D.Force The Fourth Chapter
Force-4

揺らぐ思い


セルディアをベッドに横たえると、外と遮断するようにカーテンを閉めた。
こんな夜中だ。ライアは最低限の光だけを生み出すと、静かに寝息を立てているセルディアの様子を伺った。
人間の姿のセルディアだが、治療のおかげで生々しい傷はもう見当たらない。
何が・・・何があったの?子竜があんなに傷を受けるなんて・・・
竜の中でも頂点とも言えるべき場所で力を振るう子竜。その子竜が瀕死の傷を受けるなどとは信じがたい事実だった。
セルディアに何があったのか?そして、このエンドレスで起きている竜の大量死は何を意味しているのか?
同じ竜として、この事態はあまりにも残酷すぎた。
そして、同じ竜なのにその原因がわからないもどかしさに苛立ちも覚えていた。
大量死の報告を受けてから何度と無くデルタを離れようと思った。早く原因を突き止めるべきだと、焦燥に駆られていた。
だが、自分には人間としてやるべき事がたくさんあった。ここから離れられない。
その思いが、さらにライアの心を浮つかせていた。
ライアはベッドの端に腰かけ、手の中にあるフォースに目を移した。
「あの方の・・・力の結晶・・・」
ただこうして眺めているだけで、懐かしさ、力強さが伝わってくるような気がする。
それはライアがこの十三年間求めてやまないものだった。
十三年前、あの暴走さえなければこんなに寂しい思いもする事もなかっただろうに。
ずっと、あの方の元で仕える事ができたはずなのに――――――
何気なく時計に目をやる。
既に三時を回っていた。
・・・セルディアの事、王子になんとお伝えしよう・・・?実は仲間の子竜です・・・なんて言えないし
そう考えてため息が出た。
「馬鹿ね、何をため息ついてるの?」
不謹慎な自分に苦笑する。
子竜である自分、人間である自分・・・二面性とも言える立場に、ライアは今までに無い苦しさを覚えた。


自室のドアを叩く音で目が覚めた。
スティングは急いでガウンを引っ掛けると、ドアの向こうに立っていたライアを迎え入れた。
それは凍るような冷たい空気がデルタ中を包んでいる朝だった。
「失礼します」
いつものように一礼し、部屋に入る。
「あの竜は?」
スティングが一番知りたい事を単刀直入に訊く。
一つうなずくと、ライアはスティングの目をまっすぐ見て話し始めた。
「ええ、大丈夫です。先ほど飛び立ちました」
そう、嘘をつく。
「有り難う。それは良かった」
固かったスティングの表情が柔らぐ。
「―――――― ええ、本当に・・・」
「ところで、あの竜はなんという種類だろう?見たことがあるような気がしてならないんだけど・・・」
グリーンの大きな体。全体像は良く見えなかったけれど、見覚えのある風体だった。
「はい・・・。あれは、エアロガイドです」
「エアロガイド・・・!?」
身近にいる竜の名前を聞き、素っ頓狂な声を上げる。
「ナチュラルさんがお世話をしてくださっているあのエアロガイドと同じものです」
「そうか・・・だから既視感があったのか」
ようやく納得できたとでも言うように、スティングは息をついた。
「だとすると、あの竜はエアロガイドの成体ということだろうか」
「はい。現在のセカンダリたちはまだ幼体です。いずれ体の大きな、高位の竜にふさわしい形態に進化します」
「その高位の竜が何故あんな傷を受けていたのか」
その言葉にライアの表情が陰る。
「それは・・・わかりません・・・」
「竜の抗争だろうか・・・。昨日もディオール大陸には珍しい、ゴールドドラゴンらしい竜が傷ついたのが発見されたんだ。その竜はナチが介抱して無事だったらしいんだけど」
「ゴールドドラゴン・・・!?」
上擦ったような声に、ライア自身が驚き、恐縮する。だが、スティングは特に気に留めた様子はないようだった。
窓から差し込むまぶしい日の光に目を細めている。
「何かが変わり始めているのだろうか・・・」
「・・・え?」
