D.Force The Third Chapter
Force-9
父と子
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「ち、父上っっ!!!」 スティングの声が裏返る。まさか今の話が聞かれていたのではないかと、スティングは青ざめている。ディクスも同じだ。驚愕の表情を張り付かせたまま固まっている。 「久しぶりだな、スティング。かれこれ半年振りかな?同じ場所に住んでてこうも顔を合わせない親子も私たちくらいだな」 とかいって笑った。 「どうしたのか?そんなに私の登場に驚いたのか?たかが肩を叩いたくらいで・・・オーバーリアクションだな。まあ、若い証拠だろうが」 一人納得しているが、スティングとディクスは納得いかないことばかりだ。 国王は真実を知っているのか・・・?スティングが女装をして宮殿を抜け出したことを知っているのか・・・? 「ひ、久しぶりですね・・・お元気そうで何よりです・・・」 無理やりな笑みのスティングが口元を引きつらせて言う。 「・・・・・・それが父親に対する言葉か・・・いつからお前と私の間に深い溝が出来たのか・・・」 そして目頭を押さえた。 スティング!ほら訊けよ!お前だって知りたいだろ?旅の事知ってるのか知らないのか! ええ!?嫌ですよ!そんなこと自分から訊けません! ディクスが小声でスティングに言うと不満そうな答えが返ってきた。 だからって、俺みたいな他人が口挟むようなことじゃないだろ!ここで訊かなきゃお前一生気になって眠れないぞ! 「・・・・・・やはり、ディクスとスティングは仲がいいみたいだな。前々からわかってはいたが・・・」 いいあっている二人を見て国王はぽつっと言った。 『へっ?』 二人の声がはもる。 「スティング。お前が私のことを把握していなくても、私は生まれた時からお前のことを把握しているぞ」 自信ありげに言った。 「父上・・・それって・・・」 「もちろんだ!お前がどうやってこの宮殿をぬけだして、再び戻ってきたのか・・・特例でディクスに腹を叩かれて負けたの知っているぞ」 当たり前のように言った国王。 スティングはまさかの事態に顔面蒼白だ。国王は知っていたのだ、スティングの所業の全てを・・・ 「隅から隅までとはいかんが、大体はわかっている。アーネスの情報収集量はエンドレス随一だからな」 「咎めないのですか・・・?」 スティングがようやく口を開く。すると国王は困惑した表情を見せた。 「なぜ怒らねばならないのだ?可愛い子には旅をさせろというだろう?それに私もお前くらいの時に宮殿を抜け出した経験があるのだ。ま、すぐに捕まったがな。これからのエンドレスを担う者、こんな狭い宮殿にはとどまってはいかんのだ。お前の好奇心も私譲りだろう。血は争えんからな」 そして酒を飲んだ。 「父上・・・」 「――――――― 私も反省しているのだよ・・・お前を縛りつけたこと。だから、これからでも自由に生きて欲しいと思うのは私のせめてもの償いだ。まあ、私が倒れて王位継承権が継がれるまでだが」 照れくさそうに言うと人ごみにまぎれてどこかに行ってしまった。 「良かったな」 肩を叩いたディクスにスティングは嬉しそうにうなずいた。 「やっぱり、カエルの子はカエルだな。子供のお前がそういう性格なのに、父親が厳格なわけないよ。それに国王だって言ってたじゃないか、血は争えないって」 「それもそうですね」 苦笑する。 思わぬところで父親の本心にふれられたものだと思う。そして自分が持っていた父親に対するイメージが全くではないものの間違っていたことにようやく気づくことができた。 何故だか嬉しくて思わず笑みがこぼれる。 「そういやナチのやつはどこにいったんだ?」 すぐそばで話を聞いていると思っていたが、気がつけばいなくなっていた。話にくわえてもらえなくてすねてしまったのだろうか。 「さっきまではすぐそこにいたと思ったんですけど・・・」 背を伸ばして人だかりの向こうを見る。