D.Force The Third Chapter
Force-2

集いし5つの守護者達


三日月の光が窓を通して床に落ちる。
「クォート、眠れないのか?」
隣のベッドで何度も寝返りを打っているクォートに気づいたジュライが声をかける。
「あ、ごめんなさい、うるさくして・・・」
「良いよ、謝らなくても。どうせお俺も寝付けなかったんだしさ」
体をクォートのほうに向けて言う。クォートがうなずいたのが見えた。
―――――― 明日戻るんだろ?デルタに」
「はい。連れて来てくれたライアさんに迷惑かける訳にも行きませんし、それに、ボクやらなきゃいけないことがあるから」
「お前は変わらないな・・・」
ジュライが笑う。クォートも笑みを浮かべた。
窓の外に目を向ける。相変わらず光を放っている月。
・・・・・・明日はきっとデルタでこの月を見るんだろうな・・・
そう思いながら目を閉じた。
エルダスに来たのが三日前だった。
「ここが・・・エルダス・・・」
アッシュが垂直に伸びるビルの列に立ちどまる。
黒いアスファルトの道。そこを行きかう人、人、そしてエレカー。土地が足りないのか、中には建物をはうようにあるエアーカプセルのレール。
アッシュが見るもの全てが初めてだ。アッシュがほうけている様子を見て、ライアもセルディアも苦笑している。
――――――― すごい・・・エルダスはボクらの考えられないほどの科学技術を持ってるって聞いたけど・・・
「クォート、行きましょう」
あれは一体なんだろう?何で人を乗せてあんなに自由に走るんだろう・・・!?
アッシュはすぐ目を前を走るエレカーに興味津々だ。目を右から左へ、左から右へと急がしそうに動かしている。
あっ、また横切った!あの鉄の線の上のカプセルみたいなのなんだろう・・・?
「クォート!」
「!」
セルディアから肩を叩かれようやく気づく。
「あ、セルディア・・・ごめん・・・」
―――――― 忘れてた、ボククォートだった!
目の前の科学技術に気をとられているほかに、まだクォートという名前を完全に認識しているわけではないようだ。
「クォートらしいわ。でも、エクセル様の前ではそういうことはないようにね」
自分の本当の名前を忘れていたアッシュ――――― クォートはライアに言われて恥ずかしそうに頭を掻いた。
「でも、ライアの小型飛空挺のおかげでフォースを使わなくてすんだわ。ジュライにも負担かからなかったし。有難う、ライア」
「いいのよ。これもスティング様のおかげなんだから。行きましょう、エクセル様がお待ちよ」
促され、三人はエクセルの待つ竜神の神殿へと向かった。
サイバー都市の中にある神殿。
古風な神殿に三人は足を踏み入れた。
「あの方の・・・壁画・・・」
中心部に向かう途中。長い廊下にあった壁画を見てクォートがつぶやく。
「クォート・・・」
立ち止まったクォートにセルディアが声をかける。クォートはうなずき、そして後に着いた。
天井に大きなステンドグラスがある中心部。そこから太陽の光が注ぎこまれ、その光の先に彼はいた。
「クォート。十三年ぶりだな」
司祭の服を身にまとったエクセルだ。十三年ぶりに帰ってきたクォートに微笑む。
「エクセル様!」
クォートはセルディアとライアを押さえて駆け寄る。
「エクセル様・・・ボク・・・」
「この十三年間本当に大変だったな。でも、もう大丈夫だ。子竜として蘇えれば何も恐れることはないのだから」
その言葉にクォートがうなずく。
「只今帰りました」
セルディアとライアが言う。
「ご苦労だった。意外に早かったようだが、さすがは飛空挺といったところだな」
「はい、力を消耗せずに済みました。エクセル様、これお借りしたフォースです」
セルディアがフォースを返す。
「クォート、全てを思い出したのか?」
「はい、全て・・・。初めは信じられませんでした。ボク、あの直後に死んでしまったものだと思っていたんです。まさか人間として過ごしていたなんて信じられなくて・・・」
「そうだな。私やライア、ジュライは記憶を失うことなく時を過ごしてきたが、お前やセルディアは記憶を失い、そして人間として過ごしてきた。そうすぐに受け入れろというほうが無理というものだ」
――――――― セルディアもしばらくの間人間に・・・?