「ここ最近変化が著しい。竜の事も、エンドレスの事も・・・そして、僕の周りでも・・・」
逆光に暗いスティングの表情が何か答えを求めていた。
「・・・・・・それは・・・」
スティングは"変化"を恐れている・・・そうライアは感じた。
本来なら主君の期待に副うべき答えを出すべきなのだろう。
だが、ライアは不変なものなど無いと、痛いほどわかっている。
十三年前、仕えてきた竜神の暴走。それはライアの信じていた不変を打ち砕くものだった。
不変など、所詮たわごとにしか過ぎない・・・。
「この世に不変なものはありません。全ては移り変わり、新たな境地を開きます。それがこの世の理であり、唯一絶対的なものです」
自分自身で驚いていた。
ライアの言葉はこれから王位を就く者に、"エンドレスの繁栄も続かない"と言っているようなものだった。
スティングも意表を突かれたのだろう。無防備な表情でライアを見ている。
だが、すぐに表情を戻すと満足気にうなずいた。
「それでこそ僕が信頼している従者だ。そう、変わらないものなんて無いんだ・・・」
自分自身に言い聞かせているような言い方のスティングが意図している所はわからない。
ライアは全てが見透かされたような気がして戸惑った。
「あ、あの・・・王子・・・」
「ん?」
「私はこれから仕事がありますので・・・失礼します」
見え透いた嘘をついたものだと思う。
だが、ライアはその場にとどまる事ができなかった。
「わざわざ有り難う、ライア」
スティングは何も訊く事無く、いつもの調子でそう言った。


後ろめたさを感じつつ、ライアはスティングの部屋を出た。
居心地が悪い―――――― 久々の感情だった。
人間として宮殿にやってきたばかりの時によく感じていた違和感と同じもの。
それを今さら感じるなんて・・・何故・・・?
自分の中に渦巻く違和感を必死に抑えようとするが、決して消える事は無かった。
むしろ意識すればするほど違和感は大きくなる。
「何を考えているの?私の務めは王子に忠実に仕える事・・・」
言い聞かせる自分が悲しかった。
王子以外の事を考えるなんて―――・・・!
その不純な心をスティングに見透かされたような気がした・・・それが居心地の悪さを感じさせたのだろう。
せめて、このデルタに人間としている間はスティングに真に仕えようと誓ったはずだった。それを成し遂げてきたはずだった。
だからこそスティングは自分を信じ、頼ってくれている。それが嬉しいから慣れない環境でもやってこれた。
スティングはライアの支えだった。
それなのに・・・
このもどかしさを仕事のせいに・・・スティングのせいにしてはいけない。
私が選んだ道なのだから・・・
この数年間、ライアにとって不変であったスティングに対する忠心は揺らぎ始めていた。
重い足取りで何度と無く行き交った自室のドアをくぐる。
「お帰りなさい」
ベッドで上体を起こし、セルディアは弱弱しく笑みを浮かべていた。
「セルディア!」
ベッドに駆け寄ると、ライアは心底安心した表情を見せ、セルディアの両頬に手を当てた。
「有り難う、あなたが介抱してくれたのね」
「そんな事は良いわ。傷はもう大丈夫なの?」
「ええ・・・」
「それより、お腹空いていない?エルダスから飛んできたのでしょう?」
小さな棚に手を伸ばし、紅茶の葉の缶を取り出す。
「ねえ、ライア」
「エクセル様はどうしてらっしゃるの?ジュライは元気にしてる?」
「ライア!」
言葉を続けようとするセルディアだが、それをさえぎる様に質問するライアに、強い口調で呼びかけた。
背を向けていたライアの動きが止まる。
「私の話を聞いて」
静かに言うセルディアに、ライアは沈痛な面持ちで振り返る。
「あなたにはショックかもしれない・・・私がここに来た理由も、私が傷を負った理由も」
ライアは無言で歩み寄り、ベッドのすぐそばにある椅子に腰をかけた。
「あの傷・・・竜にやられたのね?」
念を押すような言い方に、セルディアは目を伏せた。
「ゴールドドラゴン?」
