D.Force The Third Chapter
Force-16

変化ある物無い物と


「ごめんねー、お待たせしました」
ナチがようやくスティングたちの元に帰って来た。
「どうでした?」
「うん、宿はディクス次第だから大丈夫よ。それより、何もすることないからもう一度クリスタルレイクにいって
みる?さっきの場所とは違うところだからまた違った風景が味わえると思うの」
そう言うと、スティングとエリオスがうなずいた。
「それではエリオス様、スティング様は行ってください。私はエレカーの管理をしておりますので。何かありましたらすぐに連絡くださいね」
フルトはエレカーを見ているつもりのようだ。
ちなみにスティングもエリオスも術で髪と目の色を変えていた。エリオスはいつもの銀髪を黒髪に変え、真紅の瞳は紫の瞳だ。スティングは茶髪に鮮やかなグリーンの瞳だ。
どちらも別人に見えてしまう。
「変装のほうも大丈夫そうね。じゃあ、いこっか!」
そして三人は再びクリスタルレイクへと向かったのだった。
三人が歩いていたのは舗装されていない、横幅がやたら広い道だった。雑音もない、のどかという表現がぴったり合う場所だ。
「ナチュラルはどのあたりに住んでいたんだ?」
あたりを珍しそうにきょろきょろしながらエリオスが訊いた。
「わたしが住んでいた家はこの道を行った先です。あと少ししたら見えてくると思いますよ」
町人とすれ違うが、その何人かがナチのことに気づき、嬉しそうに声をかけていた。ナチも懐かしそうに町を眺めながら歩いていた。
やがて左手が少し開けた場所に出た。その一角にある家をナチが指差す。
「あの家です。あそこに昔住んでたんですよ」
目を向ければ小さな家があった。ログハウスと言ったほうが適切だろうか。小さな煙突が特徴的なかわいらしい家だった。
「そういえばディクスが作ったとかって前言ってませんでしたっけ?」
「うん、そう。でも正確に言うとディクスが作ったというよりはディクスが修繕したって言ったほうがいいんだけどね。ぼろぼろだった家を何ヶ月かかけて住めるようにしたの」
まぶしそうに家を眺めている。煙突からは煙が出ていた。誰かがいるのだろう。
「今は売っちゃったから仕方ないけど・・・でも、すごく素敵な家だったんだよ。売却価格も思った以上に高かったからディクスと驚いちゃったんだよね」
笑いながら言う。けれどその表情に寂しさを感じずにはいられなかった。
「でも・・・今の住人が家を大事にしてくれてるようでよかったな」
「・・・・・・ええ!」
エリオスの言葉にナチは嬉しそうにうなずいたのだった。


ディクスは立っていた。さっきからずっと立っていた。見慣れたドアの前で難しそうな顔をしながら立っていた。
何度もドアを叩こうとしたこぶしが握られたままで不発に終わっている。
「・・・・・・」
戸を叩け!それだけでいいだろ?そしたら万々歳だ!祝杯だ!早く、早く叩かんか、俺!
