D.Force The Third Chapter
Force-6
勝利の行方
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ゴゴッドォォォッ 放たれた一撃はまだ調子の戻らないスティングへとまっすぐに突き進む。 「スティングッ!」 たまらずフィオールが声を上げる。そして、大地の怒りがスティングを直撃しようとしたまさにそのとき。 「――――――― リフレクトッ!!」 顔をキッと上げ、スティングが術を放った。 ・・・・・・リフレクト・・・!? 頭で理解するよりも、体で理解したほうが早かった。ディクスの放った一撃が、何か見えない壁に激突し、そして跳ね返ってきたのだ! ドォォォンッ 予想せず、ディクスの放った術はディクスを直撃した。 砕けた大地がぱらぱらとあたりに積もる。跳ね返しの術を使ったスティング。 しかし、その衝撃は大きかったらしい。八割がた跳ね返したといえ、残り二割の衝撃を受けてしまったのだ。精神力を消耗してる中、大きな術の二割は大きすぎる。 足の力が足らず、術を跳ね返すと同時に自分も後ろに飛ばされたのだ。砕けた軟らかい地面でなければ気を失っていたかもしれない。 「っ・・・!」 痛みをこらえ、何とか立ち上がる。ディクスがいた辺りは粉塵でよく見えない。 もし、うまく行ったなら、ディクスは恐らく―――――――― 「はあっ!」 どさっ 大きく息をつき、スティングはその場所に座り込んだ。もう限界だったのだ。 ディクスが放ったあのデルタフォース。あれはアレンジされたものだった。物理的な攻撃力は全くない。だが、精神的なダメージを与えたのだった。 光であるから、一度放てばそれで終わり。しかしディクスは反射率の高い氷のドームを作り、その中でデルタフォースを乱反射させたのだ。物理攻撃だと思っていたスティングはそれ対応のシールドを張った。しかし、精神を衰弱させるような精神攻撃には通用しないもの。まんまとディクスにはめられたのだ。 結果、精神力・・・術力を著しくそがれ、最後の力でリフレクトを発動したのだった。 ガラッ 「くそっ・・・」 不意に声が聞こえる。 スティングははっと顔を上げ、そして向こうを見据えた。 「・・・・・・ディクス・・・ですか・・・」 スティングに自嘲的な笑みがこぼれる。そして、そばに落ちていた自分の剣を支えに、よろめきながら立ち上がった。見れば、埃だらけのディクスがいた。 やはり直撃を受けたらしく、側頭部から血を流していた。他にもたくさんの傷が見受けられる。 「スティング、やられたよ。まさかあんな術を隠し持っているとはな」 「――――――― 最後の足掻きです。これでディクスが倒れてくれればよかったんですが・・・でも、僕には術で攻撃する力は残ってません」 「・・・そうか。ならこれか?」 ディクスは地面に落ちていた剣を拾い上げる。スティングも支えにしていた剣を両手に握り締めた。 「ええ、術力はなくとも、体力勝負ならまだ少しあがけます・・・」 相変わらず笑みを作りながら。 「なら俺もお前に合わせよう」 チャキッ 互いに剣を構える。冷たい空気があたりを支配した。 からんっ 石が転がるその音が合図だった。 ザッ! 二人が同時にその場を離れる。 「早いっ!」 消えたように見えた二人にナチが叫ぶ。いつの間にか二人は近距離で剣をかさねた。 ガキッ 互いの顔がすぐそこにある。 「意外に・・・やるな!」 「お褒めの言葉、有難うございますっ・・・!」 キィン 剣を受け流し、一旦引く。そして再びディクスに切りかかった。 ブワッ ディクスが放った剣圧をかわし、そして剣を振り下ろした。 ガンッ ディクスは剣の柄で何とかそれを防ぐ。ディクスは屈み、スティングが上位になる。スティングの剣がぎりぎりとディクスを圧している。 しかし、ディクスはスティングの足を払った! 「わっ!!」 不意を突かれたスティングは声を上げ、体勢を崩す。それを好機に、ディクスは方手持ちになったスティングの剣の柄を思い切りたたき、その手から離した! ギィンッ 天高い空に、スティングの剣がまぶしく光り、そして大地に突き刺さった。 ―――――― スッ 見上げたスティングののど元に剣の刃先を向ける。誤って前につんのめりでもすれば簡単にのどを切り裂いてしまうだろう。 「ゲームオーバー・・・だな」 「――――――― いえ・・・まだです!」 ザッ! スティングは思い切り地を蹴り、バクテンした。振り上げた足は剣を持つディクスの手をわずかにかすりはしたが、叩き落すまでは行かなかった。 体勢を整える前にかかってきたディクスの剣をかわし、振り返りざまに腰にひじうちを与えた! 「!!」 見事に腰を直撃されたディクスは衝撃で息を呑む。倒れそうになったところで何とか持ち直し、剣を逆手に握り、硬い柄をスティングめがけて勢い良くぶつけた! どっ・・・ 「・・・!!!」 声も出せない。口を開け、何とか空気を取り込もうとぱくぱくさせる。 ずっ・・・ 「っ・・・・・・どうやら・・・あがけるのもここまでの・・・ようですね・・・!」 それは狙い通りスティングの腹を叩き・・・そしてスティングは崩れ落ちるようにして地に伏せた。 「大丈夫・・・?腰さすってあげようか?」 うつぶせに寝ているディクスをナチが心配する。 「別に・・・いいっ!」 一定の間隔で痛む腰にディクスは号泣していた。スティングから受けた衝撃は相当なものだったらしい。 ディクスは戦いが終わってから、腰の痛さに倒れてしまった。そして今も地面に伏したままだった。ナチはその様子を屈みながら見ている。 「ナチュラル!」 エリオスが走ってやってきた。 「クロードさんの様子は・・・?」 伏せているディクスを心配そうに見た。ディクスはエリオスのほうを見ようとしても腰が痛くてそちらのほうを向けず、いらいらしている。 「ええ、大丈夫です。腰が痛いだけみたいですし・・・」 「でも頭から血が」 「大丈夫ですよ!ただのかすり傷ですから!ところでスティングの様子は・・・?」 地面に崩れたスティング。その後すぐにフィオールがやってきてスティングを介抱しようと連れて行ってしまった。向こうのほうで手当てを受けているようだ。 「ああ。消耗が激しいだけで特に外傷はないみたいだ。それよりもクロードさんのほうが傷が多いじゃないかと思うんだが・・・」 それほど見た目にぼろぼろのディクスだった。腰の痛みを治そうと、手を回して術をかけたいところだが、手も満足にまわせず治療もままならない。じたばたしているとレクサスがやってきた。 ぐうぅっ・・・ レクサスが心配そうに見ている。そしていつものように鼻でディクスを突いたときだった。 「・・・・・・・馬鹿ッ!!触るなレクサス・・・っ!」 わずかに体を動かされたディクスは苦痛でレクサスを叱咤する。 「仕方ないなぁー、下手だけど治癒の術かけてあげるね」 そういうとディクスの返事も聞かず、腰に思い切り手をあてた。 「ぎゃーっ!!痛いっ!痛いぃっ!!」 「癒しの御手よ!!」 痛がるディクスを無視してナチが術を発動する。腰の辺りが熱を帯びる。 ぎゃーぎゃー痛がっているディクスであったが、時間が経つにつれ、痛みが緩和されていくのが分かった。 ナチの術が効いているらしい。 「よーっし、これでよし!」 ディクスの腰をバシッと叩く。 ディクスは伏せたままで腰の辺りをぺたぺた触っている。手も腰に届くようになったし、触ってももう痛みは感じないようだ。それを確認すると、ひょいっと立ち上がった。 「・・・・・・治ったみたいだな・・・ナチ、お前この術上達したな〜」 腰を回しながら珍しく感心したように言う。するとナチは嬉しそうな顔をした。 「クロードさん、おめでとうございます。やはりスティングでは不足していたようですね」 エリオスが言う。 「・・・そうでもないですよ。いろいろ振り回されましたから・・・さすがはエンドレスの末裔ですね」 そういうとエリオスは苦笑した。 「その器だと良いのですが・・・それでは失礼します。しばらく安静になさってくださいね」 そしてエリオスは向こうに行ってしまった。 ディクスの腕にレクサスが絡んでくる。 「あー、もう大丈夫だよ。さっきは怒ってごめんな。痛かったんだよ」 頭をなでてやりながらそういう。 「でも、スティングなかなか諦めなかったわね。