こちらを見ているセルディアを見る。自分だけが人間の世界にいたのだと思っていたクォートは驚く。
そんな彼に気づいたのか、セルディアは笑みを浮かべてうなずいた。
「でも、エクセル様。ボクは大丈夫です。ボクは子竜であることを誇りに思っているのですから。・・・あの、ところでジュライさんは・・・」
エクセルから視線をはずし、その場を見渡す。人間の姿のジュライは知らないが、少なくともこの場所には四人以外の誰もいない。
「ああ、ジュライか。彼ならすぐに戻ってくるよ。ジュライはお前が一番親しんでいたな。夕方には戻ってくるだろう」
そういうと、エクセルは祭壇のほうに向かった。
「五頭の竜が揃ったとき・・・クォート、お前にもこれからの我々の行く末を話そう。それまで休むも、エルダスを観光するのもいいだろう」
振り返りそういう。
「はい、有難うございます」
そして礼をするとその場を離れた。


「ねえ、セルディア。セルディアも人間として生きてきた時間があったの?」
隣を歩くセルディアに訊く。するとセルディアはうなずいた。
「ええ、そうよ。私の場合クォートみたいに長くはなかったけど。エクセル様に見つけられたのよ」
二人は神殿の庭にある椅子に腰をかけた。
中心部は雑音でうるさいが、この神殿は打って変わった静けさだ。目の前の噴水の水の音が心地よい。
「・・・私の場合はね、身寄りを失った人たちが集まる場所に身を寄せていたの。大きな家族みたいで楽しかったわ。そんな時エクセル様がいらっしゃったの。さすがに自分の正体を知らされたときはショックだったけどね」
苦笑する。
「あまりにも驚いて数日ふさぎこんじゃったくらい。クォートの場合すぐに覚醒してくれたけど、私の場合は覚醒が不完全だったみたいで。なかなか受け入れなかったの。・・・それに、私の心が弱い部分もそれを助長してたんだろうけど・・・」
「そんなことないよ、セルディア!ボクだってショックだったよ。ボクは将来頼りになるお医者さんになるってそう信じて叶わなかったから。フォースの力を行使できるって分かった時、すごく不安だったし・・・」
しばらくの沈黙。二人には人間として生きてきたわずかな時間が思い出されていた。
「子竜がこんなじゃないけないわよね」
不意に沈黙を破る。
「そうだね・・・ボクたちはこの大陸を守らなきゃいけないんだし・・・」
「ええ、どんな力にも我々は勝たなければならない・・・」
声のトーンを落とし、セルディアがつぶやいた。


時はすでに夜。
昼間は明るい神殿も、夜は暗闇に包まれ、静けさを保っていた。
祭壇の後ろにある小さな部屋。その場所に十三年ぶり五頭の子竜が集まっていた。
「この大陸を襲おうとしている・・・力・・・?」
クォートがつぶやくように言う。
「そうだ。ディオール大陸を飲み込もうとしている巨大な力。その勢力は今に始まったことではない」
その言葉に他の三人も驚きの表情をする。
「エクセル様、それはまさか・・・」
セルディアが言いかけると、エクセルはうなずいた。
「十三年前、我らがマスターはその巨大な力を大陸にぶつけられた・・・お前達も思っているだろう?その行動が正気の沙汰ではないと。どんなに巨大な力を持ち、強靭な力を持っているものでも、その精神はもろいものだ。そこを狙ってマスターをあやつったとしたら・・・?」
「その力によって大陸は破壊されたのですか?誰かの仕業でマスターは・・・っ!」
クォートが声を荒げる。それをセルディアがたしなめた。
「そして・・・ネルディアス大陸の子竜と、我々に人化の術を施したものの正体。ネルディアスの竜神が姿を現さなくなった時期・・・それとほぼ同じ時期にマスターは力を放った。そして我々は禁術を発動し、死に絶えるはずが人化の術によってか、人間となり一命を取り留めた」
「それは、ネルディアス大陸の竜神はマスターを操った敵なのか・・・それとも、我々に人化の術を放った正体なのか・・・そういうことですか?」
ジュライが言う。
「我々の力を封じ、完全なまでの人間にした力。そして、精神的にはもろいとはいえ、神の名を持つマスターを操るほどの巨大な力。どちらを使っても、その消耗があまりにも激しいはずだ」
「エクセル様にはお話しましたが・・・あのクロードさんがネルディアス大陸の竜神に接触をしたと。そのとき竜神が言うには、マスターの暴走を止めようとして使った力のせいで今も眠りについているとのことです。もし、それが本当ならば我々に人化の術を施したのは」
