこだわるのか分からなかった。どうしてそこまで執着しなければならなかったのか。 しかし、その疑問は突然解けることになる。エイブルの家で彼を介抱した時だ。 「・・・・・・」 思い出したくない光景が嫌でも頭の中に蘇る。 隠し扉から漏れた青い光。その隙間からのぞいた先には――――――― そこまで来てアッシュは振り切るように頭を振る。一人でいると、どうしてもあの光景が頭の中に広がってしまう。 そのせいで最近眠りが浅い。 外に目をやる。まだ十分明るかった。家にいたら気が滅入ってしまうような気がして、アッシュはベッドから身を起こし、再び家の外に出た。 外に出て大きく深呼吸をする。それだけだったが不快感はだいぶ取り払われたように感じた。 「やっぱり・・・ちゃんと話そう。クロードさんならきっと何かわかるはず・・・」 自信をつけるようにつぶやいた。 ディクスがいると思われる館に向かって歩き始めた。大きな庭園を横切り、噴水に近づいた時だった。 「あっ・・・」 思わず息を呑む。目の前に飛び込んできた純白の大きな竜。大きな翼を広げていたそれは、アッシュと目が合うと翼を閉じた。 ――――――― 白竜・・・?もしかして・・・シルバーヒール!? 目の前の竜にアッシュが動揺する。シルバーヒール・・・それは唯一禁術を扱うことの出来る竜族。数が極端に少なく、人前には滅多に姿を現さない。そのシルバーヒールが何故・・・? どうしていいかわからず、アッシュが立ち尽くしていると、シルバーヒール――――――― エリオスのセカンダリのエデンが近づいてきた。 そして鼻先で動揺しているアッシュの胸の辺りを軽くつく。 ふわっ 「えっ・・・これは癒しの術・・・?」 エデンがアッシュに触れた瞬間、アッシュの中にあった不安が取り除かれた。今度は驚いた表情をエデンに向ける。 「どうして・・・どうしてシルバーヒールがここに・・・?」 訊くが、エデンは首を傾げただけだった。 「君は、禁術が使えるんですよね。リバースを・・・どうして死んだものを蘇らせることができるんですか?どうして、そんな術が使えるんですか?」 思わず訊いてしまった。答えてくれないと分かっているのに。 するとエデンは再びアッシュに軽く触れた。そして語りかけた。 『リバースはあなた方人間が思っているような術ではありません』 「えっ、ええっ!?」 頭に流れ込んできた不思議な声に再び動揺する。エデンが語りかけてきたとはすぐには理解できなかったからだ。 それでもエデンは続ける。 『確かにリバースは我々の種族にしか使うことの出来ない術・・・でも、人間はそれを誤った捉え方をしています。あなたも同じです』 アッシュには何がなんだかわからなかった。何故この竜は話しかけることが出来るのか・・・もう、頭の中がごちゃごちゃしてパンクしそうだ。 「あの・・・」 アッシュが再び質問をしようとしたときだ。 エデンは何かに反応するように顔を上げた。 辺りを見回して大きな翼を広げると、夕焼けの空に向かって飛んでいってしまった。 「・・・・・・・」 残されたアッシュはわけが分からず立ち尽くす。 そしてエデンが言った事を頭の中で整理しようと自分を落ち着かせた。 ――――――― リバースは・・・人を蘇らせる術じゃないんだろうか?誤った捉え方って・・・ 「アッシュ!」 声をかけられ我にかえる。見れば先にナチが見えた。 エデンはナチがこちらにやってきたのを察して飛んでいってしまったのだろう。 「どうしたの?難しそうな顔して。何かあった?」 アッシュの様子が変だと思ったのだろう。ナチが心配そうに声をかける。 「えっと・・・ちょっと考え事してたんです。あの・・・クロードさんどこにいますか?」 「クロード・・・ああ、ディクスのことね。ディクスならスティン・・・じゃなくて・・・えーと、演習場で色々やってるわ。この前の戦いで思い切り焦がしちゃったから」 「そうですか・・・」 残念そうな声を出す。 「ディクスに用事?それなら一緒に行く?」 「いいんですか?」 「もちろんよ!わたしもちょっと用事があるから」 そういって二人は歩き始めた。 「ナチュラルさんの用事ってなんですか?」 歩きながらナチに訊く。 「えっとね、これを渡しに行くのよ」 そして石を取り出した。 