D.Force The Second Chapter
Force-21

神殿に縛られし魂


「ここがスティング様たちがいらした神殿ですね」
セルディアが目の前の大きな山を見上げる。
数ヶ月前、スティングたち三人が足を踏み入れたあの鉱山だ。三人が足を踏み入れてから、再びその場に立ち入るものはいなくなった。乾いた土が宙に舞い、視界をさえぎる。
「ライアが言ってました。エンドレスで地震が起きた・・・それはこの神殿が開かれた証だと。私もこの扉が開かれる瞬間、何か懐かしく感じたんです。そして、それは間違ってはいなかった・・・」
「この神殿は我々の祖先が作り上げた神殿だ。その扉が悠久の時を超えて開かれた瞬間、中にこもっていた"気"が解放され、子竜に何かを感じさせたのだろう。私も同じように何かが解放されるのを感じたよ。ただ、その気は程なく消えてしまったが」
この場にいるのはエクセルとセルディアの二人のみ。目の前にある封印の石碑を見つめたままだ。
「エクセル様、この石碑どうしましょう?エンドレスの刻印がなければこの術は解けません」
洞窟への侵入を拒むように石碑が立っていた。もし、この石を無視して先に進めば、術によってルシアナ砂漠へ放り込まれてしまうだろう。
それくらい強力な術がかけられている。
「転送の石・・・か。こんな貴重なものをここに使うとはさすがはエンドレスだ」
そう言うと、エクセルはかがんでその石碑に手をかざした。
何か一言つぶやいた。それだけだった。石碑に埋め込まれた赤い石が青色に変わる。
「さあ、行こう。この神殿が他のものに立ち入られる前に」
そういうと二人は暗い洞窟の中に足を踏み入れた。