ライアの言葉にセルディアが驚きの表情を見せた。
「どうして知っているの?」
「クロードさんに妹がいたのは知っているわよね?そのナチュラルさんが昨日、傷ついたゴールドドラゴンらしき竜を介抱したと言うの。ゴールドドラゴンは私たちにとっても脅威の存在よ。だから、もしかして・・・と」
「その通りよ・・・迂闊ね。ゴールドドラゴンは土を司る種だから、風の私なら簡単だと思った。だけど、あんな傷を負ってしまって」
敗北は屈辱だった。
相手にも瀕死の傷を負わせたが、自分も同じ。闘争本能をむき出しにした竜に引き分けは存在しない。
「それはあっちも同じよ。あなたは頑張ったわ、セルディア」
「でも、残念ね。皮肉にも介抱されたなんて。あの・・・土竜・・・!」
セルディアの握るこぶしに力がこもる。
「そのゴールドドラゴンがなぜこの大陸に?どうしてあなたを襲ったのかしら」
「わからないわ」
心なしか不機嫌そうに答える。
「私のことはいいの。私はあなたに会いに来たのだから」
不意に真顔に戻った。
その表情の変化にライアに緊張が走る。
セルディアがここまでやってきた理由・・・それは――――――
「・・・私を連れ戻すためでしょう?」
問うライアの表情は悲しげだった。
そう、時は来たのだ。
「―――――― 近いうちにね。私はそれを伝えに来たの」
「その理由は、もしかしてディオール大陸で起きている、竜の大量死?」
「それに関することね」
「どういうこと?」
困惑したようなセルディアの表情が真顔になる。ライアを見据え、口を開いた。
「数千年前の戦いが再び起ころうとしている・・・」
「戦い・・・?」
一体何の事かわからず、鸚鵡返しにそう言う。
「竜神の存在によって封じられていたディオライトが何者かに寄生した。ディオライトは破壊を持って再生をうながすもの。宿主の負の感情を利用し、この大陸を破壊に導こうとしている」
「まさか・・・!ディオライトはもはや伝説上の存在ではなかったの?今さら何故?」
ディオライト―――――― それは、数千年前、世界を破壊しようとした神に等しい存在だ。だが、それは三頭の竜によって封じられたのだ。
三頭の竜は三大大陸に散らばり、以後、竜神として、その力を受け継ぐ竜はあがめられている。
破壊により、再生を促すディオライトは、竜族の宿敵なのだ。
「理由はわからないわ。でも、竜の大量死はディオライト復活の予兆。人間の姿の私たちには感じられないけれど、他の竜はそれを敏感に感じ取っているらしいの。それが混乱を招き、特に低位の竜が理性を失い争いを生んでいると言う事。ディオライトは私たちの最大の敵以外の何者でもないわ」
「そんな馬鹿な・・・!それに・・・寄生って・・・」
「人間の精神と、ディオライトと思しき精神とが融合するのをエクセル様が感知したの。つまり、破壊を求める人間の心に、ディオライトは漬け込んだ・・・」
「ならば、エクセル様のおっしゃっていた、ディオール大陸を飲み込もうとしている巨大な力とは・・・ディオライトの事だったの?あの方を、陥れたのも、全て・・・!」
声が荒くなる。
ライアの脳裏に十三年前の出来事が蘇っていた。
荒れ狂う竜神・・・それを止めようとする子竜・・・そして、荒廃した町・・・
あの出来事が全てを狂わせた。そして、その原因は・・・
「全ての元凶がディオライトだと断言はできないけれど、ディオライトの復活に可能性があるのなら、私たちは子竜として務めを果たさねばならないわ」
「最悪のシナリオね・・・」
もし、ディオライトの復活が現実になるのなら、それは世界の破壊を意味する。
この世界には、竜神は二頭しかいないのだから・・・
「この前、あなたがエルダスに来た時は、はっきりと敵の正体はわからなかったけれど、つい最近、それがディオライトである可能性が示唆された・・・」
セルディアは怒りに震えるライアを悲しげな目で見つめた。
「エクセル様は過去に数回、特異な力を感じたとおっしゃってたわ。それがディオライトのものだとしたら、マスターが暴走した理由も、竜の大量死も説明がつく」