男ばかりなせいか、ドレス姿のナチをすぐに発見することが出来た。 一人で料理をつまんでいると思ったが、誰かと話をしているらしい。楽しそうにしている様子が伺えた。 「あっちのテーブルにいるみたいですよ」 別の方向を見ていたディクスの肩を叩く。言われたディクスはナチのいる方向へ目を向けた。 「ほんとだ。しかもあれって、エリオスさんじゃないか?」 ディクスも同じように背を伸ばして見ている。スティングの角度からは見えないが、ディクスは見えているらしい。 「エリオスですか?」 「ああ、お前からじゃ見えないのか。一緒にいるよ、楽しそうに話してるけど」 背伸びしながらその様子を伝える。スティングも再び背伸びをするが、どうもそこからでは見えない。 「気になるか?」 ディクスがスティングをひじでつつく。スティングは顔を赤らめて否定した。 「ち、違います。・・・ただ、エリオスが変わったなって・・・改めて実感しただけですよ。最近僕とでも普通に話してくれますし」 「この前もそんなこと言ってたな。原因はナチだろ?」 「――――――― ええ、そう思います。ナチには本当に感謝しています」 そして赤いワインを一口飲む。 「あんまり放置しておくとエリオスさんにナチ取られるぞ」 「ぶはっ!!!」 ディクスの着ている服が黒でよかったと思う。スティングの噴出したワインが見事にディクスの上着にかかったのだ。しかし黒い生地であるためにそうは目立たない。 いきなり噴出したスティングに周囲は何事かと目を向けている。 「言っている意味が分かりません!僕はナチをそういう人だと見てませんよ!」 咳き込みながら慌てて言う。 「ほぉう〜。俺の妹じゃ不満ってか?」 スティングのあごに手をかけてディクスがすごむ。 「ち、違います!そういう意味じゃ・・・」 「確かにアイツはがさつで、胸がない割に横幅が広くて優しい兄上をけなしてて、男勝りで・・・」 「ディ、ディクス・・・」 つぶやいたスティングの顔が青ざめる。スティングはディクスの後方を見ている。 そして目でディクスにその事を伝えようとしたが、しかし、ディクスは続けた。 「・・・良い所ないけど、それでも俺の妹だぞ!」 「へえ、誰ががさつで胸がない割に横幅が広くて・・・だって?」 ディクスの背後から上がった声。肩を叩かれ、ディクスは固まった。 それを好機にスティングは慌ててその場を離れる。スティングのアイコンタクトも意味を成さなかったようだ・・・。 「誰が優しい兄上で、がさつな妹なのかしら?」 「・・・・・・・・」 怖くて振り返ることもできない。振り返れば妹、ナチがいるのだ。 「誰が優しい兄上でがさつな妹なの?」 もう一度ナチがきく。さっきよりもわずかに声に凄みがましているのは長年連れ添った兄しかわからない。 「だ・れ・な・の?」 「と、隣のお魚屋さん・・・!」 ナチの三度目の問いにディクスはそうつぶやいた。"隣のお魚屋さん"と・・・。 「・・・そう、隣のお魚屋さん・・・」 ナチの声のトーンがさっきよりも一気に低くなる。ディクスは背後にものすごい殺気と怒りを感じてしょうがなかった。 もしこのまま口を閉ざせば服と同じように体まで真っ黒になるかもしれない。 さっきからナチの手が置かれている肩がぴりぴりしているのだ。 「ゴメンナサイ・・・」 泣きそうな声でディクスはつぶやいた。 するとナチはようやくディクスの肩から手を放した。そしてディクスはおそるおそる振り返った。 「最初からそういえばいいのに〜隣のお魚屋さんって、そんなこと言ってると、今度わたしがディクスをまな板の鯉にしちゃうよ〜」 ナチはディクスの手の甲をぎゅーっとつまみながら満面の笑みで言った。 その様子をスティングが、そしてナチの後ろにいたエリオスが顔を強張らせて見ている。 「エリオス・・・」 「?あ、ああ、スティングか。この酒うまいぞ。北エンドレス産のブドウを使った高級酒だ」 エリオスが手に持っているグラスを掲げる。 「やっぱりそうだったんだ。