「これね、フォースなのよ。竜神の砕け散った力の粋」 「フォース!?」 突然出てきたとんでもないものにアッシュが驚く。 「何でフォース持ってるんですか?しかも、三つも・・・ボク初めて見ましたよ!」 「うん、ディクスがフォースについて調べたいって言ってるから集めてるんだけどね。だからこの学術院に入って、普段お目にかかれない貴重な資料を探し回ってるってわけ。なかなか得たい情報はないんだけどね」 「あの、フォースって力を感じられないんですよね?あれって本当なんですか?」 「普通の術者はね。わたしも感じることが出来ないの。・・・試してみる?」 ナチに言われてこくこくうなずく。 どきどきしながらも、ナチからフォースを手渡された瞬間だった。 ドクンッ・・・ 「!!」 手に持ったフォースが強く脈打ったように感じた。力は込めていない、なのにただ持っているだけで力がみなぎってくるようだ。何か大きな力が自分の意識の中に入りこんでくるような重圧。 そして、懐かしさ――――――― それがなんなのかアッシュには分からなかった。フォースとは何も力を感じ取れないはずではなかったのか。 「どう?何も感じないでしょ?」 頭の中がぼうっとしているなか、ナチが話しかけた。 「えっ・・・、ああ・・・でも、なんか不思議な感じですね」 嘘をつき、ナチにフォースを返す。 フォースを返した今でも、懐かしさだけは消えなかった。何かが自分を求めている・・・そんな感じさえした。 「それ、全部集めるんですか?」 「そう。出来るかどうかわからないけどね。エルダスの竜神の神殿に行ったんだけど、そこの神官が言うにはね、フォースはあるべきところに集まるんだって。だからいずれは一箇所に集まるんだろうけど。だからこのフォースをいつかは手放さないといけないのよね。その間にディクスが知りたい事がわかるといいんだけど」 そしてフォースをしまった。 アッシュは奇妙な感覚に頭を押さえた。 「わかるといいですね、フォースのこと」 「そのためにもわたしも頑張らないとねー!」 そういって笑った。 やがて演習場につく。そこにはなにやら忙しそうなディクスとスティングがいた。 「ほらそこ!スティングまだかけてないぞ」 ディクスが指を差しながら言う。 「まだこっちが終わってません!」 スティングが言い返す。恐らく二人で言い合いながら作業を進めていたのだろう。 「ディクスー!」 ナチがディクスを呼ぶ。すると、ディクスは疲れた表情をナチに向けた。 「おー、増援がきたな。しかもアッシュも一緒か。治癒系の術が得意なら大歓迎・・・」 「そんなわけないでしょ!これ持ってきたの!」 ナチがフォースを渡す。 「なんだ・・・でも、もう終わらせようと思ったんだ。な、スティン・・・じゃない、スティーブ」 アッシュがいた事を思い出し、慌てて言いなおす。遠くから呼ばれたスティングは、アッシュがそばにいることを確認するとしばし背を向け、それから小走りにやってきた。 「ディクスは人使いが荒いから僕も疲れてしまって。そろそろ終わろうかと思ったんですよ」 スティングがため息をつきながら言う。 その瞳は青い瞳に変わっていた。 「じゃあ、クロードさんこれから時間空きますか?」 アッシュが訊く。するとディクスがうなずいた。 「あの、ちょっとお話したいことがあるんですけど・・・」 おずおずと訊いてみる。 「ああ、いいよ!・・・じゃあ、スティーブ、今日は解散な!」 「ええ、わかりました。じゃあディクス、明日また朝から作業ですよ。忘れないでくださいね」 「お前こそ寝坊するなよ。・・・で、アッシュ話って?」 「えっと、寒いから別の場所で・・・」 日はだいぶ傾いていた。このまま立ち話もこの季節にはつらいだろう。 「じゃあ、ディクスはアッシュとね。わたしは戻るわ。スティーブ、アクオスに会ってく?」 「もちろんです。ディクス、また明日」 「じゃーねー!」 そしてナチとスティングは帰ってしまった。 残った二人は宮殿内にある食堂に足を運んだ。その隅のほうに席をとる。 「で、話ってなんだ?」 席についてディクスが早速とばかりに訊く。 「はい・・・エイブルさんのことなんですけど」 向かい側に座ったアッシュは少し表情を強張らせ、話し始めた。 |