「それがネルディアスの竜神だ」
セルディアにエクセルが続ける。
「ネルディアスの竜神が我々に術を・・・その術で命を落とさずにすんだのか・・・」
ジュライがつぶやく。
「大陸を守護するにふさわしい巨大な力だが、我々を助けたせいで力を失い、ネルディアス大陸は荒廃している。竜神がクロードさんに接触した理由はわからない・・・だが、彼がそのネルディアスの竜神を助けるキーとなるのだろう。クロードさんが完全な状態になったそのとき、恐らくネルディアスの竜神も目覚める」
「あ、あの・・・どういうことですか?クロードさんはそんな重要な人物なんですか?」
すぐそばにいたディクスがそこまで関係している事実にクォートが驚く。
「まだ貴方には話してなかったわね。クロードさんは重要な鍵を握る人物なの。その鍵が一体なんなのか分からないのだけれど」
ライアが言う。
「旅の途中にネルディアス大陸の竜神が接触を図ったの。それでこういい残した"完全な状態に戻ったそのとき、助けてくれ、力を貸してくれ"と・・・」
「ただ、クロードさんの出身は最後に破壊された町、ディスティールだっていうから・・・恐らくそれが関係していると思うの。それでも不十分なんだけどね」
ライアに続けたセルディアが苦笑する。
「ただ、クロードさんが完全状態に戻るとは関係無しに、マスターを操ったと思われる敵はいつやってくるかわからない。恐らく今は消耗した力を蓄えているのだろう」
「もしかして、そのためにデルタにセカンダリを預けているのですか?」
クォートが訊く。
「優秀な術者の多いデルタならセカンダリも立派に育つだろうと、ライアの意見だ。全部で四頭。その一頭はクロードさんに預けているんだ」
緊急にセカンダリを用意した。それはつまり、これから起こるであろう争いが、子竜の命を落としかねないということを意味している。
「ボクたちがしっかりしないとディオール大陸が・・・」
「そういうことだ。そのためにも頑張って欲しい。この大陸の存亡は我々子竜にかかっているのだから」
エクセルのその言葉に全員が神妙な面持ちでいうなずいたのだった。


虫の音がやけに耳につく。
エクセルの話の後、クォートは暗い庭園にいた。
「巨大な敵・・・か・・・」
久々に五人が揃ったというのに重い話でクォートはがっかりしていた。
――――――― その力があの方を操ったとしたなら・・・次は一体何を仕掛けてくるんだろう。それに、ネルディアスの竜神はどうしてクロードさんに接触してきたのか。どうしてクロードさんはその器なのか・・・
考えても全く分からない。
「でも、どんな敵でもボクたちは立ち向かわなきゃいけないんだ。ボクたちは大陸を守る守護神に仕える子竜なんだから・・・」
「そうだぞ、クォート」
いつの間にか後ろにいたのか、ジュライが突然声をかけた。
「ジュライさん!」
嬉しそうに言う。ジュライはクォートの隣に座った。
「久しぶりだな」
「本当です!ずっとボクのこと探してくれてたんですよね。有難うございます」
「結局俺が見つけられたわけじゃないんだが・・・悪かったな。遅くなって」
「そんなことありません!人間として生きてきた時も色々学びましたし・・・ただ、全然歳をとらない自分を不安に思ったことはありましたけどね」
そういうとジュライが笑った。
「そうだな。人間と竜じゃ時間軸が違いすぎる。そして、人間の姿では同じ時間枠に生きることは出来ない・・・」
「いずれは離れなきゃいけないんですよね、ここを。ボクたちは子竜だから」
「それが俺たちの使命だからな・・・ディオール大陸が安泰ならそれでいいんだ」
「ジュライさん、ボクは子竜としてここにいなくてもいいんですか?ライアさんも今デルタにいるとかって・・・」
「ああ、大丈夫だ。今のところたいした災害もないし。あっても、俺とセルディアの二人で対応してるから。クォートはデルタで今までのように暮らしてもらってもかまわないよ。それにデルタにはセカンダリや、竜神の血を継ぐものもいるから」
竜神の血を継ぐもの・・・つまり、エンドレスの王族だ。王族は子竜が敬意を払う存在の一つである。
「わかりました。ボクはデルタでやるべきことをやっておきます。争いが起きたとき、今のセカンダリを子竜にしなくても済むように・・・・・・」
―――――― 俺も力を蓄えておくよ。敵にディオール大陸は絶対に渡さない・・・っ!」
十三年前の全ての元凶。守護神をおいやったであろう巨大な敵。
