文字の大きさ小 文字の大きさ中 文字の大きさ大 文字の大きさ

Skylove
FirstFlight

第7話 そして、その日はやってきた

「ラグちゃん、そろそろいいんじゃないかしら?」
横でドライブを睨むラグーンにエルビアはそう言った。
ラグーンとエルビア、そして、対面しているドライブの三人はリビングで正座していた。
二人が帰宅してから既に二時間以上経過しているが、ずっとこの状態だ。
「いいえ。ドライブには反省が足りないんです。一体いつになったら成長するのか」
いつもなら反論するドライブも、今日は観念して黙っている。
ラグーンから事情を聞き、エルビアもドライブを説教する事となったのだが、エルビアでさえも許してやりたい気持ちが強くなっていた。
目の前のドライブはそれほどに疲れきっている様子だったのだ。
ピンポーン
呼び鈴が鳴り、エルビアは立ち上がった。
「ちょっと出るから。ラグちゃんそろそろ許してあげてね」
腕を組んで正座するラグーンとドライブを置き、エルビアは玄関に向かう。
「あら、カシスちゃん」
玄関のドアを開けるとカシスが立っていた。
「あの、ドライブとラグーンは・・・」
心配そうに尋ねる様子に、エルビアは少し苦笑してうなずいた。
「そ、お説教中よ。今回はラグちゃんがなかなか許してくれなくてね。延長戦というところかしら。さすがに私も疲れちゃって」
「いいですか?中に入っても」
もちろんエルビアは大歓迎だった。
カシスは"なだめ役"なのだ。
「こんにちは」
リビングのドアを開けると、案の定、二人は床に正座して沈黙していた。
ラグーンはカシスに気付いたが、ドライブは肩を落としてうつむいたままだ。
「カシス、大丈夫ですか?」
ラグーンは立ち上がり、カシスを按じた。カシスは笑顔でうなずいた。
「大した事ないもの。怪我したわけじゃないし。それより――― 」
カシスはバッグから袋を取り出した。
「ちょっとお散歩しない?ジャーキーも持ってきたし・・・この前の埋め合わせってことで」
「ですが、ドライブの事が・・・」
「いーから、いーから!行こう!」
ラグーンの腕を取り、引っ張っていくカシス。ラグーンが出て行ったところで、エルビアはリビングのドアを閉めた。
「ドライブ、大丈夫なの?」
エルビアが聞くと、ドライブは虚ろな目でうなずき、深いため息をついた。
「やることあるでしょう?さっさと準備なさい。だらだらしてると、旅の件は白紙にするわよ」
「うん」
ようやくここでドライブは声を出した。
エルビアにそんな事を言われるのは意外だったが、少なくともエルビアは旅をやめさせようとする意志はないようだ。
いつまでも落ち込んでいる暇は無い。ドライブは重い腰を上げると、自室に戻ったのだった。
家を出たラグーンとカシスは取り合えず中心街に向けて歩き始めた。ドライブが気になるラグーンは家の方を振り返っている。
「相変わらずラグーンは厳しいのね」
「あれほど怒っても、次の日にはけろっとしてますから。いいんですよ、あれくらいが」
とは言え、ドライブは数日間ラグーンを避ける傾向があるが。その期間は、ラグーンもドライブに文句を言われたり、嫌な事を押し付けられたりしない貴重な時間だったりする。
「あんな調子で大丈夫なんですかね、一人旅。僕は不安でしょうがないですよ」
「だったら着いて行けばいいのに。ラグーンも術のエキスパートなんだから、ドライブに色々教えたら?」
なんだかんだ言って心配性のラグーンに、カシスはおかしそうに言う。
「言ったって無駄です。今まで何度も教えても、全く聞く耳持たずですから。それに、ドライブは術のセンスはありますから、手助けはいらないでしょう」
「ラグーンの言う事聞いてたら、ドライブも飛行術修得できたかもなのにね」
飛行術を学びたいといってきたドライブとカシスに、ラグーンは一生懸命になって教えた。ところが、いつの間にかその対象はカシスだけになっていた。
