D.Force The Second Chapter
Force-22
最後の子竜
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あれからいつも通りの生活を送っていた。 昼間はスレイドやフィルジアと講義を受け、夜はエイブルから貰った本を読み、勉強をした。 ちょっと前までの疑問も不安も今は無い。エイブルと同じように、彼もまた、自分のすべきことを前以上に強く感じているゆえだった。 「アッシュは真面目じゃの〜。スレイド、おぬしも少しは見習ったらどうじゃ?このままでは一人あぶれるぞ」 「言われんでもわかってる!オレだってただ学術院に入ったわけじゃないんだぜ」 フィルジアに釘を刺され、スレイドが文句を言う。 「スレイドさん教師養成の本読んでますよね。術の教官になるんですか?」 目の前のスパゲティを食べながらアッシュが訊く。 「ああ、似合わないって言われても仕方ないけどな。オレに出来るのはそれくらいだし・・・マスターの称号を得たら国務に携われるって話だが、オレ、難い所苦手なんだ」 そう言ってビールを一口飲んだ。 「ふむ。確かにスレイドなんぞが国務につくとなるとデルタも大混乱じゃな」 笑ったフィルジアにスレイドがにらむ。 「ったく、老い先短いじいさんがよ・・・」 「なんじゃ?何か言ったか若造が」 「あー、言ったよ!老い先短いってな。耳も遠くなったみてぇだな」 「思いやりが無いやつじゃ。そんなことではマスターの称号は愚か、嫁さんまでもらえんの。一生独身じゃ!」 酒が入り、けんか腰のスレイドにフィルジアが言い切った。 「な・ん・だ・とぉう〜!」 「ほっほっ!わしの言うことに間違いなどないわ」 「ま、まあ、いいじゃないですか。二人とも落ち着いてください」 見かねたアッシュが仲介に入ろうとするが、二人は言い合いをやめようとはしなかった。 アッシュの存在は完全に忘れられている。 「・・・・・・」 「くあぁぁ〜!この老いぼれジジイ!称号貰う前に逝くんじゃないのか!?」 「残念ながらわしはこのとおり元気じゃ!おぬしのような能無しにはまだまだ負けん」 夕焼けの町の食堂の一角で、二人の言い合いは果てしなく続いたのだった。 「それにしても二人ともよく続きますよね」 結局喧嘩の収まらなかった二人をおいて、アッシュは街灯の灯る道を宮殿に向かって歩いていた。宮殿に向かうにつれて、その光はだんだんと失われていく。彼ら院生が使うべき門は、正面のものとは別に用意されており、そこを常用していたのだ。 検問の手前で身分証明書を取り出そうとポケットをあさった時だった。 ドクンッ!! 突然高鳴る鼓動。 「っ・・・!?」 心臓をわしづかみにされたような気がしてその場にうずくまる。 ・・・・・・・何・・・?どうして・・・ 自分に近づく存在に気づき、アッシュは顔を上げた。 「あんた、大丈夫かい?」 通りかかった住民に声をかけられ、アッシュはうなずいた。 「ええ、大丈夫です・・・」 言いながら何とか立ち上がり、アッシュは暗がりの木々のほうへ身を隠した。 ここなら誰にも心配をかけることはないだろう。 茂みに身を隠し、しばらく休んでいると感じていた重圧もだんだんと和らぎ、やがて通常に戻った。 頭がぼうっとするような気もしたが、もう大丈夫なようだ。 「はぁ・・・一体なんだったんだろう・・・?」 つぶやいた時だった。 ドクンッ・・・ 再びあの感覚。再び自分の心臓が大きく脈打ったような気がした。 ただ、違ったのは先ほどのように苦しくはないということだ。あの時・・・フォースを手にした時の感じとよく似ている。 しかし、手元にフォースは無い。 そして感じる懐かしい気・・・ それはどうも木々の向こう側から流れてきているような気がしてならなかった。頭がまだぼうっとするけれど、足はどうしてもそのの方向に歩いていってしまう。 ―――――――― ・・・なんだろう?誰が呼んでるんだろう・・・? 何故か呼ばれているような気がした。 進むたびに頭が朦朧とする。やがて、少し開けたところに来た時だった。 「・・・あっ・・・」 エデンだ。