その敵にディオール大陸を飲み込まれるわけにはいかないと、ジュライは決意するように固くこぶしを握った。


「じゅ、ジュライさん!これってどうなってるんですか!?どうして建物がこんなに高速に移動してるんですか!?」
ビルの間を縫っているエアーカプセルに乗ったクォートはかなり興奮していた。高速で流れる外の景色に目を丸くしている。
「建物が移動してるんじゃなくて、俺たちの乗ってるこれが移動してるんだぞ」
ジュライが笑う。それくらいクォートは真剣に外を見ていた。
昨日の今日。エルダスについた二日目。クォートはエクセルの勧めで観光と決め込んでいた。
「これってリディア大陸の技術ですよね!?すごいですーっ!」
「リディア大陸の竜神は全く力を使わないとは聞いていたが・・・人間がこんなすごいものを作ってるならわざわざ手だしする必要もないんだろうな」
がたんっ
エアーカプセルが停車する。
「クォート、降りるぞ」
「はい!」
ジュライに続いてクォートもエアーカプセルをおりた。
「はーっ・・・」
クォートが空を見上げる。デルタなら・・・いや、このエルダス以外なら空をさえぎるものはない。しかしここは新都エルダス。他では見られないたくさんの高層のビルが競うように空のキャンパスを切り取っている。
「これって・・・風で倒れないんでしょうか・・・?」
ぽかっと口を開けたまま空を見上げている。
「・・・・・・風で倒れてたらとっくに無くなってるよ。クォート、そんなところでたってたらひかれるよ」
人通りの多い場所で立っているクォートをひっぱってジュライは歩き出した。
見慣れないスーツに身を包んでいる人々。そして、幅の広い道路を行きかうたくさんのエレカー。昨日と同じく、エルダスは不思議で満ちていた。
「ジュライさんっ!あれっ!!!」
「えっ?」
歩いている途中、クォートが上のほうを指差している。
その先にはビルに埋め込まれた巨大スクリーン。鮮やかな色合いで様々なCMを流している。
「なんですか、あれ・・・?」
「ああ、アレはスクリーンって言って・・・巨大なテレビみたいなものだ」
「てれび・・・?」
聞きなれない単語にクォートが訊く。するとジュライは困惑した表情を見せた。
「TeleVision。視覚的に情報を発信する箱だと思ってくれれば良いよ」
「箱・・・」
ジュライ自身、テレビをどう説明して良いものか分からず、適当に説明する。クォートはますますわからなくなったらしく、腕を組んでうつむいてしまった。
クォートらしいとは思いつつも、ジュライは呆れ顔だ。
「クォート、このエルダスはそういう場所だって思えば何も不思議はないよ。考え込んでも分からないんだから」
「そうなんですけど・・・けど、あまりにも他と違いすぎて。ただただすごいとしか言いようがないです」
それからしばらく歩き、二人は白い大きな建物にたどり着いた。清潔感のあるその建物の入り口に立つ。
「ジュライさん、見せたいものってここですか?」
「そうだよ。すごい医者になりたいんだろう?だったらここはその技術の最先端だ」
「最先端?」
シャッ
自動ドアを潜り抜ける。その先には多くの人が行きかっていた。松葉杖をついているものもいれば自動車椅子で行き来しているものもいた。
「あの、ジュライさんもしかしてここって・・・」
「そうだ、エルダスの病院だよ」
「病院っ!?こんなに大きな建物がっ!?」
大きな声を出してしまい、ジュライに注意される。
「すみません・・・でも、すごいですね。こんなに大きな病院・・・」
「エンドレスでも総合病院は珍しいからね。実はここに知り合いがいてね。彼女ならいろいろと見せてくれるはずだよ」
そして歩き出した。やがてある一室に入る。
「こんにちは、ジュライです」
「・・・・・・ちょっとまってて!」
仕切りの向こうから女の声がする。ばたばたと何かを整理する音がし、しばらくして顔を見せた。
「ごめんなさいね!ちょっとカルテが散らかってて・・・今整理したから大丈夫よ」
黒髪の女性は白衣に身を包み、微笑みながらそういった。
「クォート、彼女はこの病院に勤務しているサヤカだ」
「初めまして、クォート君!話はジュライから聞いたわ。将来はドクターになりたいんでしょう?」
そういうとクォートはうなずいた。
「今のエンドレスじゃ、まだ術に頼ってるところがあるけど、この病院はそれを必要としない科学技術を利用した医療を行っているの。ほんの一部しか見せられないけど、参考になったら幸いだわ」