「エクセル様、どうしてスティング様は神殿の場所を突き止めることが出来たのでしょうか?我々の祖先は人間にその神殿の場所が分からないように強力な術で保護されているのではなかったのですか?」
エクセルの少し後ろを歩きながらセルディアが問う。
「それはかつての竜神とエンドレスの創設者が血の契約を交わしたから・・・としか言いようがない。どんなに時が経とうとも、竜の血は薄れることはないという証明だな」
やがて落盤のせいで行き止まりになっている所までやってきた。
「私がやります」
セルディアが一歩前に出る。
「リムーヴ」
精神を統一してから術を解き放つ。黒い球体が出現し、落盤を飲み込むとそのまま消えてしまった。黒い球体が出現した場所は綺麗にえぐられている。
「消去の術か」
「はい。フォースがあればこれくらいは・・・」
そう言い、手に持っていたフォースを大事にしまう。さえぎるもののなくなった道を彼らは再び歩き始めた。
「セルディア、この神殿の効力を知っているか?」
「効力・・・ですか」
訊かれてセルディアは困惑した。
「この神殿の効力は不可能を可能にするものだ。こんな風に」
エクセルはセルディアの手を握る。そして―――――――
「えっ!?ここは・・・」
不意に感じた浮遊感。気づけばさっきとは違う場所に来ていた。目の前には大きな扉が口を開けている。
「エクセル様、不可能を可能にするってもしかして」
エクセルの術に驚いたセルディアは信じられないというような顔をしている。
彼が使ったのはテレポートと呼ばれる術だ。実現される事の無い仮想の術。
「術は思いを力にすることだ。しかし、普通では実現には限界がある。でも、この神殿は全ての術を実現できるような効力を持っているんだ。ただし、その術はこの神殿の中でしか通じない。その大きな効力が神殿内部だけなく、神殿の周囲ある程度にまで浸透しているというわけだ」
「それでテレポートが使えたと言う訳ですね」
頭では理解しつつも、心底では納得いかないまま扉の中に入る。
暗いと思われた部屋の内部は足を踏み入れた瞬間真っ白い光に包まれ、全てを照らした。
―――― 我々エンドレスの民はすべての財宝をここに埋める
      すべてを見透かす白き聖域は信ずるもののみを導く
        柱のすべて我らの歴史をしるすそのすべてを明かすべし
           さすれば次なる道開かれん――――
「エンドレスの言い伝えですね。彼らはこの神殿の価値を財宝として扱い、封じ込めた。この神殿が悪用されないようにと」
「この神殿を作ったのはかつての竜神。そしてエンドレスの民に譲ったが・・・彼らには荷が重過ぎる贈り物だったようだ。この神殿が世界に流通しては危険だと感じたのだろう。彼らは竜神にこの神殿の封印を頼んだのだ」
荷が重過ぎる贈り物――――― この神殿は人間には行過ぎた存在だった。
やがてこの神殿に携わっていた人間はこの神殿に恐怖し、普通には存在し得ない術がこの神殿によって蔓延しないように封印を決定せざるを得なかったのだ。
彼らはこれからのエンドレスが過ちを犯さぬようにと、数行の"言い伝え"のみを残し、ほかの資料は全て灰にした。
鉱山の入り口にあるループの石もこの時に作られたもの。術を石に封じ込めることで神殿外でもその効果を持続させたのだ。
「結果、この神殿には誰にも感じられることもなく時を経た。でも、スティング様がここを訪れたことで再びその封印が解かれたわけですね」
「封印も自然とスティング様を受け入れたのだろう。もしかしたらフォースを持つ彼らにも何か共通するものを感じたのかもしれない。封印は解かれ、彼ら三人はついにここに足を踏み入れた」
その神殿はディクスたちがその神殿を後にしたそのままだった。
全ての柱が地面に埋まってしまった神殿の奥に真っ暗な闇を宿した空間があった。ディクスたちが結局入らなかった第二の扉だ。
「エクセル様、これ・・・」
セルディアが差し出したのは小さな袋だった。エクセルはそれを受け取り中を見る。
中に入っていたのは石だった。全ての柱の課題を成した時に現れた小さな石。あの時、ディクスはその石の全てを拾い上げ、袋に閉まった。
しかし、壁に叩きつけられた時、地面に落としたまま忘れていたらしい。
「この石の一つ一つは大きな力が込められている。人間達が作り上げた術の粋だ。ループの石と同じように。おそらくエンドレスに先人達はこの神殿の課題をこなしたものに託すという形で残したんだろう」
「そんなに巨大な力が外に出なくて良かったです。スティング様やクロードさんなら安心できますが・・・でも、万が一ということは考えられますから」
「そうだな。この力を人間に託すわけには行かないな。セルディア、この石はお前が持っていなさい。お前ならきっと役に立たせることが出来るだろう」
エクセルに信じてもらえたことを嬉しく思いつつも、セルディアは真剣な顔でそれを受け取った。
「エクセル様、あの向こうには一体何があるのでしょう?とても気になるんですけど・・・でも、入ってはいけないような気がして・・・」
セルディアが心配そうに指をさす。真っ白い空間にぽっかりと口を開けた入り口。何の入り口かは分からない。けれどセルディアはその中から何かを感じ取り寒気を感じた。
――――――― ライアの話では、ここでクロードさんが突然豹変してしまったと。何かに取り付かれたように変わられたんだそうです。それでスティング様たちはあの奥に行かず、地上に戻ることになったらしいのですが」
「ああ、確かにあの場所には何かいたらしい。怨念があの部屋からこの場所に漏れ、クロードさんにとり付いたのだろう。しかし、それほど力を持ったものではないのか、今はその気はほとんど感じられない。安心なさい、セルディア。誰も襲っては来ないから」