カシスは努力のおかげで、空中浮遊程度はできるようになったのだ。
「僕はカシスだけにでも継承してもらえればいいんですよ。ちょっと女の子には酷かもしれませんが、修得すればとても便利ですから」
「期待に副えるよう、院で勉強するわ。―――――― それでね、ラグーン・・・」
カシスは少し困った表情を見せた。
「ドライブにはまだ言って無いの。・・・院に行く事」
声のトーンが少し落ちる。
せっかくの機会にカシスはドライブに院の事を言う事が出来なかった。自ら敢えてそうしたのだが、心に残る罪悪感のようなわだかまりに心を痛めていたのだ。
「僕からその事はさりげなく伝えますよ。大丈夫。カシスの気持ちをドライブだって理解できるでしょう。出来なかったら、僕が徹底的に指導しますから、安心してください」
言いながら、ラグーンは拳を硬く握った。
「有り難う。落ち着いたら二人をデルタに招待するから。待っててね」
「楽しみにしてます」
にこやかに答えるラグーン。
そう会話しているうちに、二人は町の中心部に来ていた。噴水のある公園を中心に様々な商店が軒を連ねている。
「やあ、お二人さん」
背後から声がかかり、カシスは振り返った。一方、ラグーンは前方を直視したまま振り返らない。
「こんにちは、博士」
二人に声を掛けたのはユンカースだった。いつもの汚い白衣はない。
「こんにちは、カシス。二人で買い物かい?」
と、ユンカースがラグーンに問うが、ラグーンは背を向けたまま何も答えなかった。
すると、ユンカースは、ラグーンの視界に入ろうと回り込んだ。と、同時に・・・
「ひぃぃっ!!」
ラグーンは悲鳴を上げ、カシスの後ろに逃げた。カシスを盾にし、怯えた表情でユンカースを見ている。
普段からあまりユンカースに近づきたくないラグーンなのだが、今回は様子が違っていた。
その拒否反応振りに、カシスは目を丸くしている。
「博士・・・もしかしてラグーンに何か嫌がらせをしたんですか?」
モンスター撃退のテストだと、ジャーキーでおびき出したドラゴンのラグーンを強烈な匂いのスプレーで鼻を刺激したり、電気ショックのテストでは、何も知らない無防備のラグーンに電流を流したりなどした事があった。
その度に、サンプルだとか言って、なんの断りもなくラグーンの皮膚に太い注射針を挿して血を抜いて去っていくのだ。
そんな経歴があるユンカースだが、カシスの言葉に悲しそうに首を振った。
「カシスまで・・・。私は動物に虐待したりしないよ。大丈夫、ラグ君。"約束"を果たすまで何もしないから」
ユンカースの満面の笑みに苦い顔のラグーン。
カシスはそんな二人を不思議そうに見比べている。
「では、私はこれで。ラグ君、夕方においで。例の物を渡すから」
そして、脅威は去っていった。
その姿が完全に見えなくなってから、ラグーンは息をついてカシスの背後から出てきた。
「博士に何かお願い事でもしたの?」
「ええ・・・ちょっと」
「珍しいー。・・・でも、どうしてあんなに避けたの?」
すると、ラグーンは厳しい表情のまま口を閉ざした。
「だ、大丈夫よ!博士優しいから解剖とかしたりしないって!さっき動物好きって言ってたし・・・その言葉に甘えて色々頼みごとしたらいいのよ。博士、喜んで引き受けてくれるわ」
慌ててフォローするのものの、ラグーンの様子は変わらない。
「・・・ちょっと落ち着こうか。夕方まで時間あるし・・・」
カシスは、ドライブに続き、ラグーンの面倒を見る羽目になってしまったのだった。
バッグからケータイを取り出し、時刻を確認する。と、メールが届いているのに気付いた。
その内容を確認し、カシスの表情がこわばった。
「カシス?」
呼びかけるラグーンに、カシスは曖昧に笑って見せた。
「アイスでも食べよ?美味しいお店が出来たんだよ」
言い、カシスはラグーンの腕を引っ張った。


カシスが訪ねて来てから二時間が経過していた。時は既に夕方。ドライブは自室で荷物の整理をしていた。
ピピピピピピッ!!