さっきからこの調子だった。挙動不審なディクスを通り過ぎる全員が怪しげな目で見ている。
そして、心の中の葛藤がかれこれ三十分ほど続いた時だった。
「誰?」
突然の声にディクスは飛び上がった。
自分の心臓の鼓動がやけに耳に響く。そして手には汗が・・・。
「うちに何か用?」
わかっていた。誰が声をかけたのか。
ディクスを挙動不審にしていた原因人物――――――
「リ、リーン・・・」
ディクスはぎこちない様子でリーンを振り返った。


再び目の前に広がる美しい湖。
嬉しそうに見渡したナチだったが、ある一点の変化に気づくとその場所に走っていってしまった。ついてきた二人も慌てて走る。
「あー・・・この桟橋建て替えられちゃったんだー」
まだ新目の桟橋を見てナチが残念そうにつぶやいた。
「ナチがいた時とは違うんですか?」
スティングが訊くとナチはうなずいた。
「正直言って、走ったり、跳んだりしたら崩れちゃうんじゃないかってくらい古かったんだけど、色々思い出のある橋だったから。小さい頃とか、その桟橋に行くの禁じられてたんだけど、友達とこっそり来ては度胸試しだって危険なこと一杯やってたんだよね」
真新しい桟橋に手をかける。これならば走っても跳んでも崩れることは無いだろう。
「ナチュラルがいない間にこの町も変わったってことか・・・」
スティングとエリオスにとっては初めての町ではあるが、ナチにとっては何にも変えがたい故郷だ。
けれど、しばらくの時がリスタルを変えていた。町並みだってそうだった。見慣れた家はなくなり、見覚えの無い家が何件も建っていた。
行き交う人も、見知らぬ人だって多かったのだ。
そして、クリスタルレイクも人の手がかかっている部分はその姿を変えていた。
・・・・・・仕方ないよね。二年だもん。
ほうっと息をつく。
「これから二人を取って置きの場所に連れて行ってあげるね。この寒い季節が旬なんだから」
寒い季節が旬・・・
ナチはディクスにも教えたこと無い場所に二人を案内した。
湖のほうではなく、森のほう。木々に隠れるようにしてそれはあった。
「木苺?」
緑の葉っぱに鮮やかな赤い実にエリオスが言う。
その通りだった。寒い時期にしか実らないリスタルの木苺。周囲は普通の緑だけの草木なのに、その場所だけは赤い実がたくさんついていた。
「この木苺、この冬にしか実らないんですよ。兄にも教えた事のない秘密の場所で・・・冷たくて美味しいですよ」
いくつかもいで、二人に渡す。
とてもつややかで美しい色の木苺だった。しかも香りがとてもいい。
これは一級品に違いないと、二人とも口にした。
「甘い!」
「甘いな」
口にして反射的に二人がそう答えた。するとナチが得意満面な顔をしてさらに他の木苺を渡した。
「木苺っていうからすっぱいと思っていたんですが」
「でしょ?食感も歯ごたえがありながら口の中でとろけそうで、酸味もあるけど、甘みはそれ以上なの。そこら辺の木苺なんかには負けないんだから」
一度に数個をほおばり嬉しそうに言う。
「こんなにあまい木苺は初めて食べたよ」
「わたしもこれ以上に甘くて美味しい木苺は食べたこと無いんですよ。どうしてこんなところで自生しているのかは分からないんですけど、けど、冬にこの場所で木苺を食べるのがすごく楽しみだったんです。この森は鬱そうしているだけの森かもしれませんけど、春はびわが美味しいですし、夏はさくらんぼで・・・秋になるとブドウとか桃が美味しいんですよ」
「人の手が加わって無くてもそんなにも味わえるものなんですね」
スティングが感心している。
このリスタルはデルタとは大違いだ。町は小さくとも、大きなこの森が町を覆い、暮らしの一部となっている。
そしてクリスタルレイクと呼ばれる美しい湖。
ナチがリスタルを恋しがる理由がよく分かる。
「リスタルも好きだけど、でも、デルタも好きだよ。ここには無いものがたくさんあって飽きないし、それにスティングやエリオスさんもいるしね」
言われてスティングとエリオスは顔を見合わせる。
再び顔をナチに向けると二人とも嬉しそうに笑みを浮かべた。
「リスタルは他にどんなところがあるんですか?」
「えっと、湖の洞窟があるんだけど・・・そこに行こう!すごく綺麗な場所なんだよ」
そういうと二人の手を引っ張ってナチは洞窟へと向かったのだった。
再び湖に戻ってきた三人。ナチは二人を湖のとある一角に案内した。
森の中の湖といっても完全に木々に囲まれているわけではない。湖の一部は小さな山の崖に面しているのだ。桟橋を通り過ぎ、崖の下にやってくる。