まるでアッシュを待っていたかのようにそこにいる。 エデンは立ち上がるとゆっくりとアッシュのほうに足を進めた。 どうして・・・ 『あなたが求めたからです』 心の中の問いかけに声が返ってきた。シルバーヒールのエデンは彼に触れていないというのに。 「なんで・・・なんで声がっ」 『私はセカンダリです。つまり、子竜の候補。同種ならば、相手が人間の姿であろうと特殊な術でこうやって会話することが出来ます』 「同種・・・?」 『子竜のジュライ様が言っておりました。最後の子竜が見つからないと。その方は私と同じシルバーヒールだと』 「何が言いたいんですか?それがボクに関係があるんですか?」 嫌な予感がして一歩あとずさる。 『子竜はある術によって人間の姿にされています。フォースがない限り元の姿に戻ることはありません。しかし、私は人間の姿ではないセカンダリ。子竜が人間になろうとも、同種のものなら気で感じることができます』 「・・・・・・」 『あなたが補助系の術を得意とするのは理由があります。もうおわかりでしょう?あなたが一体誰なのか』 「・・・でも・・・ボクは人間だ!ボクは・・・ボクは!」 「混乱するのもわかります」 突然別の場所から声が上がる。 木々の間から現れた女性。 「あなたは・・・?」 「私はエアロガイドのセルディア。今は人間の姿をしています。でも・・・」 そう言うと、セルディアが手に持っていた何かが強い光を放ち、その光が消滅すると共に、目の前にエアロガイドが姿を現したのだ。 「!!」 驚いたのはアッシュだ。目の前の人間が竜に変わってしまったのだから。 姿を変えた竜は大きく翼を一振りすると、再び光に包まれ、最初に現れた人間の姿に戻る。 「あなたも同じです。アッシュ・・・いえ、クォート。竜神に仕えしシルバーヒールの子竜よ」 「ボク・・・」 もう一歩後ずさる。その場を逃げ出したかった。 なのに、本当の事が知りたい。自分がなんであるのか。その答えはすぐそこに・・・ 「全て分かりますか?どうしてボクが年をとらないのか、どうしてボクはフォースの力を感じることが出来たのか・・・十三年前以前の記憶も取り戻す事が出来ますか?」 セルディアをまっすぐ見ながらやっと言う。 もし、全てが解決したら・・・ボクは・・・ 「―――――― あなたの求めている答えは全てここにあります」 セルディアは手に持っていたフォースを差し出した。 ボクはこの生活に戻れないかもしれない・・・ フォースが月の光を浴び、妖しく光る。見ているだけで飲み込まれそうだ。 おぼつかない足取りでセルディアからフォースを受け取る。 ドクンッドクンッ 胎動―――――――― そんな言葉が一番適当だと思った。 フォースは力を引き出すことが出来ない唯一のもの。だが、アッシュは知っていた。 その力を自分のものにする方法を。その力がもたらすものを。 「・・・・・・・・」 アッシュはしばらく手の上のフォースを見つめた。 セルディアはその様子を痛々しげな目で見ている。まるで彼を自分に置き換えているかのように。 彼女もこの瞬間の恐怖を知っているのだ。 アッシュはフォースを握る手に力をこめ、そして精神力を注いだ。 「全てを教えてください・・・ボクの今までと引き換えに」 「そうか・・・とうとう・・・」 エルダスに建つ竜神の神殿。月の光のみが頼りの神殿から、エクセルが窓を見上げながら言う。 「エリオス様にゆだねておりますセカンダリが感知したようです。やはり、私も人間に慣れてしまい、あんなにも近くにいたのに気づきませんでした」 後ろにはジュライが控えている。シルバーヒールのエデンから最後の子竜の存在を聞き、ジュライは慌ててエルダスまで飛んできたのだ。 「仕方がない。この十三年間というのは我々にとって想像以上に長いものだったらしい。私も、勘を鈍らせてしまったよ・・・ジュライ、セルディアが彼の記憶を目覚めさせているのだろう?」 「はい。ライアに会いに行く途中のセルディアに頼みました。彼女ならきっとクォートを助け出してくれるはずです」 「クォートの立場を一番分かっているのは彼女だからな」 「・・・正直迷いました。