確か、ライアが初めてエルダスの神殿を訪れた時だった。エクセルは"大きな力が加わろうとしている"と言っていた。
それは、子竜にも気取られない相当な力の持ち主だとも言っていたのだ。
「何故エクセル様はディオライトだと感づいたのかしら?"気"を知っているって・・・ディオライトははるか昔に倒れたと言うのに」
「エクセル様は竜神の記憶を受け継ぐ唯一の子竜・・・おそらくその記憶から判断したのでしょう。エクセル様はあの方の右腕なのだから」
「そうだったわね・・・エクセル様は次期竜神の候補だから・・・」
ディオライトの復活は新たな竜神の誕生を意味する。そう考え、かつての竜神に心が痛んだ。
「それで、エクセル様はいつ、その気を察知したの?」
「最初の一回は・・・十三年前、あの方が暴走を始めた時。その時、すでにディオライトの復活を予感してらしたと・・・。それから十年は何の音沙汰も無かったけれど、ここ数年で、妙な波動を感知するようになった。それは少しずつ大きくなり・・・三日ほど前、その存在が今までになく強く感じられた」
「三日・・・?」
その日の事を思い出してみる。
確か・・・スティングがエルディストと交えた日・・・
そう言えば、スティングも、その場にいたナチも、エルディストが黒い影に飲み込まれたと言っていたが。
「これはエンドレスの事なのだけれど、三日ほど前に亡国ガイスターと、王子が一戦交える事件があったわ。王子は無事だったのだけれど、その交えた相手、エルディストは黒い塊に飲み込まれて消えたと」
「ガイスター国は確か、エンドレスに圧された国だったわよね。そう・・・そのエルディスト・・・亡国の末裔ならば、生半可な憎悪は持ち合わせていないでしょう。追跡する必要がありそうね」
「私たちの隊もエルディストやガイスターの残党を追っているけれど、何一つ成果が得られないのよ。竜の大量死のことも、そのことも・・・色々解決しないといけない事だらけで、頭がパンクしそう」
「そうね・・・私もよ。まだ悔しいのよね、あの土竜に負けたのが」
本当に屈辱的なのだろう。普段は争いを好まない穏やかなセルディアが殺気立っている。
「もしかしたらそのゴールドドラゴンもディオライトの気に当てられて理性を失っていたのかもしれないわよ。ゴールドドラゴンは実は低位の竜なのかもしれないし」
セルディアをなだめるように言う。
気を使ってくれたライアに、自分がどれだけ感情的になっていたのかを思い、セルディアは恥ずかしくなった。
「と、ところで、クロードさんは?」
もう一つ聞かねばならない事を思い出し、セルディアは話題を変えた。
「特に何も無いようよ。色々トラブルには巻き込まれているようだけど。"完全な状態"ではないようね」
ディクスの完全な状態―――――― それは子竜の希望であった。
真実を知るネルディアス大陸の竜神の手助けとなる唯一の存在なのだ。
「彼は私たちの導き手・・・早く完全な状態を取り戻してもらわなければ・・・」
「フォースでしょう、きっと。全てが見つかれば何かが起こる」
ライアの言葉にセルディアがうなずく。
「ジュライが探しているわ。いつも探し物ばかりで申し訳ないけれど、唯一自由にできるのが彼しかいないから。探し回っては貰っているけど、なかなか見つからなくて」
「ジュライも大変ね」
ジュライの話題になり、ライアの表情がわずかに和らぐ。
「それから、今度デルタに立ち寄るって。クォートが気になるみたいね」
「・・・あの二人は仲が良いもの」
「でも、一番の目的はライアよ。どうしてかしらね。グランドアビスとブレイズロンドの組み合わせは上手くいかないことが多いのにね」
「別にジュライとは何も無いわ」
不服そうにライアがつぶやく。
「これからが楽しみじゃない?」
意地悪そうに言うセルディア。それが何故だかおかしくて、ライアは笑ってしまった。
セルディアにも笑みがこぼれる。
「何故かしら。こんなにも大変なのに笑っちゃって。不謹慎ね」