術力がなくなったって時点でもう降参するかと思ったんだけど・・・」 「俺も。意外にしつこかったのが誤算だったんだよなー。剣を突きつけたときは"勝った!"って思ったんだが。その油断で腰に思い切りひじ打ちされて・・・相手が降参するまで気を抜かないって、教訓になったよ」 苦笑いしながらそう言った。ナチもあわせて笑う。 「ねえ、ディクス。頭大丈夫なの?血が出てるけど・・・」 「えっ?あ、ああ・・・。本当だ・・・リフレクトかけられた時だな」 頭を触って手についた血に気づく。 「じゃあじゃあ、ちょっとそこ座って!わたしが治してあげるから!」 心なしか嬉しそうに言う。 「大丈夫なのか・・・?」 「当たり前でしょー?今まで頑張ってきたんだから、ちょっと実験させてよ」 実験台にされたディクスはしぶしぶ地面に座った。 「―――――――― 癒しの御手よ!」 再び治癒の術をかける。ナチの手のひらが光り、ディクスの傷を治癒して行った。 「さんきゅっ」 「こちらこそ実験台になってくれてどうも!」 大きな傷を治したディクスは大きく伸びをした。 「リフレクトかー、あの術すごかったなー。まさか俺のアースブレイクを跳ね返すとは・・・うーん」 腕を組んで考え込む。 やはりスティングを侮っていたようだ。今回はなんとか勝てたが、スティングの本気はすごいことが証明された。 最初の殺気にも似た本気は伊達ではなかったようだ。 「とりあえずおめでとっ!これでマスターの称号、取得できるわね」 「そう言えばそうだな。すっかり忘れてたよ」 二人でのんびり話している時だ。アルバートが二人を呼んだ。 「クロードさん、やはり貴方の術力、そして使い方は目を見張るものがありました。残念ながら弟は負けてしまいましたが、いい試合だったと思います」 そういって右手を差し出した。ディクスは血のついた右手を服で乱暴にぬぐうと、がしっと握り返す。 「私もそう思います。油断していたらこっちが負けるところでした」 そしてスティングに目をやる。アクオスの背中に寝かされいるスティングだが、服と髪が乱れている程度で、大丈夫なようだった。 穏やかに目を閉じて眠っている。 「クロードさん。特例は貴方にマスターの称号を与えましょう。後日、その式典を執り行います。他の新たなマスターの称号取得者と同じですが・・・構いませんか?」 「ええ、もちろんです。楽しみにしています」 「ナチュラルさんの取得については、クロードさんが決めてください。私に言って下されば結構です」 「わかりました」 了解してうなずく。するとアルバートは軽く礼をし、スティングのいるアクオスのそばに寄った。 「それでは引き上げよう。フィオールはスティングを部屋に連れて行ってあげなさい。エリオス、お前はそのサポートだ。私はこの演習場を片付けよう」 「わかりました、兄上。クロードさん、私久々に興奮してしまいました。スティングは負けてしまったけれど、素晴らしい戦いでした。スティングも学んだことが多かったでしょう。有難うございます」 「いえ、こちらこそ」 頭を下げたフィオールにディクスも下げる。 「では、姉上。行きましょう。それでは、また」 エリオスに促され、アクオスとエデンが立ち上がる。そしてフィオールとエリオスの後に続いて宮殿に向かっていってしまった。 「クロードさんも休まれたほうが良いでしょう。もし何かあれば使いのものを出しますが」 「いえ、構いません。妹がいますから。お気遣い有難うございます」 「じゃあ、ディクス、館に帰る?」 ナチが訊くとディクスはうなずいた。 「それでは失礼します」 「ええ、次は式典で会いましょう」 演習場にアルバートを残し、ディクスとナチと二頭のセカンダリは館に戻ったのだった。 シャワーも浴び、気分すっきりのディクス。その後、昼過ぎまで仮眠していたが、目を覚ますと同時にラフな服の上に、愛用エプロンを着用した。 「ディクス・・・なにするつもり・・・?」 セカンダリの相手をしていたナチが不審そうにディクスを見る。 「何って・・・見れば分かるだろ?料理するんだよ」 さも当然のように言うディクス。ナチはため息をついた。 「それはそうだけど・・・でも、さっき戦ったんだよ?体力回復したの?」 