「・・・はい」
安心させるように言ったエクセルにセルディアは小さく返事をした。
「怖いなら後に続きなさい。私が先に行こう」
そして彼らは暗い部屋へと足を踏み入れた。
先ほどと同じように、足を踏み入れた瞬間、部屋が明るく照らされる。暗闇に包まれていた歴史がその姿を彼らの前にあらわした。
「!!!」
現れた光景にセルディアが息を飲む。
悠久の時を経てようやく目に触れられたものは残酷なものだった。
「エク・・・セル様・・・これは・・・」
セルディアの肩が震える。
保存液につけられた竜の屍骸。この神殿に入れるためか巨大であったろう竜はいくつかに分断されて保管されていた。それがかつて持っていた臓器もひとつひとつ液につけられ並べられていた。
「うっ・・・」
思わず口をふさぐ。数千年前の竜の残骸が今ここにある。
時を経ても色鮮やかに、そして、生々しくそこに在る。
「エリュトロンプロクス・・・蒼竜の一種だ・・・」
険しい表情を留めたまま、エクセルが言う。エリュトロンプロクスとは複数の目を持つ竜の一種。現在ディオール大陸に生息する竜の祖先だ。
「どうして・・・こんなむごいことを・・・」
「竜の思考を読み取り、術の研究材料にしようとしたのだろう。――――――― それが成功したのか、失敗したのかは分からないが」
――――――― 彼が取り付かれたように豹変したのも、そしてこの神殿の封印が彼らによって解かれた時、我々が懐かしく感じたのもこの蒼竜のせいか・・・
無残な姿の同士に祈りをささげた時だった。
『我が前に立ちふさがりし者よ。何用か。何故子竜の気を持つ者がここにいる』
頭に響く声。その声に二人は辺りを見渡した。
だが、話しかけるものは何もない。エクセルは視線を宙に漂わせつつ、話しかけた。
「エリュトロンプロクス・・・ですね?」
『いかにも。我は在りし日のエリュトロンプロクス。今はただの肉塊でしかない存在』
「何故ここに留まっているのです?あなたはすでにこの世のものではないはず」
『我はこの神殿に立ち入る人間どもを排除する責任がある。今は肉体が無くとも、我が意志によって現世にとどまることが出来るのだ』
「では、あなたがクロードさんを・・・?」
セルディアがかすれた声を出す。
『我がただ一人この神殿に取り残されて以来始めて訪れた人間か・・・。この神殿の用途を知られてはならぬ。ここは人間には荷の重すぎる神聖な場所。一人たりともこの部屋に通すわけにはいかなかった』
「つまり、この神殿は本来の力がまだ残っていると・・・?」
『この神殿はあってはならない存在・・・子竜よ。お前達にも分かるだろう?この神殿が生むであろう争い、憎しみ・・・そして死』
もし、この神殿の機能が人間に知られればその力を巡って争いが起こるだろう。やがてそれは戦争となり憎しみを生み、死をもたらす。
「あなたはそれを恐れ、その姿になろうともここを守っていたのですね・・・」
『実に長い時間であった。我はここを守るために永遠の時を過ごさねばならぬのかと・・・。我は人間を憎んでいないわけではない。だが、この神殿によって生まれる"負"を人間達に負わせるわけにはいかなかった。』
同時に流れ込んでくる感情。気の遠くなるような時間をたった一人で過ごしてきた。
昇華することもかなわなかったものの嘆き、悲しみ・・・。
『この神殿のある鉱山が発掘場所となったときはその周囲に術を張り、気取られぬように施した・・・しかし、それが十数年の間だったとはいえ、我が力はほとんど空になってしまった。娘よ。お前の言っていた人間達が来た時も憑依することでこの場から退けることしか出来なかったのだ。
――――――― もう、我に力は残ってはおらぬ。本当に・・・ただの自縛霊になってしまった』
「・・・・・・・・・」
エンドレスがこの鉱山の発掘を進めた十数年。彼は術を施すことで神殿の存在を気取られぬようにした。しかし、その十数年の術の発動が彼の力のほぼ全てを奪う結果となったのだ。
さらに月日が流れ、神殿内部ではなく、その周囲でも特異な術を発動できるようになったのもその神殿を押さえる彼の力が弱ればこそ。
『しかし、それももう終わりだ』
「終わり・・・・?どういうことなのですか?」
エリュトロンプロクスの言葉にエクセルが訊き返す。
『幸いにもこの場に二人の子竜がいる。二人の力ならば、この神殿も、我も吹き飛ばすことが出来よう。守るものが無くなった我はこれでようやく使命を終えることが出来る・・・』
その言葉に二人が息を呑む。
「そん・・・な!エクセル様!どうにかならないのですか!?彼の魂を何かに定着させれば・・・!エクセル様ならできるでしょう?」
セルディアが懇願する。
『娘よ。我にも自由をくれぬか。もう、何にも縛られたくは無いのだ』
「セルディア。お前は先に行ってなさい」
「エクセル様!」
「セルディア!」
エクセルにたしなめられ、セルディアは目を伏せた。
『娘よ。時代は流れ行くものだ。万物、永遠の時を過ごすことは無い。我もまた然り。それをどうかわかって欲しい』
しばらくの沈黙の後、セルディアは意を決したように返事をした。
「はい・・・。それではエクセル様、私は先に地上に戻ります。エリュトロンプロクスよ、どうか永久の自由を・・・」
そういうとセルディアは神殿の力を借り、テレポートで消えてしまった。
それを確認するようにひと時置いてから竜は再び話し始めた。
『エクセル・・・だったな。お主には話しておこう。これからの事を―――――――
「これからの事・・・?」
思わせぶりな竜の言葉にエクセルが聞き返す。
『ディオール大陸の行く末だ』