「たまには息抜きも必要よ、ライア。―――――― あなたには申し訳ないわ・・・何年も寂しい思いをさせて・・・」
すると、ライアの表情が急に暗いものに変わる。
セルディアの目をじっと見つめ、恐る恐る口を開いた。
「セルディア・・・私、早くエルダスに戻りたいの・・・」
「えっ・・・?」
エルダスに戻る事を拒んでいるのだろうと思っていたセルディアが目を丸くする。
「スティング様の事はどうするの?あなたはスティング様の大切な従者でしょう?あなただって誇りに思うって言ってたじゃない」
「今さらだけど・・・スティング王子に私の素性を隠している事が心苦しくて・・・。だけど、王子はそれを見透かしているような気がして怖いの。王子はいつものように振舞ってはくれているけど、内心は私の事を不審に思ってるんじゃないかって、そんな気がして・・・」
「スティング様は何かそれらしいことを言ったの?」
「ここ最近、変化が著しい・・・自分の周りでも・・・と」
スティングのあの言葉がライアを動揺させた。危惧していたことが・・・スティングには知られたくなかった事実がばれてしまったのではないかと恐怖で一杯だった。
「これからも・・・従者としてやっていけるかどうか・・・」
ライアは自信をなくしていた。
スティングに対しても、自分自身に対しても。
「ねえ、ライア・・・」
セルディアがライアの手をとる。
「ここに来てから十年、あなたは何を支えにここまでやってきたの?」
「それは――――――」
「あなたに信頼を寄せ、慈しみ、そして愛してくれた人は誰?」
それは・・・スティング王子のほかならない・・・
私は王子がいたからこそ使役すると言う誇りを忘れずにやってこれた・・・信じること、慈しむ事、そして私自身を失うことはなかった・・・
・・・彼が私に全てを与えてくれた。だからこそ私は今の関係が崩れるのが怖い・・・
「ライア、あなたが近況に気落ちしているのはわかるわ。けれど、簡単に信頼を断とうとしないで。スティング様がライアの本当を知ったからと、あなたを蔑んだりすると思うの?スティング様はそんなにあなたを信じていないの?」
私は信頼を断ちたくなどない。ずっとこのままでいたい・・・けれど・・・!
「スティング様はあなたを疑ってなんかいないわ。そう思わせているのはあなたの心よ、ライア。あなた自身がスティング様を疑っている、隔たりを作ろうとしているのよ」
「そ、そんな事・・・!」
声を上げ、ライアは思わず視線をそらす。
スティングが自分を不審に思っている―――――― それは己の心の不安を隠すための大義名分だった。
本当は、疑っているのは自分なのに・・・
だからこそ、セルディアの的を射た言葉が胸に痛かった。
「大丈夫よ。スティング様とあなたの間には切っても切れない絆がある。信頼に培われた絆が・・・。だから、お願い。悲しい事を言わないで」
「・・・・・・」
「スティング様はあなたの大切な人でしょう?」
すると、ライアは静かに首を縦に下ろした。
「ほら、ちゃんと言葉に出して。思いは声に出してこそ力になるのよ、さあ」
少しはにかんだ表情のライアだが、思いを口にする。
「私、スティング王子の従者でありたい。一番に信頼を寄せてくれる、王子にとって大切な存在になりたいの・・・!スティング王子が私の大切な存在だから・・・」
ライアがそこまで言うと、セルディアは満足そうな笑みを浮かべた。
「その思いを決して忘れないで。思いは必ず力になるわ」
そう言うと手を離した。
「有り難う、セルディア」
セルディアの言葉が嬉しかった。笑みを浮かべる彼女を見て、ライアも笑む。
―――――― スティング王子・・・私はあなたの為にここに在ります。あなただけの為に・・・
心の中で強く思う。
そして、これこそが自分の不変なる願いであると、そう確信したのだった。



第3話 第5話
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