クォートが見つかった事を・・・」 言ったジュライに、エクセルが振りむく。ジュライには月光が逆光となったエクセルの表情は分からない。 「クォートが記憶を失ってから十三年がたちます。そして人間という存在になってからも・・・セルディアも本当の自分を知ってからかなりの間ふさぎこんでいました。クォートがそうならないか心配だったのです」 「・・・・・・」 「失った記憶は決していいものではありません。私は運良く記憶を失うことはありませんでしたが、セルディアやクォートのような若い子竜はあの瞬間が大きな衝撃だったのでしょう。それが結果として記憶を失うことになった・・・。厳しすぎる現実を突きつけるのはあまりにも残酷だと・・・そう思うのです」 エクセルは再び窓に顔を向けた。見上げる空には月が冷たい光を放っていた。 あれは十年前だったか・・・エクセルは幸せそうに暮らしている一人の少女を見つけた。何も知らない少女は目の前に現れたエクセルに屈託のない笑みを浮かべたのだ。 その後に突きつけられる現実を知る由もなく。 「クォートなら乗り切るだろう。ああ見えても彼は非常にしっかりした心を持っている。我々が思っている以上に・・・。ジュライ、お前が責任を感じることはない。全ては・・・あの時私が下した命令が発端なのだから」 そういって目を閉じたエクセルにあの瞬間が蘇る。 暴れ狂う巨大な竜。それに必死に呼びかける五頭の竜―――――――― 彼らの悲痛な思いはついに届くことは叶わなかった。そして彼ら五頭をまとめる竜が下した結論。 それは主人を裁くための、最大の重罪。 それから十三年がたち、ようやくその竜が五頭揃おうとしていた。 「エクセル様、それはおっしゃらない約束です。それ以上ご自分を追い詰めるのなら下位の私でも怒りますよ」 「―――――――― そうだったな、すまない・・・」 「・・・フォースは二つしかありません。一つは私の手元にあります。明日にでもこのフォースでデルタに向かいます。私とセルディアの背中に一人ずつ乗せて飛べば大丈夫でしょう。ライアも一緒に連れて帰るつもりです」 「人間達の作った飛空挺というものがあればフォースに束縛されることはないのだがな。仕方がない、ジュライ頼んだぞ」 「はい・・・!」 ジュライは返事をする遠くの部屋に下がった。 一人神殿に残ったエクセル。彼はただ一人夜空に浮かぶ月をいつまでも見つめていた。 空間が光った。 アッシュがフォースに力を注いだ瞬間だ。 「っ!!!」 目には強すぎる光に目を硬く閉じる。 ―――――――― クォートの名を与えよう 声がした。その声に惹かれて目を開ける。 そこには巨大な竜がいた。それが一体誰なのかすぐに分かった。 この方は・・・ 自分のおかれている状況を思い出す。見れば自分が竜の姿をしているではないか。今までの自分とは違う全く異質のもの。 この記憶・・・ 辺りを見回す。見慣れた彼の仲間がいた。彼と行動を共にし、主人に仕えた。 そして十三年前――――――― ボク・・・ボクは・・・!! もう一度目を開く。 『・・・・・・・・・・えっ・・・』 先ほどの場所だ。目の前にはセルディアとエデンがいる。あの姿は・・・あの自分の体は幻・・・? しかし、彼は気づいた。目線が高くなっていることに。目の前のエデンと同じ目線にあることを。 『ボク・・・この姿・・・』 エデンを鏡に映したようによく似ている。初めてエデンを見た時にあこがれた美しい翼を持ち、彼がその真実を知りたくてやまなかったリバースを行使する事が出来るシルバーヒール―――――――― 『そう・・・か。ボク・・・ボクはずっと前から・・・』 湧きいずるとはまさにこの事。なくなっていたパズルのピースが一つずつ空いた記憶を埋めていく。 だんだんと思い出される過去の記憶。もう取り戻すことは出来ないと思っていた本当の自分。 『――――― クォート・・・ボクの本当の名前は・・・クォート・・・あの方から頂いた・・・子竜の名前・・・』 大きな瞳から涙があふれ、器用に持っていたフォースに落ちる。 カッ 二度目の輝き。目がくらみ、再び目を開けたその先にあの光景が広がっていた。 十三年前の、悲劇が・・・・・・ 『セルディア!