シュンッ
テレポートで神殿を離れたセルディアは先ほどの石碑の前にいた。
日の光がまぶしく感じられ、目を硬く瞑る。そして――――――― その目から大粒の涙が零れ落ちた。
―――――― 私、何も出来なかった・・・!
どうしてだか激しい自己嫌悪に陥り、セルディアはその場に崩れた。
エクセル様にも払われてしまった・・・どうして私ではいけないのだろう?私では不足なのですか・・・?
己の感情を強く主張した自分にエクセルは席をはずせと指示した。それはセルディアにとって自己嫌悪に陥らせるには足る言葉だ。さらに加えて、自分はあのエリュトロンプロクスのことを何もわかっていない。
「でも・・・私は・・・」
――――― 私は子竜。誇り高き竜神に仕える子竜の末裔・・・何にも変え難い誇りだわ
「もっと自覚しなくては」
セルディアは自分に言い聞かせて大きく深呼吸をした。


『その"時"は近い。おぬし達子竜が一番の願い――――――― あの方の目覚めの時は時間の問題だ』
「あの方・・・とは・・・まさか・・・!!」
竜の言葉にエクセルが声を上げる。
『すべてを握る"鍵"がある。それを見つけ出し、正しき方向へ導けば全てはおぬし達の願いは成就されるだろう』
「"鍵"とはなんですか?正しき方向とは・・・!?」
エクセルが珍しく興奮した様子で迫る。
―――――― それを探し出すのがおぬし達子竜の贖罪であろう。己の主人を術で封じ込めたまたとない罪・・・のな。人間と同じ立場に立ち、無力という枷に囚われ、ただ祈ることしかかなわなぬおぬし達への唯一の光だ』
竜に言われ黙る。
暴走した竜神を止めようとして禁術を発動させたのは紛れもなく子竜だ。そしてそれは主人を裏切るも同然の罪。
『焦るな。時は必ずやって来る。一度動き出した歯車は誰にも止められぬのだから』
「・・・・」
――――――― さて、エクセルよ。先ほどの話だが』
話を切り替えた竜にエクセルが我にかえる。そして神妙な表情をした。
そう、この神殿を破壊し、未来への歴史を絶つ大役だ。
「良いのですか?」
『かまわぬ。――――――― 我にもようやく自由が訪れるか・・・この時をどれだけ心待ちにしていたことか・・・』
「プロクス殿。この神殿は私にでも破壊できるのですか?破壊したとして周囲への影響は・・・」
『案ずるな。この神殿自体が巨大な陣を作っている。前の部屋にあった柱がそうだ。全てを粉々にすれば神殿の機能は全て停止する』
「ならばどうしてご自分で破壊なさらなかったのです?」
『我は物理的な力を行使することは出来ぬ。それに神殿を守るべきものが神殿を破壊しては意味が無いだろう。この神殿を二度と解かれることの無い封印を施すには別の力が必要なのだ』
「・・・最後に・・・もうひとつお聞きしても宜しいですか?私たちがこの神殿に足を踏み入れた時何故拒まなかったのです?」
『力あるものだからだ。ただ・・・それだけだ・・・』
神殿を守るだけではない、竜は神殿を破壊できる力を持ったものを探していたのだ。
そう、果てしない、時の中で。
「わかり・・・ました。私が全力を持ってこの神殿を破壊しましょう」
エクセルが意を決したそのとき、竜が満足そうにうなずいたような気がした。
『ああ・・・。この神殿を解かれぬよう封印してくれ。そして我が魂をあるべき場所へ―――――――