味わいがいつものと違うからもしかしてとは思っていたけど・・・北エンドレスで取れるブドウは数が少なくてなかなか飲めないから今のうちに飲んでおこう」 そして近くのテーブルにおいてあったそのワインのビンを手に取る。 「私にももう一杯・・・」 そして二人は極上のワインを飲んで幸せそうに息をついた。そしてさらにもう一杯。ディクスとナチのもめごとから我関せずと強調するように・・・。 「うむ。やはり美味いな・・・今度北エンドレスに行ったときにでも持って帰っておこう」 「だったら僕にも一本分けてくれないか?」 「余ってたらな」 エリオスは少しばかり顔を赤らめて答えた。その様子を見て、スティングがふとあることを思い出す。 そう言えばエリオスのやつ・・・ じーっとエリオスを眺めるが、構わず酒を進めている。そのたびに顔の赤みが増しているような気がする。 「エリオス」 「・・・なんだ?」 ぱっとスティングのほうを振りかえったエリオスの顔はかなり眠そうだった。 「僕の記憶が正しければだけど、エリオスは酒にものすごく弱いんじゃなかったっけ?」 何杯目か覚えていない。エリオスがなみなみと注がれたグラスに口をつけようとした時、スティングが思い出したようにいった。 しかしエリオスはそのままワインを飲み干した。 「ふっ、そんなの知れた・・・」 バタンッ!! ふっと笑ってかっこよく言おうとしたエリオスは仰向けに倒れたのだ。運良くグラスの中身はカラではあったが、周囲は大騒ぎだ。 エリオスが酒にものすごく弱いという事実を知るものは少ない。その中で倒れたエリオスを見て周囲は一時パニックになったのだ。誰かが酒に毒を混ぜた!・・・と。 「エリオスさんお酒弱かったんだ・・・」 エリオスが倒れて、医務室に運ばれる様子の一部始終を見ていたナチが驚いたように言う。 「お前が強いからてっきりエリオスさんも強いものだと思っていたのに・・・」 と、ディクス。 「ええ・・・。兄上も姉上も僕もお酒には強いんですけど、エリオスだけは母親の遺伝を受け継いでしまったようで、お酒にはすごく弱いんです・・・。お酒自体は好きみたいなんですけど、体がついていかないようで」 がばがば飲んでいたエリオスにストップをかけ忘れたことを悔やみつつ、スティングがそういった。 運ばれていくエリオスを見て国王も、 「酒豪も私に似ればよかったのだが・・・」 と、つぶやいていたのだ。 「遺伝ってあてになんないんだね」 「ええ、そうですね・・・」 再び元の活気が戻った会場でスティングはそうつぶやいた。 「ふぅ・・・」 雑多から解放されたスティング。ディクスとナチもだいぶ前に館に帰り、スティングは一人宮殿内の中庭にいた。 通常はほとんど飾りと化しているテーブルに着くと、どこから持ってきたのか、あのワインのビンを手に、一人で酒を飲み始めた。 「今日は・・・やけに静かに感じる・・・」 ぽつっとつぶやくようにいう。 称号の式典が相当騒がしかったギャップのせいかもしれない。周囲は暗いが、生み出した光球の光を受けて、目の前のワイングラスがきらきらと照らし出されている。 ―――――― お前が私のことを把握していなくても、私は生まれた時からお前のことを把握しているぞ 国王である父が口にした言葉。その一つ一つがやけに耳に響く。 ―――――― 私も反省しているのだよ・・・お前を縛りつけたこと。だから、これからでも自由に生きて欲しいと思うのは私のせめてもの償いだ・・・ 「そんなこと、僕は全然思っていないのに・・・」 ワイングラスに口をつけ、つけただけでテーブルに置いた。 父親と距離を感じていたのは事実だ。そしてそこから遠隔操作するように教育を押し付けてきた父親。 そう思えば正直、今でも腹立たしい。 「でも・・・それは国王としての立場があったからだ。僕はそれに応えなくてはならない。 僕だってそれをわかっているから・・・だから――――― 今まで頑張ってきたんだ」 この国の将来を担う者だから・・・ なんとなく空を見上げる。もう月は落ちてしまったのか、昇る途中なのか、はたまた新月なのか・・・空は暗い色をたたえたままだ。 