あの方はどうしたんですか!?それに私たちは・・・』 さっきまでは見知らぬはずだった女の名前を呼ぶ。 「思い出したのね、クォート」 隣にいるエデンから通して理解するクォートの言葉にセルディアが微笑む。 『あっ・・・セルディア・・・私は・・・私はあの時に死んだのでは・・・!?』 自分という存在に驚きの声を上げる。あの時白い光に包まれた自分は死んだはずだ。そう、主にそむいた代償に。 「いいえ、我々子竜は一頭として死んではいません。あなたもよ、クォート」 『・・・私はこの十三年間大事な記憶を失って・・・セルディア、これは一体・・・?』 訊いたクォートにセルディアは悲しそうな表情をした。 「わからないの。エクセル様も。どうしてこのようなことになったのか・・・ただ言えるのは我々子竜はあの方に代わって仕事をやり通さなければならないということ。何があっても人間の力になり、慈しむこと・・・それがあの方の教えだから」 『エクセル様やライアさんは・・・?それにジュライさんも・・・』 「今はいないわ。でも安心して、すぐに会わせてあげる。皆が揃うのは十三年ぶりだもの」 十三年・・・その時間は彼らにとっては短い時間だったはずだ。しかし人間の姿となってからはすっかり時間の感覚が変わってしまった。十三年前があんなに遠く感じるなんて。 カッ クォートの体が光る。やんだ時には人間の姿だった。 「全て思い出した?」 「はい・・・思い出しました、セルディアさん。ボク・・・覚悟してます。皆と一緒に行かなければならないんでしょう?それがボクの使命だから・・・ボクはアッシュじゃなくてシルバーヒールの・・・クォートだから」 手に持っているフォースを強く握り締める。 ぽたっ その手に涙が落ちる。クォートのものではない、アッシュの涙だ。 「クォート・・・」 「記憶を失ってからボクはずっとアッシュとして生きてきました。将来はお医者さんになることを夢見て・・・。それがボクの大事な使命だとそう思っていたから・・・」 意を決したように顔をあげ、セルディアを見据えた。 「でも、私はシルバーヒールのクォートです。あの方に仕えるために生まれてきた・・・名前を与えられた時からそう信じてきました。だから私は皆と共に行きます。使命を全うします!」 それでもとめどなく流れる涙を抑えることが出来なかった。 クォートとして再び生きていくことを決意したはずなのに。 その理由をセルディアは知っている。十年前自分が流した涙と同じものだ。 「クォート・・・今すぐにとは言わないわ。ライアだってこの宮殿に勤めているんだから」 セルディアの言葉にクォートが顔を上げる。どういうことかと疑問の表情を湛えている。 「今は力を蓄えているところなの。このシルバーヒールだって我々の後継者・・・四頭の竜が今デルタに預けられているの。あなたも知っているでしょう?ディクス・クロードのことを」 クォートがうなずく。 「彼は人間にしては特殊な部分を多く持ち合わせているわ。その理由はわからないけど・・・彼らはセカンダリの世話を任せているの。エデンも知っているのよね」 問いかけるとエデンはうなずいた。 「じゃあ・・・私は・・・」 「エクセル様に一度会っていただければそれからは今までどおり生活してもらってかまわないのよ。・・・あなたがなりたいものを目指してもいいってこと」 セルディアが微笑むとクォートの顔が笑顔に満ちた。 「ほ、本当に!?ぼ、ボク、このまま生活してもいいんですか!?」 一人称がめまぐるしく変わる彼にセルディアはうなずく。 「アッシュとして・・・ボク、アッシュとしてがんばります。あ、もちろんクォートとしても頑張りますけど・・・でも、がんばります!子竜の時に使った術も全て思い出しました。なんだか、今までよりもっと夢に現実味が湧いてきました」 「そう・・・。でも、クォート。これだけは覚えておいて。我々は人間と同じ時間軸では生きていけないということを。必ず子竜としての責務をやり通さなければならないということを。我々は人間ではないのだから・・・」 「―――――― ええ、わかっています、セルディア。