「確か・・・ここらへんだったと思うけど・・・」
ナチが崖下の茂みをかき分ける。そしてナチは茂みの向こうへ消えてしまった。
聞こえるのはナチのつぶやきと木の枝を折る音だけ。
「ごめんね、もう大丈夫よ」
茂みから顔を出し、二人に声をかける。背の高い二人は窮屈そうにしてようやく茂みの奥の洞窟に足を踏み入れた。
そして・・・・・・
「洞窟が・・・光ってる!?」
驚きの声を上げたのはエリオスだった。続いてやってきたスティングも驚きの表情を見せた。
暗いと思っていた洞窟の内部はその壁という壁が淡い光を放っていた。明るい・・・とまではいかないが、洞窟を見渡すには十分な明るさだ。
すぐ隣の光る壁を指でなぞる。なぞったエリオスの指には淡い光の素ががついていた。
「これは・・・苔?」
同じように指でなぞったスティングが自分の指についた光を凝視しながら不思議そうに言う。
「そうそう、光りゴケ。これがあるから光の術がなくても大丈夫なんだよ」
そして二人を促すと、ナチは洞窟のさらに奥へと歩いて行った。
ぴちょん・・・ぴちょん
結構広い洞窟だ。足元の小さな水の流れはあの湖へと続いている。洞窟の上から滴る水が涼やかな音を立てていた。
相変わらず光りゴケは周囲を淡く照らし出している。これが洞窟の奥まで続いているのは分かるが、その先の様子がどうなっているのか知るにはあまりにも光が弱すぎる。
なれない二人はやや不安に思いつつ、黙ってナチについていくしかなかった。
足元が危険なため、スティングとエリオスの二人は下を向きながら慎重に歩いている。一方現地人のナチは特に足元を気にする様子も無くどんどん先に進んでいってしまう。
「着いたよ!」
ナチの声が洞窟に響き、下を向きっぱなしの二人がようやく顔を上げた。・・・が。
「ナチュラル?」
目の前の空間に入るはずのナチがいなかった。
まさかはぐれたのか・・・・・・?
二人が緊張しながらさらに進む。そして広い空間に出たと思ったときだった。
『えっ!?』
スティングとエリオスの二人が同時に声を上げる。
そしてその場に立ちつくした。
「ここが、その青の湖だよ」
いなかったはずのナチがいつの間にか隣にいる。
「さっきのはクリスタルレイクっていうんだけど、こっちの洞窟の湖はブルーレイクっていうの。見たとおりでしょ?」
洞窟とは思えないほど大きなドームだ。もちろん光りゴケが張り付いている。高い天井に散って群生している光ゴケはまるで星空のようだ。
しかし特筆すべきなのはそこではない。天井とは真逆にある豊かな水をたたえた湖。
普通なら光りゴケの光も届かず、湖の最深部は暗くて見えないはずだった。けれどもこの湖は違う。
その最深部から光が漏れている。水の流れで屈折した光の帯が湖の中を踊っている。美しい青い水の中を青白い光がたゆたっていた。
水を通って青く色を変えた光が三人を照らす。
「これも・・・湖なんですね」
じっと水面を見続けているスティングが言う。
「自然が作り上げるものとは、私が思っている以上だったな」
エリオスも同様だ。
「実はこの湖の最深部にはクリスタルがあるんです。何でこんなところにあるのかはわかりませんけど、そのクリスタルから発せられる光でこの湖は光ってるって言われてます」
三人が口を閉ざせば聞こえるのは水の流れだ。心地よい音が洞窟全体に響く。
空気は冷たいが、風は無い。
居心地の良い場所にいつしか三人は時を忘れた・・・。


「えっ・・・ディクス君・・・!?」
振り返ったその顔にリーンは驚きの表情を見せた。突然現れたディクスに、まさか・・・と、指を差して口をパクパクさせている。
ディクスの驚きもたいしたものだったが、リーンはそれ以上に驚いているらしい。
互いに驚きっぱなしでしばらく声もでなかった。
―――――― ひ、久しぶりだな」
ようやくディクスが言った言葉にリーンはうんうんうなずいた。
「本当よー!ずっと連絡くれなくて本当に心配してたんだからー!」
本人は気づいていないのか、大声で言う。すると家から誰かが出てきた。
「さっきから騒がしいねー、リーンあんた一体何やって・・・」
ドアを開け、顔をのぞかせたリーンの母親、エルダ。彼女から見ればディクスは後ろ向きではあったが、懐かしいその背格好を彼女は見逃さなかった。
「もしかして・・・ディクス君かい・・・!?」
素っ頓狂な声にディクスは気まずそうな顔を振り返る。
「どうも・・・久しぶり・・・」
ぎこちない笑みではあったが、エルダは気にせずディクスをぎゅーっと抱きしめた。
―――――― 苦しい・・・!!!