「回復してないけど・・・けど、俺のオアシスは料理だからな。動けるなら寝てるよりも料理してたほうがマシ!別に術も使わないしな」 そして厨房の向こうに消えてしまった。 ―――――― あっ、そうだ!ディクスが料理するなら・・・ 思い立つと、セカンダリを押さえて厨房に駆け込む。 「ねえ、ディクス!料理するんでしょ?」 「えっ?まあ、料理って言うか、ケーキ作ろうかなって・・・。まだ昼過ぎたくらいだし、外で食べたら気持ちよさそうだからさ」 「じゃあさ、あれ作らない?」 「あれ?」 「ほら、ディクスの大切な赤い本のやつ!」 ナチは嬉しそうに提案した。 「うふふっ、なんだか最近弟たちのお世話が出来て嬉しいわ〜」 スティングのベッドの隣の台に花を生けながらフィオールが嬉しそうに言う。 「そ、そうですか・・・?」 「そうよー。今まで貴方達の役に立たないかしらって探してたのだけれどなかなか機会がなくて。不謹慎だけど、こんな機会が出来て嬉しいのよ」 鼻歌を歌いながら言う。相当嬉しいらしい。 スティングは苦笑いしながら窓の外を見た。外はもう夕暮れだった。 「ねえ、スティング」 「はい?」 「最近エリオス変わったと思わない?」 花を生け終わったフィオールはそばの椅子に腰をかけた。 「姉上もそう思います?」 「ええ、もちろんよ。あの子つい最近まで私たちのこと避けてたのにね。話すことはなくても一緒にいられるってこんなにも嬉しいことなのね」 ふふっと笑う。 「なんだかわだかまりが解けたようで、とても嬉しいの。今まで失われてた絆が取り戻せたような気がして・・・」 「そうですね・・・」 「兄上もそういってるのよ。このまま平穏が続けば良いわね」 フィオールにスティングは笑みで返した。 「スティング、私は一度部屋に戻るわ。多分イリアスが待っていると思うの。心配させてはいけないから」 「すみません、迷惑をかけてしまって」 ベッドから降りようとしたスティングをフィオールが止める。 「安静にしててね。多分今日はもう来れないと思うけど、でも、何かあったらすぐに呼ぶのよ?私も兄上も、エリオスもすぐに駆けつけるから」 「有難うございます」 「じゃあね、また明日!」 明るくそういうと、フィオールは部屋を去った。 一人になったスティング。手が自然と腹を押さえる。 ぐぅぅっ・・・ ――――――――― お腹すいた・・・ 一人だが顔を赤らめる。思えば朝食を食べたきり何も口にしていない。 激しい戦いの後ならなおさら。 迷惑をかけるのをためらい、結局遅い夕食の時間まで我慢しようと決心した時だった。 「スティングーッ!」 扉を叩く音。そしてナチの声が聞こえた。 「起きてるかーっ?」 ディクスもいるようだ。スティングは立ち上がり、扉を開けた。 「ディクス、ナチ・・・」 「良かった起きてたのねー。寝てたらどうしようかと思っちゃった」 「お前、寝てても叩いて起こすって言ってただろ・・・」 ディクスの突っ込みを無視し、ナチは続けた。 「はい、これ!約束どおり」 そして大きな包みをスティングに手渡した。 「え、なんですか?」 包みを手に取ろうとした瞬間。今のスティングには可哀想なくらいのおいしそうな香りが立ち込める。 ぐうううううっ 先ほどよりも大きな腹の音が三人の耳に届く。ディクスもナチもきょとんとしてスティングを見ている。 「ははっ・・・朝食べてから何も口にしてなくて・・・正直、限界なんです・・・」 と、かなり恥ずかしそうだ。 「ほんと?ちょうど良かった!チュウカ料理作ってみたの。この前よりもレパートリー増えてるのよ。それに出来立てをすぐに持ってきたから鮮度抜群!」 「ほ、本当ですかっ!?僕すごく楽しみにしてたんです。それに今すごくお腹すいてますし・・・今すぐ食べて構いませんかっ!?」 ナチが持っている包みをがしっとつかむ。何故だか鬼気迫るスティングに二人ともうなずく。 「う、うん!是非是非食べて!」 三人はソファに座る。 スティングは大急ぎで包みを解いた。それと同時にさらにおいしそうな香りがスティングを襲った。 「はああ・・・僕は幸せ者です」 目の前の数々の料理を前にスティングは感激している。 「はい、お皿とお箸」 ナチから皿と箸を受け取る。