壊れて着信音量の調整が出来ないケータイがけたたましく鳴った。その音量に驚き、ドライブは慌てて着信を取った。
『ドライブ!』
カシスだった。少し急いているような口調だ。
『いつルクレージュを出発するの?』
「え・・・ああ、うん。あさってくらいには出発しようかなって」
昼間の事があり、カシスは怒っているものだと思っていたが、そんな雰囲気ではない様子に戸惑いつつ答える。
『だとしたら、西に向けて行くんでしょ?』
「そのつもりだけど?まあ、一応目的地をエンドレスのデルタにしておいて、そこで俺の術の程度を測ろうかと思ってるからさ」
すると、カシスのため息が聞こえてきた。
「・・・何か問題でもあるのか?」
『有りも大有りよ。今、大陸中部の国家争いが激化してるの知ってる?』
「うん、知ってる」
『それが戦争にまで発展しそうなんだって!しかも、数ヶ月中に!』
「げげっ!ウソだろ!?」
カシスは独自のニュースソースを持っている。一体どこから入手しているか定かではないが、その情報に狂いはなかった。
今回の件も、恐らく事実だろう。
「まずいな・・・」
『まずいわよ。ドライブ、危険だからやめたほうが――― 』
「カシス」
『なに?』
「母さんには絶対言うなよ」
と、ドライブは低い声で言った。
『え?』
「絶対に言うなよ!悪いけど、俺は絶対に行くからな。それに、その情報が本当なら、北か南の国に沿ってデルタを目指せばいい。問題ないさ」
『問題大有りで・・・!』
ブツッ
ドライブはケータイの着信を切った。
「大陸の中部か・・・エンガナとセレスタとの戦争って所か。たかが湖の領有化で戦争なんて起こすなよな」
エンガナ国とセレスタ国は、北と南に隣り合う国だ。その二つの国の国境に、大きな湖、アビシア湖があった。資源が豊富な湖で、長年、湖南のセレスタ国が管理してきたが、北のエンガナ国が湖の領有化を求めてきたのだ。
エンガナ国の隣には広大な砂漠地帯が広がっており、近年、特に水不足が深刻だった。そこで、湖の水を自国に引く措置を取った。
ところが、今度は湖の水が減る結果となったのだ。それで反発したのがセレスタ国だった。
そこから二つの国の争いが始まったのだ。
北は砂漠地帯が隣り合う水不足の国。南は豊かな水を抱える肥沃の国。
環境が対極する国はもともと仲が悪かった事もあり、ここ数年で治安が急激に悪化していた。
「術で水を作ればいいのに。それに、アビシア湖はセレスタが管理してきたんだからセレスタのもんだろ」
ドライブは分厚い地図を取り出して二つの国の位置を確認した。
「北回りで行くか・・・南回りで行くか・・・」
地図を凝視した。
北周りからデルタを目指すとなると、砂漠地帯や未開の地を通る事となる。南回りだと、エスタという国を通っていく事が出来る。
エスタ国とは、美しい海が絶景の観光地だ。
となれば、考えるまでもなかった。
「よし、南回り!」
そして、ケータイを見た。ぼろぼろのケータイだが、GPS機能はちゃんとある。
問題は、通話エリアがルクレージュのみと極端に限られるため、プランの変更は必須だった。メールとネット接続は基本的に場所は選ばないが、通話が出来ないのは痛い。
・・・・・・プラン変更するしかないか・・・
月額費用が極端に上がるが仕方がない。
「出費が痛い・・・」
旅に出る前に早くも資金が尽きそうな事態に、ドライブは深いため息を付いた。
地図をバッグに押し込みベッドに寝転がった。
「ドライブ」
ドアの向こうから呼びかけられ、ドライブは驚いて慌てて上半身を起こした。
「母さん?」
掃除以外はあまり部屋を訊ねてくる事のないエルビアがドアから顔を覗かせた。
「・・・準備は進んでいるようね」
部屋を覗き込み、床に散らばっている旅具一式を見てそう言った。
「ん・・・まぁ」
頭を掻いてドライブは短く答えた。
「買い込んだわね。全部持って行くつもり?」