この季節、中庭にいるのは寒さを感じずにはいられなかったが、式典中に飲んだ酒のおかげで寒さを感じることはなかった。 グラスに注がれた緋色の液体を見つめる。せっかくの極上のワインを持ってきたのに、グラスの半分しか口をつけていない。 「・・・もう、やめよう。今日は父上の本音を聞けただけでも良かったし」 言いながらグラスとワインを片付けて部屋に帰ろうとした時だ。 「珍しいな、お前がこんなところにいるなんて」 はっとして振り返ると、そこには国王がいた。驚きの表情のスティングをもの珍しそうに見ている。 「おお!そのワインは北エンドレスのぶどう酒だな!私にも一杯くれないか?」 スティングが手に持っている瓶を見て、国王は嬉しそうだ。スティングの返事も聞かずに、ビンを取ると自分のグラスにワインを注いだ。 「えっ・・・」 「うむ?あ、ああ、このグラスか・・・いわゆるマイグラスってやつだ!」 何故こんなところにグラスを・・・?というスティングの視線に戸惑い気味に言う。 「―――――― たまには息子が飲んでる姿を眺めててもいいだろうが。私もすぐ退散する予定だったがな、私の酒好きの気質がそのワインに誘惑されたというわけだ」 ・・・・・・つまり、国王は影からスティングの様子を伺っていたらしい。そしてスティングが持っていたワインの瓶を見て、自分もその仲間に入れて欲しいと思ってグラスをわざわざ持ってきたのだろう。 「父上・・・」 国王がスティングが先ほど座っていた席の向かいに腰をかける。そんな国王にスティングはどう反応して良いのか分からないらしい。ずっと立ったままだ。 「お前も座りなさい。たまには・・・というか、初めてだが、こうやって月夜の下で酒を交わすのも風流じゃないか」 「父上、今日は月が出ていません」 言った国王にスティングが冷静に突っ込む。思わず夜空を見て確認する国王。そして頭をかいた。 「そういうこともあるさ。さあさあ!月は良いから飲むぞ!ほれほれ!」 そういうとスティングの手からグラスをもぎ取り、なみなみとワインを注いだ。 「・・・・・・」 結局スティングは再び席に着くこととなった。 「旅は・・・楽しかったか?」 いきなりな質問に度肝を抜かれるも、スティングはうなずいた。 「何か・・・良いことあったか?」 「色々ありますが・・・ラグーンに行ったこととか、アウローラに会ったこととか・・・」 「ほうっ!あの南の島ラグーンか!あそこは一度視察してみたいのだが・・・まあ、いずれ検討しよう。それにアウローラとはあの虹のうろこを持つといわれるドラゴンのことか?」 「ええ、ひょんなことから知り合いに・・・」 すると国王が驚愕の表情を見せた。 「なんと!アウローラと知り合いとは・・・なかなか刺激的な旅だったみたいだな」 「もちろんです。学んだことも数え切れないくらいでしたし」 「そうか――――― スティング、何がその旅を有意義なものにしたのだ?」 「え・・・?」 一瞬惑う。どうしてその旅が楽しくて、刺激的で、そして学ぶことが多かったのか・・・? 「それは・・・」 「それは"仲間"だろう?」 自分が言おうとしていた言葉を国王がつなぐ。 「お前がこの宮殿から抜け出したのは驚いたが・・・だが、予想してなかったわけではないし、何よりあの二人だったからこそ私は何も言わなかったのだ」 酒を一口飲む。 「私だって見る目はあるつもりだ。あのディクスとナチュラルだからこそ、今まで何も言っては来なかった。だからアーネスをたまに監視につけるだけで、あとはお前の好きなようにやってもらったというわけだ。お前が急に帰ってくる原因が私にあるということには罪を感じたが・・・だが、この国を担うものとしての自覚を持っているお前を見ることが出来て、嬉しかったのも事実だ」 そして目を伏せる。 「あのディクスとナチュラルの影響はスティング、お前だけじゃない。彼らは私たちに大きな力を与えてくれたな・・・」 ――――――― エリオスのことか・・・ スティングが心の中でつぶやく。 