「地震凄かったねー!エンドレスって地震ないからびっくりしちゃった」
ナチが興奮したように言う。
地震が起きたのは昼すぎだ。地震とは言うが、たてゆれに一度だけ大きな衝撃が走っただけだ。
「そうですね。この土地は地震とは縁遠いですから。でも、あれは地震というより何かの衝撃の余波という感じでしたけど・・・それでも被害もなかったようなので良かったです」
「あの神殿のあった辺りでしょ?ほら見て。あんなに大きかった鉱山が崩れちゃってる」
ナチが手にしている夕刊を差しながら言う。その新聞には地震の事が取り上げられている。
「ええ、この写真だとあの神殿もきっとつぶれてしまってるでしょうね。・・・まあ、僕たちには無用な場所ですけど」
「そうだねー。でも、お宝が・・・」
ナチが苦笑する。
「おーい!ナチ、スティング!セフィーロとアクオスが鳴いてるぞ!」
遠くからディクスの呼ぶ声が聞こえる。
「行きましょうか」
「そうだね!」
ナチは新聞をたたんでテーブルの上に置いた。
「地震が起きてから落ち着かないみたいなんだ。何か悲しいことがあったような鳴き方してさ」
ディクスが三頭の竜を見ながら言う。
「どうしたの、セフィーロ。何かあったの?」
ナチがなでながら問いかけるが、セフィーロは何も答えなかった。ただ悲しげな目をナチに向けるだけだ。
「アクオスもです。一体どうしたんでしょう・・・?」
アクオスも同じだ。
「・・・しょうがない。今日はもう中に入れよう。一晩休めばいつものとおりに甘えてくるさ」
そしてディクスが入るように促す。一番最後に扉の前に立ったレクサスが何かを思い出したように空を見上げ、そして空気を振るわせるほどの咆哮を発した後、他の竜と同じように身を低くして中に入った。


「・・・・・・どうしてかなぁ・・・?」
アッシュが首をかしげた。デルタで地震があったあの瞬間。どうしてだかどうしようもなく悲しくなって思わず泣いてしまったのだ。驚いたのがそばにいたスレイドとフィルジアだ。
あの時は目にゴミが入っただけだと言い訳したが、何故突然悲しみに襲われたのか分からなかった。
ただ、数ヶ月前、何かの"気"を感じたが全くそれと同じものだと確信が持てた。その時は何も悲しくはなかったのに。
「うーん・・・ボクって精神感応が高いのかな」
誰かの強い悲しみが自分に流れ込んできたのではないかと推理してみるが、やはり納得がいかなかった。
「花粉症かもしれない・・・」
そうと決まれば次にやることは決まっている。アッシュは棚から分厚い本と大きな箱を取り出すと、花粉症に効く薬の調合を始めた。


地震が起きたその瞬間、子竜とセカンダリが感じたエリュトロンプロクスの本当の死。
神殿に縛られた魂が解き放たれた瞬間――――― 彼ら竜は何を思い、何を悲しんだのだろうか。
死を選ぶことでしか得られなかった自由を・・・そうすることしか出来なかった彼を弔うように、夕焼けはいつもより増して赤く、そして美しくディオール大陸全土を染めたのだった。



第20話 第22話
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