折りたたみテントやら寝袋やら小型フライパンやら、とにかく持てるだけ持って行くつもりらしい。
「だって全部必要品だし。備えあれば憂いなしって言うし」
「荷物は小さくまとめた方がいいわよ。結局重いって捨てていくんだから」
エルビアは一際大きい寝袋を見た。
「分かってるけど・・・できるだけ出費は抑えたいから。野宿は必須だし」
すると、エルビアはドライブにカードを差し出した。
一体何かと、ドライブはエルビアを見上げる。
「有効に使いなさい。自己管理できないと駄目よ」
ドライブはそのカードを受け取った。そのカードを一目見て、ドライブの表情が変わった。
「ぎっ、銀行のカード!!」
「暗証番号は分かってるわよね。使うべき時に使いなさい」
そして、エルビアは部屋を出て行った。その後姿が何よりもかっこよく見えたドライブは、手を合わせて拝んだ。
「いやぁ・・・まさか・・・」
ドライブは財布にカードを差込みながら感嘆をもらした。
「豪遊できるなんて」
よからぬ考えが頭を支配しているドライブ。
「順風満帆ってのはこの事だよな〜」
急に元気になったドライブは、うきうき気分で荷物をまとめ始めた。
順風満帆の旅が逆風に吹き荒れる大変なものになることも知らずに。


そして、出発の日はやってきた。
ヴェイルフレイラに乗り、調子を確かめているドライブ。その背には大きめのリュックがあった。
「ずいぶんダイエットしましたね、荷物」
その姿を見てラグーンが言った。
昨夜までは持ちきれないほどの量だったが、当日になって軽量化したのだ。
せっかく買った寝袋や簡易テントは置いていくらしい。
「これから夏だしさ。軽装でも良いかなって思って。何か必要になったら途中でそろえれば良いし」
――― それに、何より、俺には銀行カードという強力なサポートがあるんだからな・・・!
ドライブは心の中でほくそ笑んだ。
「本当に行っちゃうんだ。なんだかすごいね」
ラグーンの隣にいるカシスが感心した様に言う。
「まあな。こんなことできるのは今くらいしかないしさ。のんびりデルタを目指すよ」
「術の勉強も怠らないで下さいよ。道中、色んな危険が潜んでいますから、実践で鍛えてください」
「分かってるって。それが目的なんだから」
小言の多いラグーンに面倒そうな表情をした。
ドライブは一度は降りたヴェイルフレイラにもう一度乗った。リンカーを耳にセットする。
いよいよ出発だ。
すると、ラグーンはドライブに何かを差し出した。
一体なんだ?と、ドライブがラグーンを見る。
「僕からの餞別です」
四角いそれを渡した。
「え、これって―――――― 」
少し興奮した様子でその四角い物体の蓋を開けた。
「最新のケータイ!お前・・・」
ラグーンが渡したのは最新機種の携帯電話だった。科学を得意とするリディア大陸の影響もあり、ディオール大陸全土でも携帯の普及は急速だった。使い古された機種しか持っていなかったドライブにとって、高額な最新機種はお宝同然だ。
「時々連絡しますから、ちゃんと出てくださいね。ああ、それからそのケータイ、データカード入ってないので、古いケータイから差し替えてください。それ、すごいんですから失くさないように気をつけてくださいよ。ユンハカさんにちょっと"いじって"貰ったので、通信エリアは大陸と言わず、海の向こうも大丈夫だそうです」
一体どんないじり方をしたらそんな事が出来るのか分らないが、とりあえずすごい携帯らしい。
「それ、通話プラン変えなくて済むじゃん!お前みたいなドラゴンがいてくれて俺は嬉しいよ!サンキュッ!」
「あたしからはこれ。術強化に役立つでしょ?」
カシスは荒削りの石を渡した。手にしただけで分かる。術力強化の効果を持つ石だ。
「これ、お前が大事にしてた石だろ?」
見覚えのある石だった。キーホルダーにして、カシスが大事にしていたものだ。
そして、二日前、演習場で模擬戦闘をした際、カシスが術力増強に使った石だ。お守り代わりだと言っていたはずだが。