「父上・・・一つ良いですか?」 「ん?なんだ?」 「そこまでわかっていて・・・どうしてこの国のシステムを変えようとしないのです?この国にずっととどまっているのは良くないことだと父上も感じているのでしょう?そしてディクスやナチといった本当の仲間が必要だと・・・それなのにどうして・・・」 「この国が・・・エンドレスが長い歴史を歩んできたのは知っているだろう?」 スティングがうなずく。 「今仕えている大臣や宰相といった役職は、その家督が代々受け継いでいる地位だ。つまり、この国を一番知るのは歴代の者・・・そして現在の大臣や宰相、彼らだ。そして彼らの受け継がれている血がエンドレスを支えている。ずっと変わらないことだ。それなのに、彼らが信頼している王が、その制度を崩すといったらどうだ?人によって感じ方は違うかもしれんが・・・私にとってはそれは大事な仲間を切り捨てると同じことなのだよ」 「切り捨てる・・・?」 「そうだ。彼らは彼らなりにこの国のことを考えている。だからこそエンドレスは衰えることなく歴史を歩むことが出来たのだ。お前の言うように制度を変えるのが悪いといっているわけではない。だが、その道が本当に国にとって良いことなのか・・・?そんなリスクを背負ってまで私は彼らを傷つけたくはない。ただ、単純にそれだけだ。 私一人のわがままで皆が傷つくよりも、私一人の我慢で国は安泰なのだ・・・」 そういう国王の目はスティングの眼をまっすぐ見ている。 そして、なんと言葉を返せばいいのか困惑しているスティングに微笑んだ。 「ま、これは私の意見だ。一つの意見だと胸に納めておいてくれればそれで良い」 国王は瓶を持つと、残り少ない自分のグラスに注いだ。 「・・・・・・・」 僕は何も分かっていなかった・・・エンドレスを始め、他国の王位継承候補者達が自由になれないことを不満に思っていた・・・でもそれは単なるわがままだったんだ。そのわがままで困る人たちがいるということを考えずに・・・ 自分の考えの浅はかさにスティングはこぶしを握る。 「スティング、お前は私の大事な息子だ。お前にこの国をゆだねたいと思っている。だが・・・お前は自分の意見を一番に尊重しなさい。それが父親である私からの願いだ」 もう一度笑む。そしてグラスのワインを全て飲み干すと席を立った。 「父上」 「お前は賢い子だ。・・・・・・これからもディクスとナチュラルを大事にな」 そういうと国王は中庭を出て行ってしまった。 国王が言わんとしている事―――――― 自分の立場を考え、なおかつ自分の意見を尊重する・・・ 両立は非常に難しい願いだ。 ―――――― でも、それが歴代のエンドレスの国王が果たしてきたものだったんだろう。父上だって・・・ 縛り付けられた生活の若者が外に出たがらないはずがない。歴代の国王達もそう思ってきたのだろう。しかしそれらを諌めたのはその言葉だった。 代々受け継がれ、そしていよいよスティングに回ってきたのだ。 ・・・・・・別に将来が国王だからって何もかもが縛られているわけじゃない。僕は今まで自分を抑えて何も言わなかったから周囲に流されていただけで・・・それを自分で縛り付けられていると勘違いしていただけだ・・・ "自分の意見を一番に尊重しなさい" 「僕は自分が思っている以上に幸せなのかもしれないな」 今さらだと自分でも思う。 国王と酒を交わしたのはほんの十数分のはずだ。けど何故かスティングは晴れ晴れとした気分でいた。 ・・・今日はいろいろ知らないことがわかった良い一日だったな・・・ 奇想天外な一日ではあったが、スティングの表情は穏やかだ。 テーブルの上の自分のグラスを見れば国王に注がれてから少しも口につけていない。考えれば国王で父親なのに自分は酌もしていないではないか。 「しまった・・・」 滅多になかった機会に、スティングはそれこそ今更に後悔したのだった。 そして、今度は自分から誘ってみようと、そう考えながらグラスのワインを飲み干した。 |