声こそ上げなかったが、エルダの腕力は相当だ。解放された時にはディクスの息が上がっていた。
「お帰りー!ちょっと見ない間にたくましくなったんじゃない?」
ディクスの腕を叩きながらエルダは嬉しそうに言う。
「でもなんで急に・・・?」
「うん・・・ちょっとな・・・」
曖昧に笑ったディクスにリーンは不思議そうな顔をした。
「とりあえず中に入った入った!そんなところじゃ二人とも風邪引くよ」
エルダに促され、二人は家に入った。
さすがに家の中は暖かかった。今までずっと外に立っていたディクスはようやく息をついた。
それから部屋を見渡してみたが、何年か前と変わっていないらしい。それがとても懐かしく思われる。
「見てみて、ディクス君!」
奥の部屋に行ったリーンが戻ってきた。その腕には何かが大事そうに抱えられている。
「私母親になったのよ」
嬉しそうに言うリーン。そういえば少し顔がふっくらしたような・・・。
リーンと赤ん坊をこうごに見比べる。赤ん坊は眠っているようだが、目元がリーンによく似ている。髪の色は父親受けらしい。
「おめでとう!」
予想していなかった知らせにディクスは心の中から祝いの言葉を述べる。
「でも、まさか、本当に・・・お前、母親になったんだなぁ」
赤ん坊の柔らかいほおを軽くつついてディクスは言った。
「当たり前でしょー。だって私の夢だもの」
そして赤ん坊にほお擦りする。
「それでディクス君はどうなの?」
痛すぎるところを急に訊かれてディクスは笑みを張り付かせたまま固まった。
「・・・・・・話題を変えるわ。急にリスタルに帰ってくるなんてどうしたの?ナチュラルちゃんは?」
「あ、ああ。俺たち相変わらず旅をしてるんだが、その途中に寄ってみようかなって思ってさ」
「まだ旅してたのね!ディクス君たちが旅をするって言ったときは驚いたけど、ちゃんと果たしてたのね」
「うん、そう」
エルダが温かいココアを入れてくれた。甘いやつをディクスに渡す。リーンはエルダに赤ん坊を渡すとソファについた。ディクスも向かいのソファに身を落ち着ける。
「・・・もしかして、泊まるところが無いの?」
さっきから何か言いたげなディクスを見抜いたリーン。するとディクスは正直にうなずいた。
「そう・・・帰って来たは良いんだが、泊まるところが無くてさ。それでどうしようか迷ってたんだ」
「それでうちの前に立ってたのね。水臭いわね、そんな簡単なことすぐに言ってくれれば良かったのに」
リーンが口を尖らせて言う。
「なんだか悪くてさ。それに俺とナチだけじゃないんだ」
「え、誰か他にいるの?」
「うん、後三人・・・。旅の途中で知り合った連中なんだが。その分も何とかして欲しいんだ。リスタルには宿屋なんて気の利いたもの無いだろ?俺たちはテントでも構わないんだが、その三人だけはちゃんとしたところを用意してやりたいんだ」
「そうねー・・・五人・・・」
考え込んだリーンにディクスは不安そうな顔をした。
やはり急に五人を宿を取ろうとするのは無理だったか・・・
「もちろん、オッケーよ!五人くらいなんとでもなるわよ」
胸を張ってリーンは答えた。
「本当か!」
「あったり前でしょー?私を誰だと思ってるの?」
「有難う、助かるよ」
はーっと息をついてディクスは大事をやり遂げたかのようにソファの背もたれに両腕を広げ、天井を仰いだ。
「ふふ、ディクス君って全然変わってないのね」
安堵感全開のディクスにリーンは笑った。ディクスの一喜一憂を楽しんでいるようだ。
「ところでジョージは?仕事か?まさかあいつ、新妻・・・といってもずいぶん経つけど、お前をを置いて旅してるんじゃないだろうな」