「旅には危険がつき物だしね。普通のお守りよりも、効果のある石の方がいいでしょう?失くさないでよ。大事なものなんだから」
ドライブはそれを遠慮なく受け取った。
「ドライブ!!」
玄関から慌ててやってきたのはエルビアだ。
「はい、これ。おなかが空いたら食べなさい。痛まないうちに食べるのよ」
可愛いハンカチに包まれた弁当を手渡した。
「・・・母さん、遠足じゃないんだけど」
「何言ってるの。旅なんて長期間な遠足じゃない。家に帰りつくまでが遠足なんだからね?気を抜いたら駄目よ」
「母殿、長期間な遠足は聞いた事ないです」
ラグーンが即座に突っ込む。
「ものは考えようよ、ラグちゃん。そういうわけだから、ドライブ、頑張りなさい。ちゃんと連絡するのよ」
「はぁ・・・分かってるよ、それくらい」
ドライブはこれ以上話を長くすまいと、ヴェイルフレイラのスイッチを入れた。
ドライブを乗せたヴェイルフレイラは音もなく浮いた。
「へえー!やっぱり博士はすごいのね。普通のボードならすごい音がするはずなんだけど」
歓声を上げるカシスに、少しドライブは得意げにうなずいた。
「ドライブ」
「ん?」
地面から少しずつ浮いていくドライブに、ラグーンが真顔で呼びかけた。
「僕はドライブに何かあっても駆けつけませんから、そこんとこ宜しくお願いします」
「ひでぇドラゴンだな、お前・・・」
「文句言ってないで早く行ってさっさと帰ってきなさい。ほらほら」
もしかして、数日で帰ってくるんじゃないかと勘違いしてるんじゃないだろうか?
エルビアの言動にそう思ってしまう。
もちろん、ドライブにはそんなつもりはないが。
「じゃ、俺行くから」
さらに上昇する。家の屋根まで上昇し、下を見ると、ラグーンたちが手を振っていた。
少し恥ずかしそうにドライブは手を振り返し――――――
フォンッ
風を切って出発した。
その姿を見送る三人。そして、姿が見えなくなると、エルビアが大きく伸びをした。
「あー、行っちゃったわねー」
「しばらくは静かになりますね」
「そうねえー・・・。あ!洗濯物干さなきゃ」
思い出したように言い、エルビアはそそくさと家に戻ってしまった。
「本当は寂しいんだろうね」
そんなエルビアを見て、カシスがそう言った。
「家の中で一番うるさかったのはドライブですしね。それにしても、本当に行っちゃいましたね。最初はただの思いつきだと思っていましたが」
「うん。ドライブにしては有言実行よね」
「僕はこれから毎日が日曜日になるわけですね・・・こき使われる事もなくて、自由気ままな時間を過ごせる・・・なんて素敵な事なんでしょう」
両手を絡ませ、ラグーンは心底嬉しそうに言う。
「ところで、ドライブに渡してたケータイだけど・・・」
「ええ、これですよね」
ラグーンはポケットから色違いの同機種を取り出して見せた。
「博士にいじってもらったって言ってたけど・・・もしかして、この前の頼み事って・・・」
ラグーンはうなずいた。
「僕のケータイは親機です。で、ドライブに渡したのは子機。実は、この二つのケータイは常にリンク状態にあって、GPS機能でドライブがどこにいて、どう進んでいったのかリアルタイムでわかるんですよ。しかも、リモート操作も可能で、僕のケータイからドライブのケータイのカメラ機能を動作させて、写真を送らせる事も可能なんです。盗聴も出来るんです」
「うわー・・・、ストーカーみたい・・・」
カシスは少し引いている。
「それくらいしないと、何かあった時困りますからね。不本意ながらユンハカさんに頼み込んで改造してもらったんです」
「ラグーンの頼みとあれば、ユンカース博士も断るわけにはいかないでしょうね。というか、絶対快諾するわね」
すると、ラグーンはげんなりとした表情で肩を落とした。
「――― 明日、早速生体実験です」
「・・・ドラゴンも大変ね」
同情するようにカシスはうなずいた。


NextFlight