でも、私は短くともアッシュとして生きていたい・・・。でも、来るべき日には私はアッシュを殺します」 神妙なアッシュ・・・いや、クォートの瞳には決意が込められていた。 それが彼ら子竜の定めだから・・・自分が子竜であることを思い出したその瞬間から分かっていたことだ。 ―――――――― クォート・・・あなたは強い子ね・・・ 「あなたはけじめがある子だわ。その日が来るまで、そして、アッシュ。あなたの仲間の前では今のままで通しなさい。いきなり名前が変わったらおかしいでしょう?」 「そうですね。ボク、アッシュって名前が好きだったから。・・・セルディア、ボクはこれからどうすればいいんですか?」 「まずはエクセル様たちに会いましょう。エルダスの神殿にいらっしゃるわ。ライアも一緒にね」 「ライアさん、宮殿に勤めてるって言ってましたけど、何してるんですか?」 「この国の第一王位継承者、スティング様の従者をやっているのよ。かつての竜神の血を引く末裔に仕えているのだから大役よね」 「すごいですね!ボクもそれくらい大役を仰せつかってみたいです。あの、ジュライさんは?」 ジュライはクォートが一番頼りにしている兄貴分のような存在だ。 彼が子竜となってから、ずっと慕ってきた。 「彼なら今エルダスにいるわ。あなたが見つかったことをエクセル様に知らせるって大急ぎで飛んで行ったんだから」 「早く皆に会いたいな・・・それにボクきっと見つからなくて皆に迷惑かけたから。セルディア、エクセル様たちにいつ会えるんですか?」 「ジュライが戻ってきたらすぐに・・・よ。フォースは二つしかないからジュライの背中に乗せてもらうといいわ。人間のままで飛行術使える?」 「えーっと・・・一応飛行術は使えるとは思います。でも、体力が持たないかもしれません」 「そうでしょうね。人間と竜ではキャパシティが違うのだから。アッシュ、私はもう戻ることにします。ジュライと合流できたらその時は迎えに来ます」 言ったセルディアにアッシュは持っていたフォースを返した。 「有難うございます・・・セルディア」 「―――――――― じゃあ、また」 暗闇が光に包まれる。竜に戻ったセルディアは暗闇の空へ消えてしまった。 ―――――― 相変わらずセルディアは飛行が得意なんだなぁ・・・ その場に残ったのはアッシュとエデン。 『私も主人の元に戻ります。クォート様、お元気で』 「うん、有難う。・・・そうだ、君の名前は?」 『エデンです。私の今の主人、エリオス様が与えてくださいました』 「エデン・・・いい名前だね。ボクは頼りない子竜かもしれない。君にも迷惑かけるかもしれないけれど、これからはよろしく頼みます」 そんなアッシュにエデンは深々と頭を下げた。 ばさっ そしてセルディアと同じように暗い空に消えた。 「―――――― ・・・・・。」 ボク・・・子竜だったんだ・・・だからフォースの力やリバースを使えたんだ・・・年を取らないのだって・・・ 疑問に思っていたことが全て明らかになる。 「目標が増えちゃったな」 自嘲気味に笑い、不安げな表情を空に向けた。 「おーい!アッシュ!」 検問を過ぎたところで声がかかる。 フィルジアを抱えたスレイドだ。 「スレイドさん・・・」 「さっきはすまなかったな。お前が出て行ったの、すぐに追いかければよかったんだけど・・・オレも酒で酔ってたから」 アッシュは首を振った。 「・・・ほっ・・・?おお、アッシュか。すまんのー、年取るとどうも勘が鈍ってのー」 「やっと起きたか、フィルジア、立てるか?」 「大丈夫じゃ」 そう言って、フィルジアは危なっかしく立ち上がった。 「ふむ。やはりアッシュがいてくれないとつり合わんのー」 「そうだな。オレたち二人じゃ今度は術ぶっ放しかねないもんな。怪我してもまとも治癒の術使えねーし」 「アッシュ、これからも頼むぞい!」 言った二人の言葉が何故だがとても心にしみた。自分をどんな形であれ、必要としてくれている彼らに心から感謝をした。 「怪我したら・・・すぐボクに言ってくださいね!ボク、優秀なお医者さんになるんですから!」 満面の笑みを浮かべ、アッシュは楽しげに言ったのだった。 |