「違うわよ、ちゃんと仕事してるわ。結婚してから一度もリスタルも離れてないし。ジョージったら子供が出来てから毎日浮かれてるのよ。母親の私から見ても溺愛しすぎじゃないかって思うくらいよ」
「そりゃあそうだろ。ジョージは今まで一人だったんだし、急に家族が増えたんだ。誰だって嬉しいさ」
甘いココアをすする。このディクス好みの甘いココアの味も変わってはいなかった。
飲んだ後も口の中にはほのかな甘さが残る。
「リスタルを離れてどうだった?旅は楽しかった?」
「もちろんだ。いろんなことがあったよ。そうそう、俺、マスターの称号取得したんだ!」
自慢げに言うディクスにリーンはあまり反応を示さなかった。
リーンは術には興味が無かったのだが、マスターの称号のことを知らないのだろう。
「マスターって何?」
やはりそうだった。一人空回りしたディクスは突き出したピースサインを恥ずかしそうに下ろした。
「デルタでやってる術者の検定だよ。まず"院"と呼ばれる学校に入って勉強して、それで試験を受けて合格したら術の中で最高の賞与が与えられるんだ。それがマスターの称号」
恥ずかしさを隠すかのようにディクスは静かに答え、ココアを口に含んだ。
「えーっ!それってすごいことじゃない!おめでとうー!」
ぱちぱちと手を叩いてリーンが喜ぶが先ほど完全にタイミングをはずしたディクスは再びピースサインをせずに、苦笑いをしただけだった。
「ナチも今、院に入って頑張ってるんだ。俺を抜くって今めきめき力つけてるよ」
「ナチュラルちゃんが!そうよね、もう大人だもんね」
「まだまだ子供だよ」
即座に口にした父親のような台詞にリーンは笑った。やはりディクスは変わっていない。
「ディクス君」
「うん?」
「リスタルに戻る気はないの?」
しばしの沈黙。そしてディクスは首を振った。
「今はその気はないよ。やるべきことがあるからさ」
「そっか」
「でも、それが終わったらここの戻ってくるつもりだ。新しい家を建ててさ。昔みたいにナチと楽しく過ごして・・・」
嬉しそうなディクスを見るリーンの表情が一瞬だけかげる。
―――――― ディクス君、でもそれはきっと無理だわ。ナチュラルちゃんはいつかディクス君の元を離れていってしまうのよ
語るように言うディクスに、リーンは思いを伝えることが出来なかった。
「叶うといいね」
気持ちを押し殺し、リーンは返した。せめて現実を知るまでは・・・と。
リーンは精一杯の笑みを浮かべる。
「そのためにちゃーんと貯金もしてあるんだ」
「うーん、さすがいい主夫してるわねー!うちにお手伝いさんに来ない?」
「断る」
再び即答のディクスにリーンは笑った。そんなリーンを見てディクスは良かったと思った。
リスタルに来て・・・と。
最初は怖じていた。理由はわからない。けれど、リーンに会うのが怖かったのだ。
だからリーンの家の前で何十分も立ち尽くす羽目になってしまった・・・。
それが今思うと馬鹿馬鹿しく感じてしまう。自分でも理解不能な感情にディクスも笑った。
「そろそろ日が暮れちゃうわ。ナチュラルちゃんたちはどこ?迎えに行かなきゃ」
「そうだな。あいつらは多分リスタルの湖だな。俺行って来るよ」
カップを置き、立ち上がる。
「じゃあ、私も行くわ」
「いいよ。外寒いぞ」
「大丈夫よ!この程度の寒さで堪えてたら主婦はやってられないんだから!」
そういってリーンは先に家を出てしまった。
やれやれと思いつつ、ディクスも急いでその後を追った。
久しぶりに見るリスタルの夕日。まぶしく感じながらディクスはリーンとともにクリスタルレイクへと向かったのだった。



第15話 第17話
コンテンツに戻る