それらをしっかりと受け取る。 「じゃあ、頂きます!」 嬉しそうに言い、まずはえびシュウマイを箸に取った。受け皿に乗せるのももどかしく、はふっと口に入れる。 ナチの言ったとおり鮮度抜群。出来立ての美味しさが口の中に広がる。えびの旨みと、具のジューシーさがたまらない一品だ。 幸せそうに食べているスティングをディクスとナチが凝視する。批評を待っているのだ。 ごくんっ 十分味わってから飲み込む。 「―――――― 最高です・・・!」 親指を立てて表現したスティングにディクスとナチは互いの手のひらを叩いて喜んだ。 「そうでしょ、そうでしょー?この前のも結構いけると思ったんだけど、今回のも美味しいのよ」 「ま、今回は俺も手を加えたからな〜」 自慢げに言うディクス。彼も今回の料理に満足しているらしい。そして手で料理の一つをつまんで口に入れた。 「うん、やっぱりすぐに持ってきて正解だった!蒸し料理は冷えたら皮が硬くなるからな。かといって蓋してたらふやけるしな」 「あ、ずるい!じゃあ、わたしも・・・」 ナチも一つつまんで口にほおばり、満足そうな顔をした。 「うーん、やっぱりいけるわ〜。チュウカ料理ってあんまり食べたことなかったけど、美味しいわね」 「そうですねー、エンドレスではいわゆる洋食と呼ばれる料理が多いですから」 次の料理を皿に盛り、口に運ぶ。今まで食べた料理とは一味違う。ピリッと甘辛いエビのチリソースも、なれない食べ物だが、とても美味しい。ディクスとナチに感謝だ。 「だから俺は和食ってやつを良く作るんだよな」 「そうそう。肉ばかりじゃ駄目だって。焼き魚とか、きんぴらごぼうとか、味噌汁とか。ディクスの煮物美味しいんだよ。もう、お袋もびっくりってくらい!」 ナチが取ろうとした餃子をディクスが横からさっと取り上げる。皿に置いたその餃子をナチはすかさず箸でつかんで口に入れた。 ディクスは不服そうだ。 「きんぴ・・・なんでしたっけ?」 訊きなれない言葉にスティングが訊くと二人とも驚いた表情を見せた。 「スティング、もしかしてご飯のお供、きんぴらごぼうを知らんのか!?」 「ご飯のお供なんですか・・・?」 ディクスは力強くうなずき、ナチは軽く首をかしげた。 「お供かどうかは別として、味は結構濃いからご飯が良く合うの。しゃきしゃきしてて美味しいんだよ」 言いながら、ディクスが取ろうとしたマーボーナスをすかさず取り上げ、食べた。取り返せず、ディクスはしぶしぶ別のナスをはさむ。 「・・・・・・そういうことだ。ぴりっとしててな。甘辛くて・・・そこが最高に美味いんだぞ〜」 ディクスもナチも食べたことのないスティングを哀れむように言う。 「・・・そうなんですか・・・」 スティングが微妙にかげる。 「作ってあげたいところだけど・・・でも、これはディクスのほうが断然美味しいから。ディクス、今度作ってね」 「んー、はひゃった」 大きな肉まんを口に突っ込んだディクスは"わかった"と、了解した。 「なんだか二人がそばにいるだけで何でも揃う高級料理店にいるみたいですよ」 「それは違うっ!!」 肉まんを慌てて飲み込み、立ち上がってスティングに箸を突きつける。 「俺の作る料理は高級料理店並み・・・いや、それ以上に美味かったとしても、低コストでボリューム満点が売りなんだ!!」 言い切ると、餃子を一つ箸でつまんで天に掲げる。 「・・・・・・これに使ってるニラだって、俺がベランダで大切に育てたやつなんだ・・・!」 どうしてだかスティングにはディクスが輝いて見えた。背後の夕日のせいだろうか。 「というより、料理は好きだけどお金は掛けたくないだけだけどね」 無視してナチが突っ込む。しばらくディクスはそのままのポーズで、そして再び椅子に座った。 「――――――― 素晴らしいです・・・!」 しかしスティングはディクスのポリシーに感激している。今朝の試合の影響が相当だったのか、まだ回復には至っていないらしい。 「分かるかスティング!さあ、どんどん食え!遠慮するな!」 「ええ、頂きます!」 勝手に感動している二人はディクスの料理のすばらしさに号泣しながらつぎつぎと料理を平らげていったのだった。 |