そして彼らを仕切りの向こう側に招き入れる。
引き出しから何枚かのレントゲン写真を取り出した。
「さすがに今の患者さんの写真は見せられないから・・・これ、なんだかわかる?光にすかしてみてね」
そういってクォートに写真を渡した。
「・・・もしかしてこれって、胸部ですか?」
「そのとおりよ。エンドレスでもまだ導入は少ないけど、レントゲンって言ってね。人の体がこんな風に見える便利な道具なの。骨の状態や、病気の進行具合を見るときに使うのよ」
「すごい・・・人間の体を写す機械があるなんて!」
驚いたクォートにサヤカは嬉しそうだ。
「現物は見せられないけど、人の頭の断面図をとってくれるような道具もあるのよ。すごく高いんだけどね」
「どうやったらそんな写真を・・・実際に切っているわけじゃないのに」
「そこら辺の技術は私にも分からないんだけど・・・けど、世の中にはそういう技術もあるのよ。便利よね。ほんの数秒で治療してくれる術もすごいけど、限界があるわ。病気は治せないし。そのときにこういった技術が必要になってくるの。この技術でたくさんの人が回復してるんだから」
誇らしげに言う。その話を聞いてクォートは感心している。
「術が使えなくても、治療できるってことですよね」
「ええ、そうよ。全ての人が使えるわけじゃないけど、ちゃんと勉強すれば使えるようになるわ。ただ、高価なのが難点なんだけどね」
それからサヤカは色々と場所を回って紹介してくれた。そのたびにクォートは驚きで一杯だった。
資料としての手術ビデオも見せてくれたのだ。自分が思っていた医療とは全く違うこの世界にただ圧倒されるばかりだった。
「これでおしまいかしら。もうちょっと色々見せたかったんだけど、立ち入り禁止が多くて。患者さんにもストレス与えたらいけないしね」
「いえ、そんなことありません。ボク、今日で視野がもっと広くなったような気がします。有難うございました」
丁寧に頭を下げる。
「いいのよ。私も貴方みたいに熱心な人にあえて嬉しいわ。がんばってね」
「有難うございます!」
そしてサヤカに別れを告げ、待合室にいるジュライのところに戻った。
「お帰り、どうだった?」
「ええ、すごかったです。知らないことばかりで・・・こんな技術もあるんですね」
「全てはリディア大陸の技術だが。でも、術よりも卓越した部分を多く持つ分、これから普及するのは必至だろうな」
「そうですね・・・この病院では違いましたけど、けど、術を共存できる部分はたくさんあると思います。術を併用することで助かる命だってもっと増えるはずです。そこを認めてもらえればきっと・・・」
――――――― また一つ課題が増えたな」
新たな目的が出来たクォートにジュライが言う。
「それもそうですね!」
「なんかお前は課題が多すぎないか?大丈夫なのか?」
あまりにも目標を持ちすぎたクォートにジュライがたずねる。
「大丈夫です!それだけ頑張れますから。ジュライさん、連れてきてくれて有難うございました」
「少しでも参考になったらそれで良いよ」
そういってジュライは笑った。
それから日は経ち、いよいよ明日、クォートは住み慣れた国へと帰るのだ。
布団にもぐりながらエルダスの出来事を思い返す。一日目の重い話を除けばあとは気楽なものだった。毎日町に出ては驚き、感心していた。
フィルジアやスレイドへの土産話もたくさんだ。
寝付けないとは感じていたものの、連日の疲れでやがてクォートは深い眠りに着いた。


誰もいない暗く、冷たい神殿の中心。フォースが納められているその祭壇。
「我らが主よ、貴方は気づいておられるのか・・・?我々子竜の思いに―――――――
暗闇の中、一筋の光を放つ月に向かってつぶやく。そしてエクセルの頭に蘇る言葉。
"――――――― あの方の目覚めの時は時間の問題だ"
神殿で、エリュトロンプロクスが告げたあの言葉。
"すべてを握る"鍵"がある"
鍵を見つければ彼ら子竜の願いは成就されるという。そしてその鍵は―――――――
「ディクス・クロード・・・貴方は一体何者なのか・・・貴方が我々を導く光なのか・・・?」
誰にも告げていないエリュトロンプロクスの言葉。エクセルはただ一人、答えの見つからない贖罪に問うことしか出来なかったのだった。
暗闇には強すぎる月の光を浴び、エクセルは祈るように目を閉じた。



第1話第3話
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